第3話 最善策
私はこれからどうすべきかを巨乳・・じゃない第4勇者の聖さんと打ち合わせする。第1勇者の吊欺がいない今が最高のチャンスだ。
「聖さん、この世界に来てから知らないはずなのに何故か知ってるって感覚ありませんか?神様が与えた力だと思うんですけど」
「何だか支援魔法というのを複数会得しているみたいです。先ほどから知らない単語が頭の片隅に入っていくような不思議な感覚があって…あと状態異常無効と、これはどういうことでしょうか?」
これは吊欺が説明していた能力だ。
吊欺は聖さんを補助魔法の使い手とし、強化魔法担当と決めていた。状態異常無効は不測の事態が起きても問題ないようにということらしい。
「ゲームだと状態異常無効は毒や麻痺などのバッドステータスにかからないという感じのものですね。支援魔法はどのような種類ですか?」
「そうですね、いくつか頭に浮かぶ単語を言葉にしてみます。
生命力、魔力、精神力、治癒力、筋力…他にも沢山あります」
「なるほど、では聖さんはゲームとかされますか?」
「ゲームはやったことないです」
「支援魔法は使い時が肝心なんですけど、そういう見極めってわかりますか?神様がくれた力の魔法効果については何故か理解できてると思うんですけど」
「そうですね、効果については何故か知っています。知っていても何を何時使えば良いのか悩みます」
「聖さんの力は直接回復できる能力ではないですけど、補助する力があります。戦闘や危険な事が起きそうになったら優先すべきは治癒力と防御力と移動力の強化だと思います。ただ、精神力も優先する必要があるかもしれません、剣と魔法の世界なら殺し合いの世界なので…」
「やっぱりそうなんですよね…吊欺君はもしかして?」
「アイツはたぶんモンスターで試し斬り中です」
暴力的な吊欺を思うと不快になり、つい吐き捨てるように言ってしまった。
「そうですか…。例えばですけど、精神力を強化すれば冷静にになるとかないですか?」
「無いと思いますけど、良かったら試しに私達3人の治癒力と精神力を強化してみてもらえませんか?」
「わかりました。
上級治癒力補助小範囲、上級精神力補助小範囲」
聞き慣れない呪文を聖が唱え終わると白い光が私達3人をうっすらと覆っている。
なるほど、持続してる間はこれが見えるわけか。
「聖さんの力、凄いですねこれ。悩んでいた気持ちが随分マシになった気がします」
「私はちょっと良く分からない疲労が一気に来ました…気分は前向きになった気がしますけど」
「もしかしたらですけど、魔力を消費したからかもしれません」
「魔力ですか?」
「ゲームの世界では魔法は魔力を消費して使うのですけど、力の大きな魔法程大量の魔力を使います。魔力が足りずに使う場合、小説なんかでは気絶したりします」
「第3勇者ちゃんが気絶してるのはそれですか?」
「いえ、これは私の姿を見てしまって…」
「あぁ…オバケ…モヤモヤしてますからね」
「あ、あはは、あとで謝らないとです。あと質問なのですけど、魔力については感覚何かわかりますか?」
「…支援魔法の事なら何でも分かるみたいなんですけど、魔力については何も」
「やっぱり聖さんもですか、私もなんです。あ!第3勇者の膝!見てください!」
気絶した時に擦りむいたらしい少女の膝の傷が目に見える速度で塞がっていく。
「これは…治癒魔法の影響でしょうか」
「多分そうですね、本当に異世界に来てしまったみたいです」
「無事に帰れたりしないのでしょうか?」
「今の所情報が少なすぎます。それで、提案なのですけど私はいざという時のために光学迷彩の能力で少し離れた所から魔法使いちゃんと聖さんを守りたいと思います」
「姿を見せないという事ですか?」
「そうですね。それと、吊欺には私の能力の事は伏せておいて下さい。第5勇者が転生をお願いしたと伝えればきっと吊欺なら私の事も都合良く誤解してくれると思います」
「誤解させてどうするのですか?」
「仮にお二人が吊欺から襲われそうになったりしたらすぐに助けられます」
「…あまり考えたくはありませんが、宜しくお願いします」
「もし問題なさそうならその時はちゃんと姿を見せますので、それでは私は一度離れます」
「わかりました、冥さんも気をつけて」
私は二人を残して吊欺の痕跡を追った。