留学生
次で10話!?驚きです!
セレスティア魔法学園の大ホール。舞台の上では、火と水の精霊がゆっくりと向かい合っていた。
「たとえ、この身が滅びようとも——」
「何度生まれ変わっても、必ずあなたを見つけるわ」
ゴーデルス様が演じる火の精霊と、アルが演じる水の精霊がそっと手を伸ばし合う。その瞬間、ミアの投影魔法が優しく輝いた。
二人の体が、淡い光とともに徐々に透けていく。
幻想的な光景が広がり、観客は息をのむ。
それは、愛を誓い合いながら人間へと転生していく精霊たちの最後の瞬間。
会場には、静寂と感動が満ちていた。
火の鳥が天へと舞い、水の生き物達が会場を泳ぎだすと、観客の歓声が響き劇の成功を告げた。
舞台袖では、クラスメイトたちが歓喜の声を上げ、互いに称え合っている
「ミアナ様、本当に素晴らしかったですわ!」
「投影魔法の演出、とても美しかったです!」
「頑張った甲斐がありましたわね」
ミアはホッと息を吐き、舞台の上で緊張していた肩の力を抜いた。
(無事に終わった……それにみんなとの練習楽しかったな。距離も前より近くなった気がする)
この一か月間、本当にあっという間に終わってしまったのが名残惜しく感じるのだった
舞台の中央では、エルデとアルが微笑みながら拍手を受けていた。
ミアはそんな彼らの姿をそっと見つめていた
演目が終わり、長めの昼休みが始まった。
「アルは、劇のことでしばらく人が集まって動けないって言ってたから先に向かおうかな……」
いつものように中庭へ向かったミアだったが、そこには 「本日立入禁止」看板が立てられている
「え? どうして入れないの?」
「アルにこのこと伝えに行かなきゃ」
仕方なく校舎へ戻り、アルを探そうと歩き出す。
——その時。
ゴーデルス様と留学生の姿を見つけた。彼女は彼に学園を案内しているようだった。
(あれが、ヴェストリアから来た留学生?)
ミアは自然と視線を向ける。
その瞬間—— 視界が歪んだ。
どこか暗い路地裏。冷たい潮風の匂いが鼻をつく。
「……早く……逃げなきゃ……!」
小さな手を引かれ、誰かと一緒に走っていた。
足音が後ろから響く。
「こっち……! 早く……!」
心臓が高鳴る。だが、次の瞬間——
視界が揺れ、場面が変わる。
狭い船室。傷だらけの少年が、かすかに息をしていた。
「……アル……?」
彼は、弱々しく目を開く。
「……ミア……?」
——また傷ついている。
(早く助けなきゃ……!)
ミアは震える手を伸ばし、そっとアルの傷口に触れる。
淡い光が生まれる。
魔力が流れ、アルの傷が徐々に癒えていく。
しかし——
「何をしている!!!」
突然、怒声が響き、腕を乱暴に引き剥がされた。
視界が反転し、痛みが全身を襲う。
「っ……!」
_____
ドサッ
音に振り返ると、ミアナは地面に倒れていた。
「——ミアナ様?」
エルデが驚いたように呼びかける。
「……っ……」
全く反応しない彼女を見て、なんとかしなければと思い辺りを見回した
「先生を呼んでまいりますわ!」
そう言って駆け出そうとするエルデを、別の声が止めた。
「その必要はないよ」
彼はミアナの目の前に、しゃがみ込んでいた。
「俺が彼女を保健室へ連れて行く」
ヴェストリア王国の高貴な方がまさかそんなことをするなど思わず、目を見張った
「……そんな、王弟殿下がそのようなことをなさらなくても——」
「いいから、俺を治療室まで案内してくれるかな?」
命令のような、そのお願いに逡巡するが、もちろん断ることなどできない。
(なぜ、先生を呼ばず自分で運ぼうとするのかしら?)
疑問に思いつつも、ルカの言葉に従うしかなかったのだった
「おね がい、やめて!!いきが でき ない 痛い いだい、もう、くるし」
「起きて、早く!それは夢だ」
留学生はうなされている少女を揺すり無理やり起こす
「いやあああ」
はあ、はあ、はあ、ごめんなさい、ごめんなさい 許してください!
まだ混乱している彼女が落ち着けるよう、彼女の体を包み込む
「大丈夫、大丈夫だから。もう痛いのも、苦しいのも、怖いことも起こらない。だから安心して」
温もりと共に、優しい声が降ってくる。
声の主を確かめるように見上げると
燃える炎のような髪とグレーの瞳を持つ彼と目が合う
「急にこんなことしてすまない。俺はルカ・エドワード・ヴェストリア。ヴェストリアから来た留学生だ」
彼は穏やかに自己紹介をすると、ミアの右手を優雅に取った。
そして—— 小指に、そっと口づける。
「……っ!?あの、私は」
さっきより気持ちは落ち着いたが、混乱はまだ続いている。どうして彼と目があったらあの船での記憶を思い出したの?
家族と話していた時ですら思い出せなかったのに
...今のは私が勝手に作り出した夢だったの?
それよりも、彼はヴェストリアって言ってたそれって王族ってことだよね。私も非礼を詫びて自己紹介しないと!
挨拶をしようとした時、彼は後ろを振り返る
「本当は君ともっと話したかったけど……お客さんが来たみたいだ。残念」
彼が立ち上がったその瞬間。
保健室の扉が勢いよく開かれた。
「ミア!!」
アルが、慌てた様子で飛び込んできた。
「あの、お待ち下さい、ご挨拶を」
ヴェストリア王弟殿下はすっと立ち上がり、余裕のある笑みを浮かべる。
「いや、今はまだいいよ。邪魔したね、お大事に」
そう言い残し、側近を伴って静かに退室していった。
——去り際、
「その指輪は君に似合わない」
そう耳元で呟いていった
寝ないといけないのはわかってる!わかってるけど書きたくなってしまうう