過去との邂逅
お待たせいたしました!
書くの一日でも休んだらもう書けなくなりそうでこわいい
夜のハルヴォルス家のリビングは、暖炉の火が静かに揺れ、いつもと変わらぬ穏やかな光に包まれていた。
けれど、今日はその温かさがどこか遠く感じる。
ミアはソファの中央に座り、両手でマグカップを握りしめていた。
右にはアル、左には母、目の前には父と兄のアレンが座っている。
皆がいつもより近くにいるのは、きっとミアを安心させるためなんだろう。
心地よいココアの香りが広がり、ミアはふうっと息を吐いて、一口飲んだ。
甘くて、温かい。
でも、胸の奥のざわつきは消えない。
アルは、そんなミアの仕草を静かに見つめた。
指先がそっと指輪をなぞる——それは、彼女が緊張している証拠だった。
彼女をこれ以上不安にさせたくない。
家族は皆、一瞬だけ視線を交わし、誰から話すべきか迷っているようだった。
沈黙が落ちる。
やがて、アルがゆっくりと息を整え、慎重に言葉を選びながら口を開いた。
「……あれは、十年前のことだった」
アルは、かすかに肩を震わせる。
「当時、新しい大陸が発見されて、各国の探索隊がこぞって向かっていたんだ。でも、それと同時に海賊も増えて、貴族を狙った誘拐が横行していた。貴族は魔力が多くて高値で取引される。攫われた貴族は未踏の大陸へ連れて行かれて、人体実験を好む者や、王侯貴族の支配に不満を持つ者たちに売りさばかれていたんだ」
ミアは息を呑んだ。
「……そんなことが?」
「そう。貴族の多くは外出を控えていた。でも、その日—」
「……僕たちは精霊からの祝福を受ける儀式があって、精霊塔からの帰り道のことだった」
——沈黙。
言葉を止めるアルの代わりに、アレンが口を開く
「護衛は何人もいた。でも、敵は用意周到だった。魔道具を使い、護衛を無力化して……俺たちは攫われた」
そう語るアレンの声には、わずかに震えが混じっていた。
「……あの時のことを、詳しく話すのは、これが初めてね。」
母の静かな声が響く。
「そうだな、ミアナ大丈夫か?」
父の低い声が続く。
「うん、ちゃんと聞きたい。続けて」
私よりも家族の方が辛そうで胸が苦しくなる
「……僕たちも、必死に逃げ出そうとしたんだ、でも気づいたら船の上だった。」
「そして……その船には、ミアもいたんだ」
静寂が広がる。
ミアの目が驚きに見開かれる。
「……わたし?」
「そう」
アルはゆっくりと頷く。
「ミアは、僕たちが連れてこられる前から、そこにいたんだ。魔力が特に多かった僕はミアと同じ部屋に連れて行かれたんだよ」
あるの手がぎゅっと私の
「海賊たちは、攫った貴族を新しく見つかったルクサンドラ大陸へ連れて行く予定だった。その大陸には、日と闇の精霊が多く存在し、人の精神に強く影響を与える。そして、そこへ行った者たちは正気を失う。自殺するものや殺し合う者が増え国家を築くには不向きな土地だった。そんな場所を利用して、非道な人体実験が行われていた」
そう話す父の顔が歪む
「私達は、魔法を使えないように魔力回路を破壊されていた。そうなると魔法が使えないどころか、溜まった魔力が体内で暴れて、内臓を壊わしていく……だから魔力吸収装置で魔力を吸われながら、命をギリギリの状態で生かされた」
ミアは小さく息を呑んだ。
「でも……ミアだけは違ったんだ。魔力回路を壊されても、ミアだけは魔法を使えたんだよ。」
「……そんなことが可能なの?」
「うん、それでミアは、捕らえられた僕達を回復してくれたんだ。
見張りから見つからないように、毎日少しずつ。
でも……ある時、見つかってしまった。ミアは酷い仕打ちを受けるようになった、、、そして魔法が使えないよう、魔力が枯渇するまで搾り取られていたんだ」
母がそっとミアの手を包み込む。
「……でも、それでもミアは……諦めなかったのよ」
静かに、けれど確かな声で、母はそう言った。
「ミアは……魔放暴走を起こしたの」
ミアの目が見開かれる。
「ミアの暴走は、防御と回復の魔法だったの。あなたは、自分の記憶を犠牲にして魔力を生み出して私達を守ってくれたのよ。」
母の瞳は静かに揺れていた。
「本来、魔法暴走は攻撃魔法を無作為に打ち飛ばすことが多い。でも、君は違った。ミアの暴走は、防御と回復の魔法だった。本当、どこまでもお人好しだよねミアは...」
暗くなった空気を変えるように、揶揄ってくる
「もう、またそうやって!
...ミアに癒やされた僕たちが、魔道具の縛りを超えて海賊共を倒すことができた。そして、俺達を捜索していたウィンディア大陸の連合艦隊に保護され、全員が無事に帰還することができたんだ」
「その後、あなたは意識を失って……記憶をなくしたまま、このハルヴォルス家に引き取られたの。あなたの記憶障害はその時の弊害だってお医者様が仰ってたわ」
——沈黙。
ミアは震える指先で、指輪をなぞる。
「……教えてくれてありがとう。私のこの忘れやすい体質にも、ちゃんと意味があったんだね……」
曖昧だったものに理由があり、少しだけ安心する。
でも、家族がつらい思いをしたのに、何も思い出せない自分が嫌になる。
「……知れて、よかった」
ミアはそっと微笑んだ。
アルは、ミアの反応にほっと息を吐く。
「無理はしないでね。ミアが過去について何か思い出した時は……僕も、家族も、そばにいるから。絶対一人で苦しまないでほしい」
ミアはゆっくりと頷いた。
思いやりと確かな愛情を感じて、堪らえていたものが溢れ出てくるのだった
いつも色んな作品から励まされた、私もこんな風にかけるようになりたいって元気をもらえた
私の書いたものが、誰かにとっていい出逢いだと思ってもらえたら嬉しいなあ