#3出会い
「大丈夫ですか!」
「大丈夫じゃない!助けて!」
「分かりました!」
零夜は頭の中で水晶の様な鹿を一撃で仕留めれるような魔法のことを浮かべた。
「創造銃!」
そう叫んだ時零夜の手の中にハンドガンの様なものが現れた。
「これは銃か?」
よく考えればガンと言っている時点で銃なのだが、零夜はその時そこまで考える暇はなかった。
ダンッ!
静寂を切り裂く発砲音と共に銃口から火花が出た。属に言うマズルフラッシュというやつだ。
ドシュッという音を立てて水晶の様な鹿は地面に倒れた。
生き物を殺したという罪悪感が一瞬だけ身を包んだ。
「助かったわ。ありがとう。」
そう笑顔で言いながら女の子は近づいてきた。
青みがかった黒い髪に対照的な透き通った赤い目をした美少女と言っても差し支えない可愛い子だった。
「君名前は?」
「俺は如月零夜。アンタは?」
「アンタって酷いわね!まぁいいけど。私は神無月雫。登録したてだけど冒険者よ。」
「零夜は冒険者なの?」
「いや、俺はギルドに登録しようと街に向かっているところだ。」
「じゃあ、私も街に戻るところだからギルドまで案内してあげるよ!」
「それは助かる。ありがとう。」
「別にいいよ依頼も終わったし。」
『まぁマップがあるから案内入らないんだけどな。』
だがそれは言わぬが花だと思い零夜は誤魔化すように苦笑した。
「なぁ雫。依頼ってどこまで行っていたんだ?」
「向こうにある魔の森までよ。」
そう言って雫は西の方にある森を指さした。
「ねぇ零夜?この水晶鹿どうする?」
「これが討伐対象なのか?」
「いいえ、全然違うわよ。」
「雫はどうしたらいいと思う?」
「私は討伐証明部位以外の毛皮や肉は売ってもいいと思うけど、、、。」
「水晶鹿の肉って美味しいの?」
「えぇ、柔らかくて美味しいのよ。1度だけ食べたことがあってすごく美味しかったわ!」
「それじゃあ解体して、肉は焼いて食べよう。腹が減ってきた。」
「確かにそうね。」
「じゃあ俺は薪を持ってくる。」
「お願い、私は解体してるから。でも魔の森は気をつけるのよ。魔獣が沢山いるから。」
「分かった。気をつける。」
零夜が魔の森に薪を取りに行き、雫は解体を始めてから10分程たった時、水晶鹿の解体が終わった。
「ふぅ。そろそろ零夜も戻ってきそうね。」
そう雫が口にした時、零夜は薪を脇に抱え歩いて来ていた。
「持ってきたぞ。」
「ありがとう。じゃあここにファイヤースターターで火をつけて、、、。」
「あれ?」
雫は左側のポーチの中をごそごそと漁りながら首を傾げた。
「あぁッ!」
「ッどうした!?」
雫がいきなり叫んだので少し驚きながら聞いた。
「宿にファイヤースターター忘れてきた、、、」
「じゃあ火をつけれないってこと?」
「そう、、、」
少し申し訳ない顔をして雫が言った。
「あっそうだ。」
「どうしたの?」
俺の呟きにまた雫は首を傾げた。
「ちょっと待って。」
零夜は頭の中で火を出せる魔法の事を考えた。
「来たれ炎」
「えっ?」
いきなりそう言った零夜に雫はまたまた首を傾げた。
そうすると零夜の手の中に小さな炎が現れた。
「それ、零夜の魔法なの?」
「ああ。」
頷きながら積んである薪にその炎を近づけた。
すると薪に火がついた。
「よし。」
「やった!」
飛び上がるように喜んだ雫と一緒に火を見ながら串に刺した水晶鹿の肉が焼き上がるまで雫との雑談をしていた。
後に零夜は水晶鹿の串焼きの美味さに驚いたことをここに記しておく。