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休日

遅くなりました!申し訳ありません!

翌朝、朝一番にギルドに赴くと、既にアリサが過去一番の営業スマイルを湛えてカウンターに座っていた。


妙に圧を感じる笑顔に少々腰が引けつつもその対面に座ると、ギルド登録当初を彷彿とさせるほど事務的に、淡々と依頼の完了手続きを済ませ、トレイに乗せた革袋を二つ、満に差し出す。



「こちらが依頼の報酬と討伐数に応じたボーナスで、こちらが魔石の買取金額となります。

達成報酬が銀貨1枚、討伐数報酬が126体分で大銀貨12枚と銀貨6枚、合算して大銀貨12枚と銀貨7枚となりました」


「はい、確かに。じゃあ今日の依頼を……」


「ミツルさん?」



報酬を懐に仕舞い込む振りをして手元に開いた空間に入れると、その流れでクエストボードから一枚失敬してきた依頼書をカウンターに置く。

しかしアリサの手は膝に置かれたまま動かず、笑顔で表情筋が固定された頭を小さく傾げていた。


ーーーこれ本気だ………ーーー


昨日、「明日は一切受注手続きを受け付けない」と宣言していたことはもちろん満も憶えているが、どさくさに紛れて流れで押し切れるかと挑戦して、あえなく失敗。

アリサの本気具合を再確認し、ゆっくりと依頼書を引っ込める。


そして往生際の悪いことに、他のカウンターに回って別の職員に手続きをして貰おうと依頼書を出すも、アリサのカウンターから森の魔物もかくやと言わんばかりの強烈なプレッシャーが向けられ、手続きをお願いした職員ーー壮年の男性職員ーーは脂汗を垂らしながら背筋を伸ばし、虚空を見つめるだけで満を視界にすら入れないように佇んでいた。



「………失礼します」



こうも徹底されてしまえば勝手に依頼を敢行するわけにもいかない満になす術はなく、裏で相当の圧力を掛けられていたであろう各スタッフに心の中で労いの言葉を掛けながら、依頼書をクエストボードに戻してギルドを後にする。


ギルドの扉を潜るとき、背後からやたらと嬉しそうなアリサの「ありがとうございました〜」という声が耳に届いた。



「さて、どうしようか……」



アンジュの屋台とその近隣の屋台で朝食を調達し、アンジュと話しながら食事を済ませてから一旦家に戻り、空間魔法で虚空に開いた空間から大きな革袋と本日の報酬が詰められた革袋を取り出す。


中にはこれまでの一ヶ月とほぼ一週間の生活の間で貯蓄した硬貨がぎっしりと詰め込まれている。

その金額、占めて金貨2枚、大銀貨22枚と銀貨37枚。それと端数の大銅貨銅貨が十数枚ずつ。

日本円にして457万円プラス端数で一万円少々といったところだろうか。


最初に盗賊から奪った金が三分の一ほど、後は依頼や薬の販売でコツコツと稼いできたものになる。


コツコツとは言っても、普通のEランクからDランクの冒険者では数年がかりでどうにかして溜め込むことが出来るかといったほどの金額なので、当然満の方が異常なのである。



「武器とかはとりあえず今のところ要らないし、環境も結構整ってきたしなぁ……そろそろ頃合いかな?」



満は普段の冒険者稼業でも武器を使用しない。

せいぜいが剥ぎ取り用のナイフくらいなもので、持ち家もあるため普通の冒険者のように武器のメンテナンス費用や宿賃などの出費が無い。

加えて酒なども飲まず、食事といえば毎食屋台などで安く済ませるので僅か一ヶ月ばかりでかなりの資産を溜め込むことに成功した。


資金は充分、家の環境も共用スペースのほかに部屋を三つ、ベッドも念の為満が使用しているもののほかに二つ拵えてある。

転生から一月余り経ってしまったが、ようやくクライアントを呼び寄せるだけの用意が整ったのである。


それに今日は冒険者稼業も強制的に休みになってしまった。やろうと思えばいつでも出来るものとはいえ、これ以上ないくらいに丁度いいタイミングというものだろう。


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