反抗の意志
「ちょっとカイナ!」
「カイナ!止まってください!」
クォーフルとルビィがカイナを取り押さえる。
「二人とも何するの!」
「カイナ!わたしたちはここへ何をしに来たんでしたか!?」
カイナははっとした顔で暴れることをやめた。
「…クリスの実力を確かめに来たんだったね。」
「その通りです。わかったならいいんです。」
二人はカイナを離して俺に向きなおる。
「クリス、あなたの強さはよくわかったわ。これからよろしくね。」
「よろしくお願いします。」
クォーフルとルビィは真面目な顔で挨拶を済ませ、俺と地面に座り込んだままのカイナを残して宿屋の方角へと歩いて行った。
「ごめんね~さっきはちょっと頭に血がのぼっちゃって。」
あっけらかんとした顔でカイナが話しかけてきた。
「ああ、かまわないぞ。」
「……。」
「……。」
「……実はね。」
カイナが話し出した。
「昔、家に来た軍人も同じクリスと同じ妖術を使ってたんだ。」
「…そうなのか。」
おそらくクォーフルの言っていた軍人と同じだろう。
「それで、あのときのことを思い出しちゃって…クォーフルもルビィもいたのにおばあちゃんを守れなくて…くやしくて…」
「過ぎたことにしていいのか?」
「え!?」
虚をつかれた顔でカイナが俺を見る。俺とカイナの目が合う。
「そのくやしさをそのままにしていいのか?」
「…いやだけど……でもどうしようもないし…」
「そんなことはない。俺たちで復讐してやればいい。」
カイナが目を見開く。
「ほんきで言ってるの!?」
「本気だとも。」
俺は自信を持って答える。
「俺たちでその軍人を討ち取るんだ。」
日が傾き始めた頃、俺とカイナは宿屋に戻ってきた。
「お帰りなさい。カイナ、クリス、ディナーにしましょう。」
ディナーはルビィが作ってくれていた。羊肉のシチューにサラダとパンプキンスープ。とてもおいしそうだ。
「いただきます!」
全員で手を合わせ、ディナーを食べる。予想通りとてもおいしい。
「ところでさあ。」
カイナが口を開いた。
「あたし、あの軍人に復讐しようと思うの。」
途端に、クォーフルとルビィの表情が険しくなった。
「…本気で言ってるの?」
「もちろんほんきだよ。」
「俺も協力する。」
クォーフルとルビィが驚いた顔でこちらを見る。
「本当ですか?クリスさんには関係のないことなのに…」
「そうよ。あなたにまで迷惑はかけられないわ。」
「いや、俺にも関係がある。」
クォーフルとルビィは不思議そうな顔をこちらを見る。
「もともと妖術師がいなくなった原因はこの国にある。そんな国に一矢報いたいんだ。俺にも協力させてくれ。」
「そうですねえ…」
ルビは10分程考え込んだ後、口を開いた。
「わかりました。やりましょう。」
「ルビィ!?本当にやるの?」
「はい。」
ルビィは力強く頷いた。
「…仕方ないわね。私も覚悟を決めるわ。」
「ありがとう。ところで、その軍人の名前はわかるのか?」
「ええ……その軍人の名前は…」
クォーフルは唇を舐める。
「この国最強の剣士、マサノリよ。」
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