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不安的中!?



忌々しげな目線を送りつつも、ウィンディアナ嬢の後を大人しくついていく3人組みにホッとしながら、私はアルに半泣きで掴みかかった。


「ア、ア、アルゥゥ!!」

「うわっどうしたアンジェリカ」


私の必死の形相に若干引いた様子だが、それでも掴みかかった手を受け止めてくれるのがアルフレッドだ。

私はブンブンと首を振りながら訴える。


「や、やってみちゃダメだよ! スバルをやらせちゃったらダメだからぁ〜!!」

「ああ」


混乱に陥っている私の言いたい事がなんとなく分かったのだろう。

ああ、その事ね。みたいな軽い相槌に、私は事態の深刻さを理解させようと、更にアルに追いすがる。

主人公のサポートキャラであるアイリスアンドアンジェリカは、学園生のクラスや成績順位なんかも、その能力で全て把握する事ができる。

ゲームでチュートリアルキャラに色々聞いた時に、なんで個人がそんな他人の個人情報まで知ってんのよ。ってなるアレだ。

なので、あのイケ好かないオッドウェルの実力だって、バッチリ分かってしまうのだ。


「アルフレッドさん」


アイリスが一歩前に出てくる。


「オッドウェル様から守って下さってありがとうございます。でも、オッドウェル様は魔術に置いて上位の成績を収める方ですよ。どうして焚きつけるような事をお言いになられたんです?」


不安げに眉をひそめるアイリスも、同じくオッドウェルの実力を知っているのだ。

魔法学初学のスバルがかなう相手ではないと、十分に理解している。


「このままだとスバルがオッドウェルと対戦になった時、本当にボロボロにされちゃう。あいつはそういう所は有言実行するタイプよ! どうしよう、スバルに選抜戦出て欲しくない、一番恐れてた事態だよお!」


そもそもスバルとの喧嘩のきっかけだって、ウィンディアナ嬢の取り巻きがスバルを傷つけるんじゃないかと危惧したからだ。

それがまさか宣戦布告された上で実現しようとしている。

私たち2人の困惑しきった眼差しに、それでもアルは後悔の色を見せない。

アルとスバルは仲が良いとは言えない事を知っている。でも、アルが邪心でスバルを窮地に立たせようとするなんて有り得ない。だからこそ私たちは混乱してしまっているのだ。


「2人とも大丈夫だ。落ち着け。言っただろう?スバル殿が何をしているのか心当たりがあると」

「え?ああ、うん。そう言えば……」


ウィンディアナ嬢の登場でうやむやになっていたけれど、最初はその話をしていた事を思い出す。


「スバルが今何をしてるのかと、オッドウェルにスバルに代わって喧嘩を売るのと、一体なんの関係があるわけ?」


アルはその質問を想定していたのだろう。浮かんだのは、どこか満足げな微笑みだった。


「スバル殿も男だ。受けた屈辱は必ず返そうとしているはずだ」

「く、屈辱? スバルが一体どんな屈辱を……」


受けたっていうの。

そう言おうとして、ハッと口をつぐんだ。


「ま、ま、まさか私がスバルに大神殿に来させないように言ったから!? スバルを信じてないような事言っちゃたせい!? それでスバルは侮辱されたと思っちゃった?」


大神殿に近づかせる気がないのは今も全く変わってない。でも何も告げずに、一方的にスバルの考えを否定した事は後悔している。

そもそもその言い方が悪くて大喧嘩になってしまったのだ。


「ああ、いやまて、アンジェリカ。すまん、俺の言い方が悪かった……いや——、」


そこまで言って、アルは考えるように視線を外した。


「いや。アンジェリカ。狙われているスバル殿を危険から遠ざけようとするのは当然の事だ。ただスバル殿は違う側面も見てただけだ」

「その側面を知ろうともしなかったのよ……」

「そこまで落ち込むな。ただ、今はスバル殿を信じろ」

「そこまでおっしゃるからには、アルフレッドさん何かご存知なんですか?」


アイリスが焦れたように答えを求めるも、アルは微笑むばかりだ。


「俺がここで言ってしまうのも野暮になる。大丈夫だ。オッドウェルと対戦する事になっても、決して悪い結果になることはない」


アルはそう言い切るが、結局はただスバルを信じろと言うことなんだろうか。


「私、なんだかレオン様とアルフレッドさんが似た者同士のような気がしてきましたわ……」


マイペースで、尚且つ物事の核心を明かしてくれない所は確かに主人そっくりである。

アルは一瞬複雑そうに顔をしかめたものの、従者が主人を否定する事もままならずと、黙したまま受け入れた。


「さて、俺もそろそろ次の練習試合に戻らないとな。2人は選抜戦は観覧席での見学で良かったか?」

「え、うん。そうよ。私たちはスバルの付き人観覧席になってるわ」

「そうか。レオン様が付き人席にこっちの手の者を何人か用意すると言っていた。気を配るよう言ってはおくが、ウィンディアナ様の席側には近付かないようにな」

『頼まれたって近付かないわ』

『頼まれたって近付きません』

「ふはっ」


思わず声を揃えて拒否する私達に、アルが吹き出すようにして笑う。

その笑顔はすぐに引っ込んでしまったが、それでもアルの瞳には、しっかりとした確信の光が灯っていた。


「2人とも、そう心配するな。大丈夫だ。()()()()()()



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