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そのカップリングに待ったをかけたい


 女生徒の髪をかき分け、首筋を晒す。やっぱりあった。

 うなじよりも上の、髪の生え際部分に隠れるように存在するソレ。

 アメシストのような、深い紫色をした小さな宝石がキラリと輝く。

 この紫の宝石は、スバルの命を狙うエピソードでは必ずと言っていいほど現れる。

 正直なところ、恋愛パートばかりに夢中になってた私は、事件パートのストーリーに弱い。

 結局この石がなんだったのかは、いくつかのENDをむかえても分からずじまいのままだった。


(サトミにも呆れられるくらい、偏ったプレイの仕方をしてた自覚があるんだよなぁ。こんなことになるんなら、事件パートもちゃんとやり込んでおけばよかった……)


 思わず後悔する。けれど悔やむ先が死ぬ前の出来事なのだから、これぞ完全なる後悔先に立たずだ。

 と言うか、むしろこれ以上相応しい使われ方があるんだろうか。


「バイオレット・キーラインか……」


 真剣に馬鹿なことを考えてると、耳元でレオンが呟いた。

 驚いて顔を上げると、レオンは私のすぐ真横で、同じように女生徒の宝石を覗き込んでいた。


「バイオレット・キーライン?」

「知らないか?」


 聞きなれない言葉に思わず復唱すると、アルが私に問いかけてきた。

 サポートキャラとして、この単語は知ってるべきなんだろうか?

 学園内の地図が脳裏に浮かび上がった時と同じ要領で、宝石の単語を心の中で思い浮かべる。


「えっと……、すごい稀少な宝石で、市場にはまず出回らないのよね」


 辞書程度の知識しか浮かびあがってこず、私は首を傾げる。

 それがなんでこんなところに?

 私の疑問を感じ取ったのだろう。アルは説明を付け加えてくれた。


「市場に出回らないのは稀少ゆえと、もう一つ理由がある。それは石言葉だ」

「石言葉? ルビーが『情熱』を意味するみたいな?」


 自分の誕生月の石の意味なら知ってる。例えにだすと、今度はレオンがそうだと頷いた。


「バイオレット・キーラインは、憎しみの意味を持つ石なんだよ。スバル、アンジェリカ、アイリスも。話をする場所を変えようか。まずはこの子を医務室に連れて行こう」


 そう言うと、レオンは軽々と生徒を横抱きに抱え上げた。この主従は人の体重が感じられないようにでも出来ているんだろうか。


「スバル、私たちが何者なのか。そして何故ここに来たのか。キミも知りたいだろう」

「当然。この世界に突然呼ばれてから、訳わかんねーことばっかりだ。それに」


 スバルが私を見る。


「?」

「オレのせいで、怪我する人が出るなんて嫌だ。だから、しっかり説明してもらう」


 その言葉に、私は思わずキューンと胸が高鳴った。


(スバルとしてゲームをプレイしてた時は何も思わなかったけど、実はこんなに正義感の強い子だったんだ! そりゃ総受けにもなるはずよね!)


 湧き上がる萌えを、ギュウと拳を握りしめて耐える。

 しかしこの流れだと、レオン×スバルのルートで進行するのだろうか。

 私はちらりとアルを盗み見た。アルはスバルを眺めながらも、どことなく不服そうな顔つきをしている。

 その顔を見て、私はハッとした。


(そうよ! アルはレオンに秘めた恋をしてるんだから、このままレオン×スバルになったら、アルが失恋することになっちゃう……! ていうか、私それが見たくなくて、レオンルート避けてきたのに……!!)


 なんてことだ。

 愛する推しと、目の前で進むレオン×スバルルートを見守らなくちゃいけないなんて!








※バイオレット・キーラインは捏造の宝石です。



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