平穏?な日常
楽しんで頂けると幸いです!
「あれ……今、何するんだっけ?」
ふと気がつくと、私は立ち上がっていた。
「ミア、大丈夫?」
アルが不安そうに私を覗き込む。
「わからない……なんで私、立ってるの?」
「ほら、次は経済学から魔法学の授業に変更になったから、移動のために立ったんだと思うよ」
「あ……そうだった。急な変更だったからメモするの忘れてたのかな?教えてくれてありがとう」
「移動教室だから行こう」
「ねえ、私もう道は覚えてるから手は繋がなくても大丈夫だよ」
過保護なアルに照れ臭くなる
「道は覚えていても、どこに行こうとしたか忘れるんだから心配なんだ」
「……そうだね、ありがとう、アル。」
アルに心配ばかりかけてしまってる
「勉強のことはちゃんと覚えられるのに、他のことはすぐ忘れるなんて……なんでなんだろう」
「気にしなくていいよ。僕がしたくてしてるんだし」
アルは軽く肩をすくめて笑う。
「それに、ミアがそんなこと言い出すってことは、誰かに言われたりしたの?」
「ううん、ただ……アルに頼ってばかりじゃダメだなって思ったの」
「そっか」
アルはそれ以上何も言わず、私の前を歩き出した。
私は、その背中を見つめながら、小さく息を吐いた。
学園での生活は、普通のように見えて、私にとっては「曖昧なもの」 だ。
何気ない会話の一つひとつが、思い出がいつの間にか抜け落ちていく。