私たちはサポートキャラなのよ!
バイオレット・キーライン。
本来宝石言葉で不吉な意味はあり得ない。しかし、いつからか憎しみの意味を付与された希少なる宝石。
一瞬の事だった。
スバルの指先が石に微かに触れた瞬間、淡い紫の光が燈り、すぐに消えた。
そして残ったのは、こぼれ落ちた宝石。
「と、取れたって……、石が?!」
私たちの勢いに押されスバルはたじろぎながらも頷く。
恐る恐るかかげられた手の中には、確かに紫に光る石が収められていた。
「そんな馬鹿な。さっきはどんなに弄っても取れなかったぞ」
レオンが慌てた様子で女生徒のうなじを覗き込む。
副作用の有無を考えつつも、私たちが医務室に到着する前にしっかり触っていたらしい。
「指先で触れただけだぞ?」
困ったように言いながら、スバルは手の中の石を弄ぶ。その動きにあわせて、バイオレット・キーラインが輝きを放つ。
(あれ?色が……?)
その輝きに、私は首を傾げた。
「スバル。その石なんだか変じゃない?」
「へん?」
スバルは手の中で石を転がすのをストップさせた。
私の言葉で、にわかに皆の視線がスバルの手元に集中する。
その手の中にある石。それは———。
「ラピスラズリ」
レオンが呆然と呟く。だがその驚きも当然のことだった。
先ほどまでの硬質な紫の輝きはすでに失われていた。宝石よりもより石といった鉱物の質感が強く、鮮やかな色合いを見せている。
「綺麗な瑠璃色」
「なぜバイオレット・キーラインじゃなくなっているんだ?!石が変化しただと?!」
思わずこぼした私の言葉なぞお構いなしに、レオンがスバルから渡された石を噛み付かんばかりに睨みつける。
「どういうことだ?」
宝石が、全く違う種類の石に変化した。その奇妙な出来事に、冷静なアルも流石に驚きを隠しきれずにいる。
スバルは自分が何をやったのかも分からず、ただ困ったようにレオンを見ている。
けれど、私には『わかる』。
ううん。私だけじゃない。きっと同じ事を、アイリスも感じているはず。
私とアイリスはいつの間にか、互いに手を取り合っていた。
深い深呼吸で覚悟を決める。いいわ、やってやろうじゃない!
どこからともなく、あの能天気なメロディーが聞こえ、私たちは思い切り踊り出した。




