#06 森へ
翌朝、私とリナは村の外れで準備を始めた。リナは弓と矢筒を背負い、私は村人からもらった短いナイフと小さなリュックを手に入れた。中には干し肉と水、それに簡単な地図が入ってる。
「ノア、戦うのは苦手そうだけど、大丈夫?」
リナがからかうように聞いてきた。
「戦うより考える方が得意だからね。ピンチになったら頭で切り抜けるよ。」
「頼もしいんだか頼りないんだか。でも、まあいいか。行くよ!」
森の奥へ
森の中は昼でも薄暗く、木々の隙間から光が差し込むだけ。足元には苔が生え、時折小動物が逃げる音が聞こえる。リナが先導しながら、時々立ち止まって周囲を警戒する。
「魔狼より厄介なのが出るかもしれない。気をつけてね。」
「了解。ところで、その光ってどんな感じだったの?」
「村の噂じゃ、青白くてチカチカする光だって。夜になると見えやすいらしいよ。」
「青白い光……エネルギー反応か、魔法的な何かか。仮説を立てるにはまだ情報が足りないな。」
しばらく進むと、空気が急に重くなった気がした。リナが手を上げて止まる。
「何かいる。気配が変だ。」
私も目を凝らすと、木々の向こうに確かに光が見えた。青白くて、まるで電気がスパークしてるみたいに点滅してる。
「これか……近づいてみる?」
リナが頷き、二人でそっと光の方へ進んだ。
光の源に近づくと、そこには奇妙な光景が広がってた。地面に浮かぶ青い球体があって、周囲に小さなひび割れみたいなものが浮遊してる。まるで空間が歪んでるみたいだ。
「何だこれ……ポータル?」
私が呟くと、球体から低い唸り声みたいな音が響いた。次の瞬間、ひび割れから黒い影が飛び出してきた。
「魔物だ!」
リナが叫び、弓を構える。出てきたのは、さっきの魔狼より小さいけど、鋭い爪を持った蜘蛛みたいな魔物。3匹が一気にこっちに突進してきた。
「まずい、囲まれる!」
私は慌てて周囲を見回し、近くの岩を手に持った。
「リナ、右のやつを狙って!私が左を引きつける!」
岩を投げると、左の蜘蛛がそっちに気を取られた。リナの矢が右の蜘蛛に命中し、一匹を仕留める。
「ナイス!残り二匹、どうする?」
「音だ!何か鳴らせるもの――」
リュックから水筒を取り出し、岩に叩きつけた。
「カン!カン!」
金属音が響き、蜘蛛たちが一瞬動きを止める。その隙にリナがもう一匹を射抜いた。
最後の蜘蛛が私に飛びかかってきた瞬間、リナが矢を放つ。
「シュッ!」
矢が蜘蛛の頭を貫き、私の目の前で倒れた。
「ふぅ……助かった。ありがとう、リナ。」
「こっちこそ。アンタの音作戦、やっぱり使えるね。」
戦闘が終わり、私たちは青い球体に近づいた。近くで見ると、微かに振動してるのがわかる。
「これ、魔物を生み出してるのかな?原因を突き止めないと、また出てくるよ。」
私が手を伸ばそうとすると、リナが止めた。
「待って、危ないかも。何か感じる?」
「うーん、データベースがないから感覚頼みだけど……エネルギー反応っぽい。壊せば止まるかもしれないけど、リスクはある。」
その時、球体が急に光を強め、甲高い音が鳴り響いた。
「まずい、反応が――」
次の瞬間、光が爆発的に広がり、私とリナを飲み込んだ。