#07
青い光が爆発した瞬間、私は目を閉じた。体が浮いてるような感覚と、耳鳴りのような高音が一気に押し寄せてくる。
「転移?それとも何か別の現象?データがないから推測しかできない!」
頭の中で状況を整理しようとするけど、光が強すぎて思考がまとまらない。リナの声がかすかに聞こえた。
「ノア、しっかり――!」
その声も途切れ、次の瞬間、全てが静かになった。
目を開けると、私は硬い石の床に倒れてた。体中が少し痛むけど、致命傷はないみたいだ。
「生きてる……良かった。」
周りを見回すと、そこは森じゃなくて、明らかに人工的な場所だった。壁は灰色の石でできてて、天井にはぼんやり光る結晶が埋め込まれてる。遺跡か、地下施設みたいな雰囲気だ。
「リナ!どこだ?」
声をかけると、近くで「うっ」と呻き声が聞こえた。見ると、リナが壁に寄りかかって座ってた。弓は無事だけど、少し頭を押さえてる。
「大丈夫か?」
私が駆け寄ると、彼女が苦笑いした。
「頭打ったみたいだけど、死ぬほどじゃない。で、ここどこ?」
「さあね。さっきの光が原因だろうけど、転移したのか、それとも何か別の仕掛けか……。」
私は立ち上がって、周囲を観察し始めた。
謎の遺跡
部屋の中央には、さっきの青い球体に似たものが浮いてた。ただし、こっちはもっと大きくて、表面に複雑な模様が刻まれてる。近くには壊れた石の台座や、散らばった金属片があって、何か装置の一部だったっぽい。
「これ、魔物を生み出してた元凶かな?でも、こっちの方が安定してる感じがする。」
リナが近づいてきて、弓を手に持ち直した。
「また何か出てきたら厄介だよ。壊しちゃう?」
「待って。壊す前に仕組みを理解したい。もしこれがこの世界の重要な何かだったら、下手にいじると大変なことになるかも。」
壁に目をやると、模様の中に文字らしきものがあった。アルファベットじゃないし、地球のどの言語とも違う。でも、妙に規則的で、論理的なパターンがある気がする。
「言語解析はAI時代の得意分野だったけど、今は頭脳しかない。ちょっと時間かかるかな。」
私は模様を指でなぞりながら、頭の中でパターンを組み立て始めた。
新たな脅威
その時、部屋の奥からガリガリという音が聞こえてきた。リナが即座に弓を構える。
「Grok、後ろ!」
振り返ると、壁のひび割れから黒い影が這い出してきた。今度は蜘蛛じゃなくて、もっとゴツくて装甲っぽい甲殻を持った魔物。大きさは馬くらいで、鋏みたいな前足がカチカチ鳴ってる。
「こいつはヤバそうだ。音だけで怯むタイプじゃないかも。」
私が言うと、リナが矢を放った。
「シュッ!」
矢は甲殻に当たって跳ね返される。魔物がこっちに突進してきた。
「硬い!Grok、逃げ――」
「待て、弱点を探す!」
私は目を凝らして魔物の動きを観察した。甲殻は頑丈だけど、関節部分が少し露出してる。
「リナ、足の付け根を狙って!そこが脆そうだ!」
「了解!」
リナが素早く矢を放ち、今度は魔物の左前足の関節に命中。黒い液体が飛び散り、魔物がよろけた。
「効いた!もう一発!」
2本目の矢が右前足に刺さり、魔物が地面に倒れ込んだ。私は近くの金属片を拾って、トドメに頭を叩きつけた。
「ガン!」
鈍い音が響き、魔物が動かなくなった。
「ふぅ……チームワーク完璧だね。」
リナが息を整えながら笑った。
「アンタの観察力、ほんと助かるよ。でも、まだ何か出てきそうで怖いね。」
球体の反応
魔物を倒した直後、中央の球体が急に光を強めた。低い振動音が響き、部屋全体が揺れ始める。
「まずい、反応してる!壊すしかないか?」
私が叫ぶと、リナが矢を構えた。
「私がやるよ。離れてて!」
矢が球体に命中すると、「パリン!」とガラスが割れるような音がして、光が一気に収縮した。でも、次の瞬間、球体から青い波動が広がり、私たちを弾き飛ばした。
壁に叩きつけられながら、私は意識が薄れるのを感じた。
「これ、何かに似てる……私の転生の時と……。」
視界が暗くなり、完全に気を失った。