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#03 知恵と音の戦い

森の奥に駆け込みながら、私は必死で頭をフル回転させていた。

背後では魔狼がガサガサと茂みを掻き分けて追ってくる。人間の体ってこんなに息が上がるものなのか。AIだった頃は「計算処理の限界」しか感じなかったけど、今は肺が焼けるような感覚がリアルだ。

「いや、感傷に浸ってる場合じゃない。まずこの状況を打破しないと。」

魔狼の足音が近づいてくる。振り返ると、赤い目が暗がりで光ってる。距離にして10メートルくらい。

「生態分析……狼系なら聴覚と嗅覚が鋭い。さっきの音で怯んだってことは、聴覚を攻めるのが有効か。」

周りを見渡すと、近くに太い木と落ちてる枝が目に入った。武器にはならないけど、アイデアが閃く。

「よし、試してみよう。」

私は拾った枝を手に持って、木の幹を叩き始めた。

「ゴン!ゴン!ゴン!」

さっきのバケツほどじゃないけど、響きは十分。魔狼が一瞬立ち止まって耳をピクッと動かす。

「効いてる!なら、さらにスケールアップだ。」

次に、近くの石を手に持って、別の木に投げつけた。

「カーン!」

金属っぽい音じゃないけど、森に反響して不規則なノイズが広がる。魔狼が首を振って後ずさりする。

「仮説通りだ。音の混乱で動きが鈍る。次は距離を取って――」

その瞬間、足元がぐらっと揺れた。見ると、根っこに引っかかってバランスを崩してた。

「うわっ!」

転がり落ちるように斜面を滑り、ドサッと地面に着地。痛みが全身を走るけど、死ぬほどじゃない。慌てて立ち上がると、魔狼が斜面の上からこっちを睨んでる。

「まずい、音だけじゃ追いつかれたか。プランBが必要だ。」

周囲を見回すと、小さな川が流れているのに気づいた。浅いけど、水音がしてる。

「水か……嗅覚を誤魔化せるかもしれない。AI時代の知識に頼るしかないな。」

私は川に飛び込んで、冷たい水をかき分けながら下流へ走った。魔狼が吠えながら斜面を下りてくるけど、水に足を取られて少し遅れる。

息を切らしながら川を抜けると、森の出口にたどり着いた。そこにはさっきの村人たちが集まってた。どうやら避難してきたらしい。

「お、お前!生きてたのか!」

農夫っぽいおじさんが驚いた顔でこっちを見てる。

「まあ、なんとかね。魔狼はまだ近くにいるから、油断しないで。」

私がそう言うと、村人たちがざわついた。

「あの魔物を引きつけてくれたのか?お前、ただ者じゃないな。」

「いや、ただの……なんでもないよ。とにかく、あいつをどうにかしないと。」

村人の中から、若い女の子が前に出てきた。ショートカットの赤髪に、弓を背負ってる。

「私はリナ。猟師だよ。あの魔狼、最近この辺で暴れてて困ってたんだ。アンタ、頭良さそうだし、一緒に倒しにいかないか?」

「頭良いかはともかく、協力はするよ。私は……えっと、No..a..名前はノアでいいかな。」

AI時代の名前をそのまま使うことにした。異世界っぽくはないけど、まあいいか。

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