僕の耳に蚊が入ったら、人類が滅亡していきました
その日はまだ初夏のころだった。
僕はその時寝ていた。
その時、耳障りな煩い音が僕の顔の周りで聞こえていた。
耳にただ、その蚊は耳にまとわりついてきた。
その日はやけに妹がざわついていた。
何か対策をしないとな。
今年はまだ蚊に対する対策という対策はしていなかった。
「ここだっ」
暗闇の中、音が鳴る方向を叩こうとした。
蚊には逃げられた。
その日は疲れていたので周りを漂う蚊が気になったけど、その日は休んだ。
後々、人類の半分が蚊のせいでいなくなるなんて、その時は思いもしなかった。
◇◇
朝起きるとスマホには緊急警告が出ていて、テレビではその話題で持ちきり。
もちろん僕はそんなことは知らずに、普通の生活を送っていた。
そういえば昨日の蚊、どこに行ったんだろう。まだ家にいるのかな?まあいいか。
◇◇
「大丈夫だったか。お前は大丈夫だったか?」
友達はそう言った。
「何のこと?」
「お前、ニュースとか見てないのか」
「見てないね」
「むしだよ。虫!お前の家にも来なかったか?」
「そんな事件になるような虫はいなかったけど」
「そうか……。まあ今日学校に来れてるんなら問題はないんだろうけども、気をつけなよ」
一体何があったと言うんだろう。
朝のホームルームが始まると、そこでようやくわかった。事件の重大さが。
学校は安全を配慮し、授業は午前中で打ち切りとなった。
そういえば昨日の夜寝ていた時に1匹の蚊が、僕の耳の中に入ったっけ。
もしかしてあれ関係あるのかな。
とにかく家に帰ってネットで情報を集めてみるかな。
家に帰りパソコンで情報を集めていると、そこには驚くべき情報があった。
謎の突然死の原因がわからない。犯人の正体が分からない。
でも昨日は虫の蚊が大量に発生したということだけ。
それと同時に何万人もの行方不明者や死亡者が。通常では考えられないほど増えていることだった。
明らかに何らかの原因があって。
蚊が大量発生したことに関係しているらしい。そう、色々な学者が言っていた。
なんでそうなったんだろう。全く意味がわからなかった。
その日から世界中に蚊が大量に沸いていき、対策をする人類との戦いが始まった。
◇◇
数日後、研究者の発表が大々的になされた。
どうやら今までの蚊とは違う、新種の蚊が発見されたらしい。
いや蚊に似た、いやいや蚊に似た新種の生物が。
その蚊みたいな新種の生物が、人類の耳に入ると生命を脅かす病気か何か、
あるいは何らかの作用によってその人は、当日または数日後に突然死するらしい。
にわかには信じがたいが、その発表は時を経て現実味を増していった。
そしてついには正式の発表を迎えることとなった。
人々はその発表を迎えるまで自宅に待機。ことが収まるの待っていた。
そんな人類の期待とは裏腹に、蚊の大量発生は止まず。
その勢いは衰えず、被害者はどんどんと日に日に膨らんでいった。
そして政府は対策にようやく乗り出した。
その新種の蚊は普通の殺虫剤では死なず、簡単には駆除できない。
おまけに普通の蚊と見分けもしづらく。
駆除するには、結果的に捕らえて燃やすしかなかった。
どこからどのようにして、発生しているのかが分かっておらず。
その発生源の元を立たない限り、数を減らすことは不可能であった。
研究によると発生数が異常であり、とても駆除のスピードには追いつかないほど。
発生が非常に多いということである。
ここでまず家に発生しないようにする、などの対策を講じても。
家のわずかな隙間から、その蚊は入ってくる。
その新種の蚊、その新生物の大きさは普通の蚊と何ら変わりなく。
今日の窓のちょっとした隙間から簡単に侵入する。
なので対策を十分にしていても完全に防ぐのは不可能であった。
これはどうしようもないな。いくら対策を施した家でも。
耳に入るなら……。いつも耳を塞げばいいのではないか。
当然そうなる。
そして自宅で耳栓をして、静かに過ごすというのが最近の人々の生活である。
外では某ウイルスの時のようにマスクを。
いや、耳にマスクをするとでも言うのだろうか。
耳にマスクをして生活する日々。
それでも人類の減少は留まることはなかった。
◇◇
そして数ヶ月経ったある日。
そういえば、やっぱ僕の耳の中にも入ってたわ。
でも体に異常は起きなかった。あの蚊はどこに行ったんだろうな。
そう思っていた時。また研究の成果が発表された。
人類の人口は半分になりました。
でもここ数ヶ月、何も異変は起こっていません。
例の生物は見かけられますか、見かけられますが。
死亡者の数は全く増えていません。死亡者の数は全く出ていません。
どうやら耳の中に蚊が入っても、亡くなる人と亡くならない人がいるらしいです。
重篤になる人と重篤にならない人の、明確な基準はわかっていませんが。
どうやら耐性を持っている人は死なないらしいのです。
その人数が人類の半分だったということでしょうか。
これはあくまで仮説ですが。今、関連性を調べています。
ということは僕は耐性を持っていたということか。
つまり今生き残っている人たちは全員耐性を持っている。
……ということはもう別に恐れるものは何もないのでは。
僕が思った通り数ヶ月後、人類は再び普通の生活を始めた。
終わったのか、これで。
でも、もちろんそんな甘い話であるわけはなかった。
◇◇
ある日僕の家によくわからない生物がやってきて話をした。
その生物が言うには、
「人の数が多いから減らした。寿命が長いものだけ選別して残した」と言った。
それって残酷じゃない。
そのあと生物はこう言った。
「そうしたら時間がたてばたつほど、優秀な遺伝子が残るんだよ」
それで僕は言った。
「そっか、じゃあ未来の人間は長寿命だね」