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新しい仲間

「わかった、いいだろう。テストを受けるよ。」

俺はクォーフルのテストを受けることにした。

「それで、どんなテストなんだ?」

「簡単なことよ。」

クォーフルは紅茶を一口飲む。

「この宿屋について感想を教えてちょうだい。」

…感想?この宿屋の?

「そうだな…なんというか…暖かみを感じたな。迎え入れてくれる感じの…おばあちゃんみたいな?」

スッと息を吸う音が聞こえる。

ルビィが静かに口を開いた。

「この宿屋はクォーフルのおばあちゃんが建てた宿屋なんですよ。」


「クリス、ひとまずあなたを合格とするわ」

静寂を打ち破ってクォーフルが口を開いた。

「良かったねーパチパチ」

「………良かったです。」

カイナはのんきに拍手し、ルビィは少し間うつむいていたが、こちらに笑顔を見せてくれた。

「仲間になったことだし、あなたの能力を見せてもらおうかしら。」

「えっ!」

俺はぎょっとする。あんまり見せたくないのだが…前のパーティのようになっては意味がない。

「わかった、どこか広いところへ案内してくれ。」

「それならこの近くの草原がいいですね!」

「あたしも行くー。」

ルビィが勢いよく駆け出して行き、カイナもそれに続いて斧を担いで飛び出した。

「…行きましょう。」

子供のような二人に大きくかぶりをふったあと、クォーフルは俺にそう言った。


「…私のおばあちゃんは優しい人だったわ。」

草原へ向かっている途中、クォーフルが話しかけてきた。

「本当に優しくて素敵な人だった。見ず知らずの人間にも優しかったし、身寄りのない子を拾ったりもしてた。私が良いことをした時は褒めてくれたし、悪いことをした時はしっかりと叱って道を正してくれたの。みんなそんなおばあちゃんに会いたくて宿屋に来ていたの。お陰で宿屋は繁盛していたわ。」

クォーフルは続ける。

「ある日、宿屋に軍のお偉いさんがいらしたの。居心地の良い宿屋というのを人づたいに聞いたらしいわ。もちろんおばあちゃんはいつも通り丁寧に優しく接したわ。でも…」

クォーフルが歩みを止める。見ると、クォーフルの目には涙が溜まっていた。泣くまい堪えていることがわかる。

「その日のスープは私とおばあちゃんが引き取った子で作ったの。おいしく出来ていたと思うわ。何度も味見したもの。でもその軍人の口には合わなかったみたいでスープの入った皿を床に叩き落としたの。」

クォーフルは鼻をすすった。

「おばあちゃんはその軍人叱ったわ。もちろん愛を込めて。そうしたら…その…軍人は……おばあちゃんを…。」

クォーフルの声が途切れ途切れになる。

「剣を抜いて……切り捨てたの…。」

俺はクォーフルを見ていた。クォーフルも俺を見ていた。そうしてしばらくの時間が経った。


クォーフルは息を吐き、また歩き出した。

「ありがとう。話を聞いてくれて。」

クォーフルはそう礼を言った。俺は礼など聞こえてはいなかった。俺は長年共に過ごした仲間を失ったが、クォーフルもまた、同じくらい大切なものを失っていたのだ。しかもそれまで関わってこなかった見ず知らずの他人の身勝手なわがままのせいで。俺はその軍人を許せなくなっていた。


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