追放された男 クリス
「クリス、お前は解雇だ。」
そう俺に向かって冷たく言い放ったのは、俺の幼なじみで、12の時からパーティを組んでいたアランだ。
「なっ……」
「役立たずなのよ!」
口を開こうとする俺に被せるように魔法使いであるリリィが俺に指をさしながらまくし立ててきた。
「いつも魔法使いのあたしよりも後ろでちょこまか動いているだけじゃない!攻撃している素振りもなく!おまけに体が小さくて物資はいつもアランがはこんでいるし、はっきり言ってあなたがパーティにいるだけで迷惑なのよ!」
「悪いが、俺もそう思う。」
今まで口を閉ざしていた剣士マサノリがおもむろに話し出す。
「クリス、俺は自分が刀を振るってモンスターと戦っているときに後方で怖じ気づいて震えているだけのお前と報酬が同じ額というのが我慢できない。本音を言うと3年程前からお前には不満を溜め込んでいたのだ。」
「そんな…」
ショックだ…マサノリとは親友だと思っていたのに…
「そういうことだ、クリス」
再びアランが口を開く。
「わかったらとっとと出ていくんだ」
「あ、装備品は置いていってね~」
「さらばだ…また会う日まで…」
こうして俺は6年間連れ添った仲間に裏切られ、無一文で追放され、路頭に迷うことになったのだ。
「これからどうやって生きていけばいいんだ…」
俺は途方に暮れていた。
俺は幼い頃から戦闘ばかりしてきた。宿の予約も仲間に任っきりだった。当然街で生きていく術などもっていない。動かないわけにも行かずとぼとぼと街を歩く。
「お兄さん!」
突然声をかけられた。顔をあげると兎耳の生えた紅い瞳の少女がこちらを不思議そうに見ていた。顔は整っていてつぶらな瞳がとても愛らしい。そして小さな体には不釣り合いなほど胸が大きい。嫌でも目が吸い付いてしまう。
「あのぉ…」
申し訳なさそうな少女の声で正気を取り戻す。
「ああ、すまない…」
「いえいえ!ずいぶんと落ち込んでらした様子でしたがどうしたんですか?」
「実はパーティをクビになってしまってね…仕事がないんだ…」
「え!そうなんですか!丁度良かった!」
少女は目を輝かせる。
俺は不思議におもいながら女の子に聞く。
「何が丁度いいんだ?」
「実は、私たちのパーティは以前から火力不足に悩んでいて…お兄さん見たところ後衛職ですよね!良かったら私たちのパーティに入りませんか?」
確かに職に困ってはいるが…先程のパーティ追放が思い返される。もうあんな思いはしたくない。
俺が考え込んでいると、少女が顔を覗き込んできた。
「お試しでもいいですからどうですか?」
そこまで言われたら仕方がない。
「わかった。パーティに入るよ」
「わあ!ありがとうございます!それじゃあ早速行きますよ!」
そういうと少女は俺の手を掴んで走り出した。
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