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いつものメンバーが揃ったけれど



 無秩序な衝撃波に、結界を張ってなんとか耐えるしかない。

 オッドウェルの様子はますますおかしくなっていき、キーラインの勢いは増すばかりだ。


「オッドウェルの精神が暴走してる……!」

「このままじゃ吹き飛ばされます! 何か策を考えないと……!」


 衝撃波が時計の秒針のごとく絶え間なく襲いかかり、結界ごと吹き飛ばされるのは時間の問題だ。


「どうしてこんな急激に……!」

「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおん!!!!」


 その時、オッドウェルが獣のような遠吠えをあげた。

 呼応を求めるような、威嚇のような、それとも燃え上がった憎しみの発散なのか。

 さらに激しい衝撃が襲いかかった。


(結界を補強する腕も痺れて感覚がなくなってきてる。これ以上もう持たないっ)


 オッドウェルが睨みつけ威嚇するゲートに、一体何があると言うんだ。

 結界の中でさえ渦巻く嵐のような強風と衝撃の中、懸命に首を巡らせて絶句した。

 問題のゲートから、アルフレッドが姿を見せたからだ。


「あ、アル!?」


 あまりに意外な人物の登場に、思わずひっくり返ったような声を上げてしまう。


「えっ!? アルフレッドさん!?」

「アルフレッド!?」


 思いもよらなかったのは私だけじゃなかったようで、アイリスもスバルも、結界を強化する手が一瞬止まりかけそうになる程に驚きの声を上げる。

 絶え間ない衝撃波で視界は乱れているけれど、ゲートから現れたのは間違いなくアルフレッドだ。


「アル……?」


 けれどその足取りは、普段のアルからは考えられない程に重い。ふらついていて、倒れ込まないのが不思議なくらいだ。

 しかしすぐに気が付いた。

 アルの体全体から紫の光が立ち上っている。

 よくよく見るとそれは紫の鎖であり、アルの体全部を絡め取るように巻きついているのだ。

 そして彼の体から地面へと長く垂れ下がる鎖は、楔のように深く地面と同化していた。

 アルは鎖に身を絞られ、血を流しながら動いているのだ。


「アル!!」


あまりのことに、状況も忘れて叫ぶ。


「?、アンジェリカ!?」


 無表情だったアルの目が、私たちのいるフィールドを捉えた瞬間大きく見開かれた。

 即駆け出した体に、鎖が食い込み血が飛散する。


「何してるの! 動いちゃダメ!!」


 私の声が聞こえていないのか、アルは流れる血も痛みを無視して動きを止めない。


「ばっ! ばかばか! 動かないでってば!!」

「アルフレッド!」


 私の悲鳴も無視するアルを、正面から腕を回して押し留めたのはレオンだった。


「我が君……!」

「私は無事だ。安心するといい」

「ご無事で何よりです……」


 主人の無事にアルの緊張が一瞬だけ弛緩するが、それもすぐに引き締められる。


「この空間は一体? それに何故アンジェリカとアイリスがフィールド内部に?」

「この空間についてはキーラインの仕業としか答えられない。アンジェリカ達は……」


 そこで一瞬言葉を詰まらせると、レオンは頭痛に呻くかのように額に手を当てると空を仰いだ。


「……スバルの危機に、2人の少女が暴走したとしか言いようがない。3人を救出するにも、フィールドの障壁はキーラインの力で強固に補強され、特定の刺激でないと破損させることが難しい状況だ」

「オッドウェルは……?」


 アルが知っているのは、オッドウェルがスバルの対戦相手に決定したところまでだ。

 何が起こってスバルとオッドウェルの試合にアイリスアンドアンジェリカが参戦することになったのか。

 怪訝そうにオッドウェルの様子を伺うと、アルの目つきが鋭く変わった。


「なるほど。今度はオッドウェルがキーラインに操られたわけですね」

「そのようだ。この空間を作り出したのはオッドウェルのキーラインの力だ。皆、その力に巻き込まれて動きを止めて……待て。どうしてお前は動けているんだ?」

「? 我が君も動いていられるが……」


 何を問われているのかわからず、アルは思ったことを問い返す。

 ここに来るまでの間に全員が動きを止めていたとしても、レオンも私たちも動いている現状では、アルにとっては質問の意味が今ひとつ曖昧で首を傾げてみせる。


「それは、そうだが……」

「それよりも、このフィールドの陣を崩す特定の方法とは?」


 すぐさまアルの鋭い視線がフィールドへと戻る。


「かなり難易度は高い。キーラインの力とスバルの聖女の力を一点に集中させることで、ようやく障壁を破損させる事ができる」

「障壁を破損……。破損という言葉を使うということは、崩壊させる事ができる訳ではないと?」

「さすがに話が早い。その通りだ」

「破損し……、そこから障壁は修復する可能性があるという事ですね」

「……そうだ。もし破損した箇所からの脱出が遅れれば、修復されたフィールド内部に再び閉じ込められる」

「修復のスピードは?」

「……わからない。だが、脱出の方法はこれしかない」

「……それを彼らは知っているのですか?」


 衝撃波の蓮撃に、フィールド内部は竜巻が発生しているような状態だ。飲み込まれたらひとたまりもない。結界を張ってなんとか耐え忍んでいる私たちを、アルはもどかしげに見つめた。


「詳しくは伝えていない。だが、アンジェリカには崩壊はしない事は伝えてある。……アル。この障壁は、「あの時」と同じだ。」

「我が君……」

「私の考えが「あの時」に引っ張られすぎていると思うか? だが、あの時は修復していく障壁に気が付かず、何人もが犠牲になった……」

「我が君!」

「……アルフレッド」


 額に汗を滲ませたレオンに視線を合わせ、ゆっくりと首を振る。


「当時のあなたは出来る限りのことをしたのでしょう。今は「あの時」ではない。そして今ここには聖女もいます」


 けれどアルは、3人を信じるようにとは言わなかった。

 そう伝えなかったのは、アルが実力者で、オッドウェルの操るキーラインの力と、私たちの力の差を正確に見極める事が出来たからなのだろう。

 レオンの肩を落ち着かせるよう力を込めて掴んだ後、アルはきつく目を閉じ、最悪の考えを振り切るように頭を振るう。

 そして血が滴る指先を高く天に掲げた。


「【白道呪縛の黄道、天柱の月。天隕兆す明星】」

「大技だな。3人とも、衝撃に耐えろ!!」

「ええっ!? これ以上かっ!?」


 レオンの呼びかけに、スバルがギョッと聞き返す。

 すでに効果が限界にきている結界に、これ以上耐える事ができるのか。スバルがヤケクソのように石を追加する。

 正直、強化にどれだけ効果があるかはもう不明だけど、私もアイリスも更に補強に力を入れる。


「【掩蔽の龍、6の星を落とす!!】」


 真っ直ぐに振り下ろされた指先から流れた血が直線を描いた瞬間。

 どおんっ。大地の底から鳴り響くような、重低音と共に激しい地震が発生したのだった。


「きゃあぁっ!!」

「じ、地震!?」

「違うっ! 上を見ろっ!」

「う、上ぇ!?」


 地震なのに上!?

 スバルが何を言っているのかも分からないまま上を見上げ、パニックになる。


「隕石!?」


 存在自体噂でしかない、土系魔法の最高峰。

 アルはその伝説級の魔法でフィールドの真上に隕石を召喚し、障壁を押しつぶそうとしているのだ。地震はその衝撃の副次的なものでしかない。


「ちょっ! す、すごいっ! これ、これっどうやってっ、やるの!?」

「アンジェリカっ! 今っ、そんなことっ言ってる場合じゃっ!!」

「馬鹿2人ともっ! 舌噛むぞっ!」


 私たちの頭上で、隕石と障壁が激しくぶつかり合い、目も開けていられない程の光が放出される。雷鳴のような音に地響きが鳴り響き、その巨大な音に耳がダメになりそうだ。

 障壁が内へとたわみ、隕石にヒビが入る。

 あまりの振動に、結界を維持するどころの話ではない。立っている事だって出来ずに、地面に這いつくばるようにして体を支える。

 頭上で、一際まばゆい光が閃光のように放たれた瞬間、凄まじい轟音が鳴り響いた。






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