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ムール辺境領

本日二話目の投稿です


「おっ、思ったより早く着いたな」



少女の弔いを終え、男達の遺体から先立つものを失敬してから森を脱出し、棒占いが示した方向に街道を進むこと二時間程度。

満の進路に高い壁に覆われた街らしきものが現れた。


明確な目標が姿を現したことにより満の足取りも軽くなり、残りの距離を十数分で消化すると、開け放たれた巨大な鉄製の城門の脇には揃いの鎧を身に付けた兵士らしき男達が詰めた小屋があった。



「そこの少年。見かけない顔だが、旅人か?」


「はい、最近辺境の村から出てきたばかりで何もわからないのですが、ここはなんという街でしょうか?」


「ここはムール。ムール辺境領の主街だ。辺境の村というと帝国との国境近くの村か?」


「はい、そうです。街に入りたいのですが、何か手続きなどはありますか?」



満の姿を見た兵士の一人が小屋の中から出てきて声をかけてくる。

身元を尋ねる兵士に咄嗟にありそうな身の上話をでっち上げ、街の名前を聞くとアイリスのギルドカードに書き込まれた街と同じ名前が出てきた。

どうやら彼女は依頼か何かでこの街から旅立ったほぼ直後にあの盗賊達に捕らえられてしまったようだ。

ことによるとあの森に関わることで何か依頼を受けていたのかもしれない。



「身分証があればそれを提示してくれれば手続きは要らないが、最近村から出たというのなら無いんじゃないか?」


「そうですね」


「ならこちらで軽い審査の後仮の許可証を発行するので、それを持って役所か何かしらのギルドに行くといい。

ただそうだな、旅人なら依頼も受けられて身分証の代わりにもなるギルドカードの方が便利だろう。私からはギルドの方を推させてもらう」


「なるほど、ありがとうございます。では許可証の発行をお願いできますか?」


「了解した。手数料として大銅貨一枚支払ってもらうが、持ち合わせはあるか?」



盗賊の一人から失敬したベルトポーチから大振りの銅貨を一枚取り出し、衛兵に渡す。


この世界において、通貨は一部の例外を除いてほぼ全ての国で共通のシステムを採用している。

少額の方から銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、白金貨となり、銅貨が日本円にして百円程度からスタートし、一つグレードが上がるごとに価値が十倍になっていく。

仮の入国許可証の発行手数料は大銅貨一枚、つまり千円程度というわけだ。

入国審査の手数料としてはあまりにも安すぎる気がしなくもない。


それから満は詰所に案内され、入国の目的、犯罪歴の有無など簡単なヒアリングを受けて無事に仮許可証を入手、城門から堂々とムールの街に入った。



「さて、いつまでも仮ではいられないし、まずは身分証を調達かな」



衛兵曰く、仮の許可証の有効期限は発行から二日間。正式な身分証を発行しないままそれを過ぎると不法滞在となり身柄を拘束されることもあるのだとか。

許可証を受け取る際も衛兵から街に入ったらその足で身分証を発行しにいくようにと勧められていたのでそれに従うことにして、あらかじめ場所を聞いておいた冒険者ギルドへと足を向ける。



「結構栄えてるんだなぁ」



冒険者ギルドへと向かう道すがら、さりげなく辺りの街並みを見渡しながら街を歩く。


衛兵は辺境領、つまり他国との国境付近の領地と言っていたが、建物は石造り、主要な街道も石畳で舗装されており、かなり整備されている印象を受ける。


城門からまっすぐ伸びる街のメインストリートでは道の両脇に数々の屋台や露店が並び、店主が盛んに威勢の良い声を張り上げ呼び込みを続けている。

まだ他の街を満は知らないが、全体的にかなり栄えている方の街なのではないか、と当たりをつける。


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