表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/74

自分の推しが攻略対象に選ばれるよう頑張ります!

 レオンが筆頭になって教室から出て行く。

 無茶苦茶になった教室はそのままだけど、どうしたら良いんだろう。

 高貴な身分故に、レオンは意識もしてないようだ。スバルも自分の運命を知るためにレオンについて行くのだ。教室のことまで頭が回らなくて当然だ。

 と言うか、レオンに抱えられた少女がやった事なんだから、誰にも責任はない。

 けれど庶民が身に染み付いているので、思わずソワソワしてしまう。

 チッと、誰かの舌打ちが聞こえた。


「いい身分だよな。人の日常をグチャグチャにしといて」


 小さな呟きだった。

 思わず振り返る。教室を荒らされ、置き去りにされている生徒たちの顔は暗い。

 その視線は、一目で高貴な出自とわかるレオンではなく、スバルの背中に突き刺さっている。

 スバルが悪い訳じゃないのに。

 悔しくて、言い返してやりたい。

 そう思った時、アルが一歩前に出て、生徒の視線から隠すようにスバルの後ろに立った。そのままレオンとアイリスについて行くよう促してから、振り返った。


「手伝いが必要か?」


 全く棘のない、いっそ親しみのある口調で、アルは生徒たちに声をかけた。

 その完全に予想外の反応に、不満を露わにした生徒も思わずたじろぐ。その尻込みした様子の中で、アルに負けず劣らず軽いトーンで返事をした者がいた。


「いや、大丈夫。壊れた物もないみたいだし、先生を呼んでくるよ。それより早く医務室に連れてってあげる方が重要だよな」


 返事をしたのはビリー・パーカーだった。

 教室に入ったばかりの、どことなく沈んだつまらなさ気な様子ではもうない。活発そうな優し気な姿がそこにはあった。

 気安くヒラヒラと手を振る様子に、アルの口元も緩む。


「悪い。何かあれば、アレクサンド家に連絡をしてくれ。できる限りの保証はする」

「じょーだん。アレクサンド家なんて怖くて誰も関われないよ。いいからもう行きなよ」


 アルの申し出を、そのカラッとした気質で笑いながら断る。

 誰にでも爽やかで親切。やっぱりどんなルートでもビリーはビリーなのだ。

 張り詰めていた空気が、アルとビリーのやりとりで一気に弛緩したものに変わる。もしかしたらアレクサンド家の名前も効いたのかもしれない。

 息を潜めていたような生徒たちもそれぞれに口を開き出し、誰が先生を呼ぶか話し合いだしている。


「……もう大丈夫そうだな。アンジェリカ、医務室へ行こう」

「あ、うん!」


 教室の様子から問題ないと判断したのだろう。ビリーに軽い合図を送ると、今度こそ躊躇なくアルは教室の外へ出る。


「アル……、フレッドさん」

「呼びにくいならアルでも別にかまわないが」


 プレイしてる時から愛称で呼んでたから、ついついアルと呼んでしまいそうになる。

 つっかえがちな私に突っ込むこともせず、アルは気軽に提案してくる。


「ええと、じゃあ、アルさん」


 ありがたく提案に乗らせてもらって、なおかつ控えめに呼ぶとアルは笑った。


「別にアルと呼べばいいじゃないか。俺の主人が偉いんであって、俺自身はただの従者だ。それに俺も君のことを、アンジェリカさんなんて呼ぶ気もないな」


 白い髪に赤い瞳。主人と同じように冷たく冷静に見える整った容貌。レオンと違い、アルは口を開いてもクールなままだと思ってた。

 実際ゲームの中の出番は少ないものの、各エピソードに登場する時は冷静な態度が目立っていた。

 けれど本物のアルは気安く笑うし、心象の悪かったスバルでも気取らせずにかばってみせる。

 必要があれば、アウェイな場所でも親しげに振る舞うこともできる大人なのだ。


(私、アルのこと全然知らない……)


 そう思った。

 それどころか、ゲームよりも今目の前の等身大のアルの方が好きだ。

 笑うアルを見つめながら、キュウンと胸が大きく高鳴る。


(私、やっぱりアルが好き……!)


 だからこそ、私にはすべきことがある。スバルを守ってみせると決めた時と、同じほどの決意。


(絶対に……、絶対にレオン×アルフレッドにしてみせる! あなたの恋心、私が絶対に叶えてみせるからね!!)


 いささか自分にも都合のいい決意ではあるが。






面白いなと思った方、ぜひブックマーク、下の評価をよろしくお願いします。

励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] (初めて感想機能を使います。) 設定がすごく好きで、そう、この脇役位置が読みたかった!!と、とても興奮しています…。サポートしつつ、自分の理想(CP)の為に頑張ろうとするアンジェリカがとても…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ