初めまして世界!(やけくそ)
目がさめると、私は学園の中庭にいた。
「アンジェリカったらぼんやりしちゃってどうしたの? 今日は転校生が来るんだから、しゃきっとしてよね」
ポンと背中を叩かれて、私は反射的にうなずいた。
うん。てか、どこだここ。
キョロキョロと辺りを見渡すが、全く見覚えのない光景が広がっている。
中庭って言ったっけ?
確かに言われた通り、映画でしか見たことのない中世ヨーロッパのような石造りの建物が円を描いて立ち並んでいた。
ちょっと前に大流行した映画、大好きだった魔法少年が過ごした学校のような雰囲気である。
「えっ。テンション上がる。でも同時に下がる。どこここ」
「もうっ、バカなことばっかり言ってないで、早く校門に向かうわよ。私たちの役目を忘れないで」
始めに声をかけてきた女の子が、パッとスカートをひるがえして私の目の前に立つ。
その瞬間、私は声をあげそうになった。
あーーーー!! 知ってる! 私この子知ってる!!!
黒髪おかっぱの艶やかな髪。その上に乗っているフリルのカチューシャ。黒い瞳のまんまるお目め。そしてフリルが ふんだんにあしらわれた、機能度外視のメイド服。
それは、それは……、
『スカイ・アース〜選ばれし救世主〜』に登場する、どこにでも都合よく現れ主人公に助言を与えるサポートキャラクターの1人、アイリスだった。
「うそぉ……、アイリス……?」
「アンジェリカ? どうしちゃったの? 本当にいつもに増して変よ?」
アンジェリカ?! 今私にむかってアンジェリカって言った?!
私は見えもしないのに自分の顔をわしづかむ。
うつむくと、金色の巻き毛が一緒に落ちてくる。
これは……、まさか……。
続いてハッとして、私は自分の着ている洋服に気が付いた。アイリスとお揃いの機能度外視のフリル姿である。
私は恐る恐るアイリスに尋ねた。
「ア、アイリス……、さっき言ってた私たちの役目って……」
「決まってるじゃない。聖女の力を持って現れた、スバル・シノノメをサポートするのが私たちの役目でしょ!」
「あ、あはは、あはははは……」
思わず乾いた笑いがついて出る。
そうか。そうなのか。
私は、私は大好きなBLゲーム、『スカイ・アース〜選ばれし救世主〜』の中の登場人物、アイリスと対になるサポートキャラクター、アンジェリカに生まれ変わっていたのである。