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報告と叱責

遅刻しました!あとストックも切れました!

アリサの心配はもっともだが、今の満にはその状況の方がありがたかった。


さしたる準備も無く受注手続きを終えたその足で街を出て身体に魔力で強化を施すと平原を疾駆する。

普通であれば片道二時間の道を三十分程度で走破するとそのまま森に入り、探索を始める。



「……なるほど、これは確かに」



森に入って暫く歩き、明らかに普段薬草を取りに来る時よりも剣呑な雰囲気を感じ独りごちる。

普段であれば、満が森に入るのを察知するや彼にすっかり懐いた小動物や鳥類が寄ってきて暫く戯れるてから仕事に戻るところだが、十五分ほど歩き回っても一向にそういった動物達と遭遇しない。

増えたウルフ達に怯えて森の奥に引きこもっているのだろう。


その代わりに満の周囲の木立や茂みに隠れるようにして複数体のウルフが彼を取り囲んでいる。


満の実力を測りあぐねているのか、今のところ様子を窺うのみで特に襲ってくるような様子はないが、討伐したい満にとって膠着状態は上手くない。



「ゴァァッ!」



焦れた満が茂みに隠れた一匹のウルフに殺気をぶつけると、それに当てられたウルフが茂みから飛び出し満に飛びかかってくる。


直立すると小柄な大人の背丈ほどもありそうな体躯の狼に、満は怯えるでもなく右手の人差し指を向けーーー



「申し訳ないけど、虫の居所が悪いんだ。暴れるのに付き合ってよ」



無数の風の刃にて惨殺したウルフの頭を踏み付けながら、周囲の狼達を挑発する。

それと同時に仲間の遺骸を辱められたことに激昂したウルフ達が一斉に遠吠えを上げ、森中からそれに対する応えの声が上がった。



聞いた限り数十体、もしかすると百に近い数が居るかもわからないほどに重なった遠吠えに、満の口角が吊り上がる。

身体を鎧う魔力の出力を一気に跳ね上げ、襲いかかってきた一頭のウルフに回し蹴りを見舞うと、満の蹴りを受けたウルフの胴がすっぱりと二つに分かれ、臓物を撒き散らして転がる。

それを合図として、あまりにも一方的な蹂躙が始まった。




「ふぅ、少しスッとした」



それから数十分、ノンストップで次々に襲いかかってくる狼達と戦い続け、動くものが居なくなった狼の山の上で頬に付いた返り血を袖で拭う。


戦っている途中で怖気付いて逃げた個体も数匹居たようだが、最終的に満が仕留めたフォレストウルフは八十六体。

街に程近い森に自然発生するには些か多めだが、屍の中には他と比べてやけに体躯が大い、群れの主と思しき遺骸もあったので、ひとまず狼達による獣害の心配は無くなったと見ていいだろう。


ひとまず身体や装備に付いた狼達の返り血を水魔法で簡単に落としてから、討伐証明部位の牙と魔石の剥ぎ取りにかかる。

最終的に三時間ほどかかった剥ぎ取り作業に、「もう少し抑えておけばよかった」と後悔することになったのだった。





「…………」


「…………ごめんなさい」



カウンターに載せられた、数えるのも億劫な牙と魔石にアリサの顔が引き攣り、続いて頭痛を覚えたように頭を押さえる。


沈黙に耐えかねて思わず謝ると、アリサは一つ深いため息を吐いてから牙と魔石を鑑定の担当者に回した。



「なんだか朝から様子がおかしいと思ったら……」


「すいません、身体を動かして頭をすっきりさせたくて」


「だからってウルフを根こそぎすっきりさせなくてもいいんですよ。ほかのDランクの皆さんはそれぞれの依頼で受注がなかったのでまだ良かったですが、もし他にも依頼を受けた冒険者の方がいたら報酬でトラブルになっていたところですよ」


「……すみません」


「まあ、迅速に対処して頂いたことで無用な被害などが出なかったのは間違いなく喜ばしいことですのでこれ以上は何も言いません。

むしろ怪我なく帰ってきていただいて本当によかったです」



咎めるのはさっさと切り上げ、表情をふわりと和らげると、アリサは無事に帰還した満を労る。



「量が量なので、少々確認にお時間をいただくことになります。明日の朝には報酬と魔石の代金をお支払いできると思いますので、明朝またいらしてください。

それと、先に言っておきますが明日はミツルさんの依頼の受注は受け付けません。報酬を受け取ったら一日ゆっくりと休んでください。いいですね」


「は、はい……」



言葉の後半に有無を言わせぬ圧を乗せるアリサに、満は壊れたからくり人形のようにこくこくと頷くことしか出来なかった。

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