表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/41

依頼後の後始末

ゴブリンを難無く片付け、耳を剥ぎ取り用済みとなった彼らの遺骸を風魔法でバラバラに解体した後彼らの体内から摘めるほどの大きさのガラス片のような石を取り出す。


魔物も人間と同じく確実に仕留めたとしても、なんらかの要因で大気中の魔力が遺骸に蓄積されたりしてグールやゾンビといった別の魔物に変容する場合がある。


そうならない為に、あるいはそうなった時に危険性が少なくなるように、満はゴブリン達の身体を復元不可能なレベルまで損壊させ、魔物の魔力の蓄積器官である魔石を回収したのだ。



「小さいけど、まあ二束三文にはなるか」



そして魔石を回収したもっとも大きな要因として、魔石はギルドなどで買い取ってもらえる。

ゴブリン程度の魔物からは大した大きさのものは採取できないが、それでもそれなりに使いようというものがある。

僅かでも金になるのなら、貯金をしたい満にとって多少手間でも回収しない手はなかった。




「ただいま戻りました。ゴブリンはこの通り処理してきたので、とりあえず脅威は去ったと思います」


「は、はぁ……」



日が落ち夜の帳が下りる直前、ゴブリンの耳が詰められた袋と何故か大量の薬草類を携えて満は村に戻った。


あまりにも淡々と、当たり前のように報告する満に村長は困惑しつつも頭を下げてゴブリンの耳を改め、依頼書にサインをする。

ギルドに戻った後耳とこの依頼書を窓口に提出すれば討伐依頼は完遂となる。



「薬草の採取がてらこの近辺を調べましたが、他にゴブリンなどの魔物はいなかったようですし、潜めるような場所もありませんでした。当分は安心していただいていいと思います」


「なんと、調査まで。ありがとうございます。報酬を上乗せさせていただきます」


「ああ、いえ、報酬は結構です。ただ今日はもう暗くなってしまったので、一日この村で休ませて頂ければと思うのと、怪我された方の診察をさせて頂ければ」


「もちろん。部屋は既に用意させて頂いております。診察の方も願ってもありませんが、よろしいのですか?」


「ええ、薬の効きも確かめてみたいですし」



村長から許可を取った後、大量の薬草を抱えて村唯一の被害者である村はずれに住むという親子の家を尋ねる。


木製のドアをノックすると、中から満より僅かばかり歳上であろう女性がドアを開け、満の姿を見ると驚いたように瞠目した。



「こんばんは。お父様の具合はいかがでしょうか?」


「は、はい! 薬のおかげか、今は熱は下がってます!」


「それは良かった。少々診察と治療をさせていただきたいのですが、上がらせていただいてもよろしいでしょうか?」


「も、もちろんですありがとうございます! 汚い家ですがどうぞ!」



恐縮しきりの女性に通され家に上がると、奥の二つ並んだベッドの一つに壮年の男性が横たわり、深い呼吸を繰り返していた。どうやら眠っているらしい。



「薬は確かに効いてるみたいですね。傷の方は……念の為化膿止めを塗って包帯を巻き替えておきますか。きれいな桶のようなものはありますか?」


「はい! これを使ってもらえれば!」



女性が差し出す木桶を受け取り、火と水の魔法を併用して生み出した湯を貼る。

手を清めて消毒し、持ち込んだ薬草を数種類合わせてすり潰すと、男性の腕と左脇腹に巻かれた血が滲んできている包帯を解き、傷口を消毒液してから薬草をすり潰したものを傷口に素早く塗布する。


それから清潔な布を傷口に当て、その上から包帯を巻き、端を止める。



「冒険者様なのにお医者様みたい……」


「大した治療でもないですよ。薬の材料も近くで取れるものばかりですし、製法も魔力さえあればそれほど難しくはありません」



男性に飲ませた解熱剤と免疫強化の薬は薬草採取依頼の際に買い取りに回さず集めておいた月光草などが原料になっているし、今しがた塗った化膿止めなども村の近郊に自生していた薬草を使ったものだ。

満は女神から与えられた知識含まれていたためそれに沿って薬を精製したが、本来ならこれらの薬の製法は一般的な薬師達にも広く知られているものに過ぎない。



「魔力がいるということは一般人には作れないってことですね……」


「まあそうとも言いますか。でも買うにしてもそれほど高くはないので、別に治療費とかを請求するつもりもありません。そこは安心してくださいね」


「えっ……いいんですか!?」


「明日の朝、もう一度湿布を張り替えに来ます。それまでに何かありましたら村長の家に滞在していますので呼びに来てください」



言い残し、親子の家を出る。

その後村長の家に戻り、豪勢な料理を恐縮しつつ食べると客人用の部屋に通され、そこで一日を終えたのだった。



面白い、続きが気になると思って頂けたらブックマーク登録をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ