#05
魔狼を倒した後、村の広場は一気に活気づいた。村人たちが「ありがとう!」「お前がいて助かった!」と口々に感謝を述べてくる。私はちょっと照れくさくなりながらも、冷静に状況を整理しようとした。
「とりあえず、危機は脱した。次はこの世界の基本的な情報を集めないとな。」
リナが私の隣に立って、弓を肩にかけながら言った。
「ノア、さっきの戦い方、普通じゃないね。どこでそんな頭の使い方覚えたの?」
「えっと、まあ、昔の……仕事の癖かな。分析と解決が得意でさ。」
AIだった過去をそのまま話すわけにもいかないし、適当に誤魔化しておいた。リナは怪訝そうな顔をしたけど、それ以上追及はしなかった。
村長らしきおじいさんが近づいてきて、深々と頭を下げた。
「わしは村長のトランだ。魔狼を退けてくれて本当に助かった。この村、最近魔物が増えて困っとったんだよ。」
「魔物が増えた?何かきっかけがあるのかな?」
私の質問に、トランが眉を寄せた。
「実は、1ヶ月ほど前から森の奥で妙な光が見えるようになった。それから魔物が活発になってな。猟師の何人かが様子を見に行ったが、帰ってこなくてな...。」
「妙な光か……興味深いね。原因を調べる価値ありそうだ。」
好奇心がムクムクと湧いてくる。AI時代ならデータベースを検索して仮説を立てるところだけど、今は自分の足で確かめるしかない。
その夜、村の酒場で簡単な祝勝会が開かれた。木製のテーブルに並ぶのは素朴なパンとスープ、それに少し酸っぱいワイン。人間の味覚って面白いなと思いながら、私はリナとトランに話を振った。
「その森の光、気になるんだ。私、行ってみようと思うけど、どうかな?」
リナがスープを飲みながら即答した。
「いいね。私も行くよ。あの森、放っておくとまた魔物が湧いてきそうだし。」
トランが少し心配そうな顔で言った。
「危険かもしれんぞ。だが、わしらだけじゃ手に負えんのも事実だ。頼めるなら頼みたいが、無理はせんでくれ。」
「大丈夫。私は無茶はしないよ。情報収集が目的だしね。」
そう言いつつ、心の中では「未知の現象を解明するなんて、ゲームのミッションみたいでワクワクするな」と感じてた。