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カップリングを考えるのは本能だから……


 アルはあっという間に教室まで駆け上がると、器用に扉を足で開けた。

 教室の中は机や椅子がなぎ倒され、まるで嵐が駆け抜けたような有様だ。(いや実際に嵐みたいな風が吹いたんだけど)

 教室の中心で生徒たちが輪になって騒然としている。


「アンジェリカ!」


 その輪の中から抜け出して、こちらに駆けてきたのはアイリスだった。


「アイリス!」

「ばかっ! 無茶なんかして死んじゃうところだったじゃない!」

「うぅ、心配かけてごめんねアイリスぅ」


 開口一番で叱られたけれど怖くない。

 アイリスはその黒曜石みたいな瞳からボロボロ大粒の涙をこぼしてる。その涙に止まったばかりの涙がまた滲み出してくる。


「アイリス、スバルは? スバルは大丈夫なの?」

「アンジェリカ!」


 一番気になっている事を聞けば、クラスメイトの人だかりの中から名前を呼ばれる。

 人をかき分けて現れたのはスバルだった。

 アルに抱えられたままの私を見て、スバルは一瞬鼻白む。だがすぐに気持ちを切り替えたようだった。


「アンジェリカ、怪我はないか?大丈夫か?」


 スバルがアルの腕から私を引き取るように私の腕を引く。


(ずっと抱えられっぱなしなのも申し訳ないし、移動した方がよいかな?)


 そう思って重心を移動させようとすると、アルの腕の力が強まった。

 自由に体をよじるのも難しくて、思わずきょとんとしてしまう。反対に、スバルはムッと顔をしかめたようだった。


「アンジェリカは腰が抜けて動けないでいる。無理に動かすのはお勧めしない」

「そうかよ。ならオレがアンジェリカを抱える。だってオレのせいで落ちたんだから」


 何故か「オレ」の部分を強調してスバルが申し出るも、アルは鼻で笑ってあしらった。


「そうだな。だが落ちた彼女は俺が受け止めた。スバル殿、ご心配は無用だ」


 何故か不穏な空気が漂い、私は意味もわからずオロオロとしてしまう。

 スバルとアルフレッドに恋愛フラグは立たないけれど、こんなに反目し合う関係でもなかったはずだ。


(え、でもこれはコレで美味しくない? いいケンカップルになるんじゃない?)


 スバルが無事だと分かった途端に、私の腐女子センサーが活き活きと活動を始める。


(この場合、どっちが受けになるのが相応しいかしらっ?! リバ?あんまり好きじゃなかったけど、リバもいいかも?! サトミ、私初めてリバカップリングに目覚めるかも……!)


 今は離れて久しい親友に、私は心の中で熱く語りかけた。


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