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宝探し、開始

みんなで休息をとった次の日。本格的な宝探しの始まり。

「いい天気だね」

「晴れて良かったですね」

「うん、雨でも降ったりしたら大変だったね」

 翌朝は良く晴れていた。天井の穴からは穏やかな陽の光が注いでいる。夜明けのオレンジ色と夜の青が混ざり合った、早朝の空が見えていた。

 僕とクリストは朝食の準備の真っ最中だった。綺麗な緑色を極力避けて、植物を傷つけないように気をつけながら、小さな焚き火を作る。その周りに、簡易パンとか干し肉を串に刺して焼いて、香草を使ったサラダ、飲み物を用意する。

リードとノイズは自分たちの寝床を片付けて、軽く見回りに行くと言って広場を回り、それから入り口の方を警戒しに行っている。

ミルスは、欠伸をしながらそれを眺めているだけ。

 本格的な宝箱の捜索は、朝食を終えてから。リードとノイズが戻ってくるのに合わせるように、簡易パンが焼き上がって、香ばしい、良い匂いが辺りにただよってきた。

「お、良い匂いだな」

「タイミング良かったようね」

「うん、バッチリ」

 小さな焚き火を囲んで、五人は丸くなって座った。ミルスも、ちょっと寝ぼけてるのか、ふらふらしながらやってきた。それでもちゃんと自分用の毛布を持ってきている。

「おいミルス、足元しっかり見て歩けよ? 苔とかで結構滑るからな」

「んー……分かってるわよ……」

 眠そうな目をこすりながら、ミルスが答える。

「相当疲れていたようですね」

「そうみたいだね。ほらミルス、焼きたて、美味しいよ」

 言って僕はパンを一つ彼女に渡す。無言で、それを受け取るミルス。ついでに、目が覚めるように熱いスープも用意して渡す。眠いのか、ぼーっとしてるだけなのか、今は文句も言わずに受け取る。

「ミルスってほんと、朝に弱いのね」

 パンを飲み込んでから、ノイズが呆れたように言う。ま、静かで良いんだけどね。……って、そんなこと言っちゃミルスに悪いかな……。

「食ったら宝探しだな。さっき大体の検討はつけてきたぞ」

「ホント? 近くにありそうなの?」

「いえ、近くにはないみたいよ」

「え? じゃあどの辺?」

「あそこにちょっと小高くなってる場所、あるじゃない? あそこの崖を登って行ったところじゃないかしら」

 ノイズが指差した場所には、言う通り小さな崖みたいな場所があった。その上にも、小さく平らな場所がちらりと見える。壁に貼り付いた棚みたいだ。

「その辺見た時にはそれらしいもんはなかったからな。あるとしたら、多分あのあたりなんじゃねーかな」

「ま、また登るの?」

 一気に目が覚めたように、ミルスが反応した。昨日の行程を思い出したんだろう。リードたちが言う場所に行くためには、また崖を登らなきゃいけないんだもんね。躊躇する気持ちも分かるけど……

「登らなきゃ目的の物は見つからないんだよ?」

「それは……そうだけど……」

 ものすごく悩んでる顔で、パンをじっと見つめるミルス。

「なんなら、まず俺たちが行って確かめてみるよ。そんで何かあったらお前も来い。それでどうだ?」

「そうね、それがいいわ」

 即座に返答するミルス。

「もしそれで宝箱があったら、あたしも行くわ。とりあえず偵察ってことで、あなたたちが行ってよね」

 と言う訳でリードとノイズ、そして僕の三人が崖に登ることになった。今は明かりは必要ないから、その分身軽にはなってるんだけど、僕は杖を持ったままだから、やっぱり厳しいなあ……。

 用意した朝食をみんなが綺麗に食べ終えて、片付けを終えてから。僕たちは装備を再点検して目的の崖へと向かった。

「ルシア、俺が上からロープでも降ろすから、それに掴まって上がって来い」

「うん、分かった」

 僕が杖を手放せないのを知ってるリードとノイズがまず先に立ち、僕は下で見守ることに。こんな時にモンスターが襲ってきたら、シャレになんないからね。僕はいつでも魔法を唱えられるようにスタンバイしながら、リードが上に到着するのを見守る。

「よし、大丈夫だ! ルシア、ロープに掴まれ」

「うん!」

 言われた通り、投げ下ろされたロープを掴んで両足を突っ張るようにして崖を昇って行く。このとき僕は、杖を腰のベルトに挟んで両手を自由にしてるんだけど、なにしろ杖自体が僕より背が高いから、これはこれで結構邪魔なんだよね……でも僕、杖がないと魔法使えないし……仕方ないんだよね、こればっかりは。

 それでも何とか崖を登りきった。そこは、

「結構広いね……」

「ああ……思った以上だな……」

「奥に続いてるわ、どうするの? 二人を呼ぶ?」

「ちょっと様子見て来るから、お前らここで待ってろ」

「うん」

「ええ」

 崖を登りきったその場所は、下から見上げ想像していた以上に広かった。というより、見えていたのはほんの一部分だけだったみたい。僕たちが辿り着いてキャンプをした場所が一階で、天井、つまり地上部分を二階とすると、ここは中二階のフロアってところかな。ただし、かなり広くて奥に続いてるみたいなんだ。奥に行くにつれて暗くなっているから、また洞窟に戻るような感じになるんだ。だから、リードには魔法の明かりが灯ったランタンを渡してある。

 棚みたいに出っ張った所が、今僕たちがいる場所で、そこから壁の中に入ってくみたいな感じ。リードの姿はゆっくりとその闇に溶け込んでいって、魔法の明かりがぼんやりして見えるようになった。しばらくして、リードが戻って来る。

「どうだった?」

 急き込んで聞く僕たち。

「いや……なかなか深いみたいだぜ? あとの二人も呼んでこよう。すぐには見つかりそうもねーからな」

「分かったわ」

 言うとノイズは二人を呼び、僕がしたのと同じように、ロープを伝って登ってきた。ミルスは、ロープに掴まったところを僕たちが引き上げたんだけどね。

「ふう」

 一息ついているところに、クリストも追いついてきた。

「これはまた……凄いですね」

「な? 奥がまだ深いみたいなんだよ。今度はみんなで行ってみようぜ」

 言って奥を示す。クリストが持ってきた荷物と、自分たちの荷物をまたしっかりと確認しながら、僕とノイズも準備を進める。魔法の明かりをそれぞれのランタンに入れて、準備完了!

「どうやらここから先は、地図には載っていないエリアのようですね」

「それじゃ気合い入れて行くぞ、準備いいな?」

「大丈夫!」

「あたしも、いつでも行けるわ!」

「私もです」

「あたしも大丈夫よ」

 全員がOKの合図。確認して、リードが先頭を行く。続く順番は、洞窟に入ってきてから変わってない。順番に闇の中へと滑り込むようにして入って行く。

 洞窟内は、やっぱり湿ってじめじめしてたんだけど、こっちの洞窟はヒカリゴケが多いみたいで、それほど暗くは感じなかった。魔法の明かりはあるけど、それだけじゃない、ほんのりとした明かりが壁から伝わってくる。

 洞窟の大きさはそれほど広くない。人が二人並んで歩けるくらいの幅で、高さはリードよりも頭一つ分くらい余裕がある。そこを、一列になって進んで行く。

「足元気を付けろよ。って!」

  ごんっ!

「アホね……」

「頭にも気をつけてね……」

 注意を促すために振り返ったリードの頭に、壁から飛び出た岩が直撃した。自分で言ってる傍からこれだ……リードも結構間抜けだね。

そんな具合に、壁や足元からはごつごつと岩が飛び出ている洞窟内。僕たちはもちろん、クリストはミルスを気遣いながらだから、結構険しい道のりだ。

「クリスト、大丈夫?」

「ええ、何とか……ミルスさん、大丈夫ですか?」

「大丈夫だけど……何なのよ、この足元の悪さは……きゃあっ!」

「おっと」

 なんてやり取りをしながらも、何とか僕たちについて来ている。時々ミルスが上げる悲鳴は、ちょっとした段差に躓いたり、壁を這う小さな虫に驚いたりしているだけみたいで、その度にクリストが手を貸すんだけど、それほど大きな危険があるわけじゃないみたいなんだ。

「この先ちょっと狭くなるぞ」

「うん」

 言ってリードが身を屈めるようにして、洞窟内のさらにトンネルみたいになってるところを潜って行く。僕も続いて身体を丸めるように前屈みになって、狭いトンネルを潜る。

 そのトンネルは、それほど長く続かなかった。間もなく、視界が開けてくる。

お読みいただきありがとうございました。

ご意見・ご感想などありましたら、お寄せいただけると幸いです。

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