表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/74

実は主人公を殺したことがあるって内緒だよ


 主人公の魅力に胸をときめかせている間に、アイリスは気軽にスバルに話かけている。

 さすが恋愛に属さないキャラなだけある。アイリスに主人公補正の力は効かないみたい。


「スバルさん。私たちはとある人に頼まれて、あなたのサポートを任されています。何か困った事があれば、気軽にこのベルを鳴らして私たちを呼んで下さいね」


 そう言ってアイリスが取り出したのは、持ち手のついた装飾巧みなベルだった。


(そうそう。そういえば一番最初にもらうアイテムって、私たちを呼ぶためのベルだったわよね)


 ゲームをしていた頃は、お嬢様が執事を呼ぶようなベルだなーくらいにしか思ってなかったけど、今では私が呼びつけられる立場である。

 とはいえ、ストーリーは進んでいるのだ。

 スバルは神殿で『スカイ・アース』に召喚され、そして殺されたばかりの聖女の生まれ変わりだと認識されるようになった。

 そしてそれはイコールとして、聖女を殺した者が、生まれ変わりのスバルを再び殺そうと狙ってくる可能性が高いのだ。

 私はゾッと身震いした。


(そ、そういえば、実際にバッドエンドでは犯人が分からないまま殺害されるのよね……)


 ゲームの中では選択をミスって何度かスバルを殺してしまったこともあるけれど、スバルは今は私の目の前で現実を生きているのだ。


(絶対に阻止しなきゃ!!)


 心の中で決意に燃える。そんな私の心情を知るはずもなく、スバルは戸惑ったまま、それでもひとまずベルを受け取ってくれた。


「まずは学園の中をご案内しますわ。有名な方が何人も在籍しておりますのよ」


 オホホ、なんて笑いそうな気取った喋り方をするアイリスをジト目で見てると、つま先を踏まれた。


「いだっ!」

「もう!アンジェリカったらボーッとしてないで、スバルさんを教室に案内するわよ」


 そうそう、これがアイリスである。

 案内するにしても私は学園のこと何も知らないしなーと思っていると、脳裏に鮮やかな地図が浮かび上がった。

 あれ?これってもしかして。

 浮かんだ地図をマジマジと思い浮かべてみると、それは確かに学園の地図だった。


(うっわ!さすがサポートキャラ!そうだよね、自分が分かってなかったらサポートなんて出来ないもんね)


 今後も何とかなっていきそう。私はとたん元気になる。


「それじゃあスバル、私たちと一緒に教室へ行きましょ」

「ちょっ、アンジェリカ!スバルさんを呼び捨てにだなんて、いけないことよ!」


 私の発言に、アイリスが焦って止めに入る。

 そっか。スバルは聖女の生まれ変わりだと思われてるから、この世界では高貴な人になるんだっけ。

 慌てて訂正しようとする私に、スバルはゆっくり首を振った。


「いいんだ。オレ、かしこまられるより、そうやって気楽に話しかけてもらえた方が嬉しい」


 そう言って笑うスバルは眩しいったらない。

 愛される主人公は性格まで素晴らしいんだ。

 スバルの背後から差し込む後光に、私はそっと手を合わせた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ