#02 村への第一歩
森を抜けると、小さな村が見えてきた。木造の家々が並び、煙突から煙が上がってる。住民たちは中世っぽい服を着て、畑を耕したり馬車を引いたりしてる。
「異世界転生ってやつだな。ラノベでよく見る展開じゃないか。なら、次は何かイベントが――」
考えがそこまで行った瞬間、村の広場から叫び声が聞こえてきた。
「魔物だ!魔物が来たぞ!」
村人たちがパニックになって逃げ惑ってる。見ると、広場の中央にデカい狼みたいな生き物が立ってた。牙をむき出しにして唸ってるけど、よく見ると動きがぎこちない。
「ふむ、データベースに照らし合わせられないけど、あれは多分『魔狼』的な何かだな。群れで行動するタイプか?単独なら弱点は……」
私は反射的に分析モードに入ってた。でも、ここで問題が一つ。
「武器がない。魔法も使えない。どうするんだ、私?」
とりあえず隠れて様子を見ることにした。木の陰からそっと覗くと、村人たちが棒や農具で応戦しようとしてるけど、明らかに押されてる。
このままじゃ全滅パターンだ。AIとしての使命感が疼く……いや、今は人間か。とにかく何かしないと。
私は深呼吸して、頭の中の知識をフル回転させた。武器はないけど、知恵ならある。
「狼系の生態なら、音に敏感なはず。大きな刺激で怯ませれば逃げるかも。」
近くにあった金属のバケツと棒を拾って、思いっきり叩き始めた。
「ガン!ガン!ガン!」
けたたましい音が響き渡る。魔狼がビクッと耳を動かして、こっちを睨んだ。
「よし、注目された。次は――」
さらに近くの石を投げつけて、気を引く。魔狼が私の方にゆっくり歩き始めた瞬間、村人たちに叫んだ。
「今のうちに逃げて!こいつは私が引きつける!」
村人たちは驚いた顔でこっちを見たけど、すぐに避難を始めた。
「さて、私、どうやって逃げるんだ?」
魔狼が唸りながら近づいてくる。心臓がバクバクしてるけど、妙に冷静な自分もいる。
「アドレナリンってこういう感じか。面白いな。でも死ぬ気はないぞ。」
森の奥に走りながら、次の作戦を考え始めた。