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復讐は蜜の味

 メアリー=ジェインは手を縛られ、二人の衛兵に囲まれて立っていた。ひどいかっこうだ。高価なドレスは破れてほこりだらけ。顔は泥で汚れていた。まったく似つかわしくない。


「どうして私の領地にいたの?」

 フラニーが書斎のいすに座って尋問する。


 メアリーは顔を背けて質問に答えなかった。


「よりによって私の領地に?どうしてよ?フィメルから聞いたわ。エズラの子どもたちを誘拐しようとしたんですってね」


「私の姉の産んだ子どもよ。それに、私の夫の子ども」

 メアリーがぞっとするほど暗い口調で言う。


「リシャールも他の子も、あなたの子どもじゃないわ。人質にとって最後の武器にしようとしたのね?あの子たちを肉弾にでもしようとしたの?」


 この女への憎しみはおさまらなかった。下品な女だった。自分勝手で非情。奴隷や愛人たちをはべらせて、いつまでも享楽にふけっている。いやな女だった。ギーが処刑されたのもこの女のせいなのだ。


 だが、メアリー=ジェインも終わりだった。このフランシスのところに来たからには。


「あの子たちはあなたの子どもでもないわ。親になってやれるのは私だけ。あなたもレネーもリリィもエズラを憎んでいるわ。彼の子どもたちを抹殺するつもりでしょう?」


「子どもたちは守るわ」

 フラニーはそう言い切った。

「クローヴィスはリリィが教育を見る。地下牢に閉じ込めたりしないわ。アンヌとオデットはここでヴァレンティーヌと一緒に育つの」


 子どもたちに救いの道はあった。だが、メアリー=ジェインにはない。


 領主館の外で、暴徒たちの声がする。石が飛んできて、何かが壊れる音がした。


 エズラの始めた戦争はうまくいかなかった。それで国内で好き勝手していたメアリー=ジェインが、エイダの民衆の敵へと様変わりしてしまったのだ。


「あなたの引き渡しを望んで騒いでるの。あの人たちは、あなたを殺したいのよ」

 フラニーが言う。


「フランシス、そんなことできないわ。そんなことしたら、エズラがあなたを殺す」

 メアリー=ジェインが目を吊り上げた。


「エズラは死んだわ。私が殺したの。首をきりおとしてね、宮殿と一緒にレネーに差し出したわ。あなたも外の人たちに渡せば、体を生きたまま八つ裂きにされる。魅力的な顔もバラバラになって台無しよ。でも、レネーのもとにも小指の一本くらいは届くでしょうね」


 復讐は蜜よりも甘い。ギーの死も、兄が王になってから経験した嫌な思いも、忘れられなかった。メアリーが人魚や奴隷たちにした、残虐な仕打ちも。


 彼女を憎んでいた。


「ペレアスは私を忘れないわ。彼は私を愛してた。あなたを殺すでしょうね。ただ殺すんじゃなくて、痛めつけるわ。皮膚をはいで、腰が立たなくなるくらい鞭打つ……」

 メアリーがそう言いながら、残酷に顔をゆがめる。想像の中での殺人を楽しんでるみたいだ。


「ペレアスは地下牢に入れられても、あなたのことなんて一言も口にしてなかったわ。彼が気にかけてるのは自分の身だけ。復讐なんてしにこないわね」


 いきなりメアリーが高笑いを始めた。ゾッとするような笑い声だ。


「あなたも変わっちゃったのね。正義の味方のあなたがね。ギーのことをひたむきに愛して、宮廷じゃ迷子みたいに困った顔をしてたわね。あなたが嫌いだった。子羊みたいに無垢な顔をしてるあなたが我慢できなかったのよ。だからギーを殺させたわ。エズラをそそのかせて、フィルスと悲惨な結婚もさせた。それなのに、しまいには私みたいになっちゃうなんて。あなた、呪われてるわ。愛人だっているでしょ。他人の血を見るのも大好き」


 フラニーは外の暴徒に引き渡した。メアリーは引きずられながらも、笑うのをやめない。狂った群衆の中で、殴られ、血しぶきが飛ぶのが見えた。


 フラニーは書斎に立って、民衆が暗闇のなか、一人の女を殺すのを見ていた。顔に笑みを浮かべながら。

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