招待状
「……似合わない?」
ルカ殿下が去ったあと、私は呆然としながら手元に目を落とした。
この指輪が似合わない?どういうこと?
この指輪は、私とずっと一緒にいてくれた。あの船の中でも、侯爵家に来てからも、私を支えてくれた大切なもの。
触れているとどこか安心するし、大丈夫って思える。
だから、似合っていなくてもいい。それに——私はこの指輪を自分で外すことができない。
おそらく、私が船に乗る前から持っていたもの。
「……殿下は、この指輪について何か知っているの?」
もしそうなら、ちゃんと場をあらためて話をしたい。
でも、どうやって?ルカ殿下と私では立場が違いすぎるし、気軽に会える相手ではない。
どうにかして話す機会を作らなきゃ。
お父様にお願いしてみようかな?
「ミア、倒れたって聞いたけど大丈夫?」
はっとして顔を上げる。また、考え込んでいた
アルは心配そうに私を覗き込む。
「うん、殿下と目があったときにね、夢を見たんだ……船にいた時の夢」
「…それは、辛かったね」
「あのね、怖かったんだけどそれがどんどん薄れていくの。感情が切り離されて行って他人事みたいなそんな感覚...」
「... なにこれ、私なんでこんなにおかしいの?
普通はもっと悩むものじゃないの?
なんで何も感じないの、何も思わないの?」
アルの手が私の頬を挟んで諭すように見つめている
「ミア、ミアが辛い、苦しいって思えなくてもミアが傷ついているの分かるから。それぐらい僕はミアを見続けてきたんだよ。」
「うん、アルにはかなわないなあ」
今まで、私のわからないっていう不安も戸惑いも恐怖も全部受け止めて来てくれてたんだ
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家に帰り自室に行こうとした私をお父様が呼び止めた。
「ミアナ、書斎に来なさい」
お父様の声に、私は少し緊張しながら書斎へ向かった。
扉を開けると、そこにはすでにお母様とアレン兄様もいて、何やら真剣な雰囲気が漂っている。
「え、なにかありましたか?」
「……実はな、王宮から舞踏会への正式な招待状が届いた」
「えっ?」
「ヴェストリア王国の王弟を迎えるための舞踏会だ。我が家にも招待状が届いていて、家族全員での出席が求められている」
「舞踏会……?」
思わず目を瞬かせる。
「今までデビュタント以外の舞踏会は欠席していたが、今回は王命だ。出席せざるを得ない」
「そ、そうなんですね……」
私はこんなんだから、貴族の名前が出てこなかったり、名前と顔が一致しなかったりするから、デビュタントでもいつも家族の側にいて、サポートしてもらっていたんだっけ
「だが、ミアの負担にならないよう、挨拶と軽く家族でダンスをしたらすぐ帰ると伝えてある」
「はい……ありがとうございます、お父様。」
でも、舞踏会……
(……ダンス、久しぶりすぎる……!)
次の瞬間、お母様がにこやかに微笑んで言った。
「というわけで、ミアナ。しばらくはダンスとマナーのレッスンを増やすわよ」
「ええっ!?」
「早速今日からおさらいするわよ」
「そ、そんな急に……!」
「舞踏会は三週間後。何としてでも間に合わせるわよ」
「は、はい……」
(……大丈夫かな、私)
あ、殿下と話したいって伝えるの忘れちゃった...
週末忙しくなるのでしばらく更新頻度下がるかもです