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美貌の青年

 エズラとペレアスは激しいキスを交わしながらベッドに倒れ込んだ。お互いに服を脱ぎ合いながら、荒々しく愛撫あいぶを重ねる。


 ペレアスは耳を赤くして、ベッドに横たわった。エズラがペレアスから身を離し、お互いを見つめ合う。だが、それも一瞬のことだった。エズラははやる気持ちを抑えようともしなかったし、ペレアスはすぐにエズラの欲望を受け入れたのだ。顔が赤く染まり、快楽が表情になって浮かんだ。


「なぜメアリーはいたんだ?三日前には帰っているはずだった」

 ことが終わった後、エズラがつぶやく。


「帰ろうとする途中で捕えられたのでは?」

 ペレアスが言った。


「三日の距離だというのに。河を渡っていたはずだ」


「エイダ軍が連れ戻すのに時間がいったんでしょう。運が悪かったんだ」

 ペレアスがエズラの背中を撫でながら言う。



 メアリー=ジェインは赤い目をして天幕の中に座っていた。レネーからひどい侮辱を受けたことが頭から離れない。


「無事で何よりだ」

 エズラが天幕の入り口に立って言う。


「無事で何より?あんた私を殺そうとしたわね!私の喉に短剣が突きつけられてるって言うのに攻撃なんかさせて。レネーの部下たちがもうちょっと間抜まぬけじゃなかったら死んでいたわ!」


 メアリーは怒り狂っていた。


「だがこうして生き残っているじゃないか。あいつらが間抜けだってことはわかりきったことだ。それよりお前はどうしてレイドゥーニアの奴らに捕まった?武器を届けたらすぐに帰るはずだった。戦場の近くをうろうろしてたら、みすみす殺されにいくのも同じだ」


「すぐ帰ったわよ。でも野営地からつけられていた。車輪がぬかるみにはまって御者が馬車から降りたら、取り囲まれてどうしようもなかったわ。何よ?馬鹿な小娘みたいに、あんたのために命を捨てろっていうの?そんなことしないわよ、絶対に!」

 メアリーが顔をしかめて吐き捨てた。


「いつかお前を殺してやる。この手で殺してやるよ」

 エズラがメアリーの頬に触れて言う。


 メアリーは頭をのけぞらせて、低い声で笑った。エズラの冷徹な妄執の浮かぶ顔を前にして、いつまでも笑い続けた。




 夜、城の中は静かだった。やっと考え事をできる。やっと一人になって……


 リリィは漆黒の長い髪をゆるく三つ編みにして、トゥーリーンのことを考えていた。もちろん夫のある身でありながら、彼のことを想うのは間違っているだろう。でも、彼とは滅多めったに会う機会はないのだし、危険で不適切な関係に発展するとは思えない。


 それにしても、トゥーリーンも自分と同じ気持ちでいたのだ!長い時間が経ったというのに。


 リリィは自然と顔をほころばせた。


 高鳴る心臓、浮つく気持ちをおさえようとガウンを羽織り、外に出た。


 円塔の近くに白く丸い月が浮かんでいる。静寂そのものだ。衛兵たちがくつろいで話しているのが聞こえてきた。



「悪いが明日の朝にしてくれ。夜は人を入れてやれない決まりでね」

 門番が怒鳴っている。


 女の必死に訴える声がきこえた。だが、門番に心動かされた様子はない。


 リリィは吸い寄せられるように門番の近くに行った。


「でもアストレアから遥々(はるばる)息子を探しにきたんです。戦争が起こって、大変なことに巻き込まれてるんじゃないかって。息子の顔を見るまでは、一息もつけないんです」

 女が懇願する。


「知ってる人かもしれないわ」

 リリィはそうつぶやいて聞き耳をたてた。


「どっちにしろ、息子さんがこの城の中にいるなら心配することはありませんよ。諦めてください」

 門番が言う。


「あの子はまだ六歳なんです。夫に同意して皇帝に預けたのが間違いだったわ。イリヤ城は敵軍に囲まれているじゃないですか」

 女はなおも言い続けた。


「知ってる人だわ!門番、彼女を通してちょうだい。古い知り合いなのよ!」


 門番が鈍臭どんくさそうにリリィを見た。

「姫君、困りますよ。でもいいでしょう。おおせのままに」


 門が開いた。女が立っている。くたびれたマントに乱れた髪。泥だらけの靴。

 

 間違いなくレイチェル・モートンだった!でもマティアス・トルナドーレ夫人にはまったく見えない!上流の貴婦人の面影はまったくなかった。頬には大きな青あざができていたのだ。


「レイチェル?レイチェル?あなたに会えるなんて!」

 リリィがそう言ってレイチェルをきつく抱きしめる。


「ああ、リリィさま!ジョンを知りません?私の息子を!」

 レイチェルがほとんど発狂しそうになりながら言う。


「今は寝ているわ」

 リリィが慌てて言った。


「一目見るだけでいいんです。明日の朝、また話せるでしょうから。ジョンのところに連れていってください」



 レイチェルが見た光景。ジョンはピンク色の頬をして健康そのものだった。ベッドの上で、あのメアリー・トマスに子守唄を歌ってもらっている。目を眠そうにしばたいて、平和そのものの顔をして。メアリーの胸に寄りかかっていた……

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