出会い
「ちょ、ちょっと待って!」
駆け出した少女に急いで声をかける。
「どうしたんですか?」
少女は不思議そうな顔をして立ち止まる。
「どこへ行くんだ?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?他のパーティメンバーに会いに行くんですよ!」
…展開が早いな……
「それはいいんだけど、君の名前くらい教えてくれないか?」
「わたしですか?わたしの名前はルビィです!」
「ルビィか…確かにその綺麗な宝石のような瞳にはよく合っているな。」
「き、綺麗ってそんな……」
「……?顔が赤くなっているぞ。大丈夫か?」
「わ!だ、大丈夫です!早く行きましょう!」
そう言ってルビィは顔に背けて走りはだした。気を悪くさせてしまったか…?
「はい!着きましたよ!ここがわたし達の住んでいる宿屋です!」
連れてこられたのは、2階建ての、重厚感を感じる石造りの建物だった。落ち着いた色調の石壁は、幾年も前から存在していたことを想像させる重厚感を発している。花壇に植えられている花は石の重々しさを和らげ、訪問者を優しく手招きしている。初めて来た場所のはずだが、どこか懐かしく、心が休まる気がする場所だった。
「こちらへどうぞ!」
いつの間にかルビィが玄関の扉を開けてこちらを見ていた。
「ああ、今行くよ。」
俺は急いでルビィの元に向かった。
宿屋の中も外見に劣らず、洒落たインテリアが置いてあり、落ち着いた雰囲気を造り出していた。例えばあの時計。壁掛けの振り子時計だが、木目の模様と石壁の単調さが上手く合っている。少し暗い木の色も、窓から差す日光で、陰鬱な印象を持たせず、大人の余裕を感じさせる。そんなことを考えながらルビィの後を歩いていくと、ルビィが一つの部屋の前で立ち止まった。
「わたし達の部屋はここです!クォーフル!カイナ!今帰りましたよ!」
恐る恐る部屋の中を覗くとそこには2人の少女がいた。一人はベッドに寝転がっており、もう一人は椅子に座り優雅に紅茶を飲んでいる。
「お帰り、ルビィ。その人は?」
紅茶を飲んでいる方が口を開いた。色白で耳が尖っている。エルフだろうか。よく見ると、そばに弓が置いてある。華奢な体格で紅茶を口に運ぶ手つきはしなやかだ。瞳は翡翠のような緑色をしている。
「もう!クォーフルちゃんったら!出ていく前に言ったじゃないですか!新しいパーティメンバーの方ですよ!」
クォーフルは首をかしげている。
「覚えてないわねぇ……」
「はぁ~、まあいいです。それよりもカイナ!早く起きてください!新しいパーティメンバーの方ですよ!」
「ふあ~あ」
カイナと呼ばれた方が起き上がる。
「なぁに?ルビィちゃん。気持ち良く寝てたのに~」
「寝ぼけてないで!新しいパーティメンバーのクリスさんです!」
…騒がしいパーティだな…
「ちょっと待って」
クォーフルが二人を静止する。
「まだ正式にパーティメンバーと決まったわけではないのよ。」
そしてクォーフルはこちらへ体を向ける。
「クリス、あなたに少しテストをしてもらうわ。」
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