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討伐依頼

申し訳ありません!遅刻しました!今週は19時30分から20時の間頃に更新します!


「じゃあ行きますか」



ギルドを出ると、満はすぐに街の商業区に足を向けて依頼に必要であろうものを買い揃え、小さな革袋に纏めると旅装を整えて早速出発する。


荷物の中身は非常食に干し肉を数切れと水の入った水筒。依頼書とギルドカードといざという時の備えという最低限のもの。

装備は一旦宿に戻って戦闘にも耐え得るであろう厚布のチュニックとレザーのパンツに着替え、鋲付きのブーツを履いている。

武器はいつものナイフが一本と討伐依頼に赴く冒険者としてはあり得ないほどに軽装だが、そもそも満の戦闘スタイルは武器を主体としない。



「よし」



街の門から幾分離れたところまで移動して、気合を一つ。

次の瞬間、満の身体から溢れ出した魔力が薄い膜状となって彼の身体を覆う。

そしてそのまま満が駆け出すと彼の身体は弾かれたように加速し、常人離れした速度で街道を走り始めた。


体内に魔力を持つ者であれば真っ先に覚えることになる魔法ーーというより技能である魔力による身体強化だ。

体内の魔力を放出し自身の身体に纏うことによって筋力、防御力、瞬発力などの能力を飛躍的に上昇させることができ、魔力の扱いに長けた者が行えば視力や聴力など身体機能の一部すら強化し擬似的な千里眼すら再現出来るという、初歩にして奥義とも呼べる技能。


これまで試す機会が無かった為満自身使用は初めてだが、その魔力操作に一切の淀みはない。


ーー女神はただ知識を与えたのではなく、この世界で英雄と呼ばれるに相応しい場所に至った者達の知識と技能をそのまま満に詰め込んだのではないだろうかーー


自分の中にあるはずのない知識と技能があたかも初めから知っていたかのように表出してくる中で、満が考え始めたことである。





「こんにちは、ムール支部から依頼を受けて参りました。村長さんはどちらでしょうか?」


「は? え? 依頼って今日出したばっかりじゃ……」



そんなことを考えながら休みなしで走り続けていると、出発から僅か三時間ほどで目的地の村に到着してしまった。

村に入って最初に見かけた村人を捕まえ、ギルドの判が捺された依頼書とギルドカードを提示して尋ねると、村人は困惑しながらも村内で一際大きい家へと満を案内してくれる。



「なんと、これほど早く来ていただけるとは……! 早くても明日だと思っていたものですから、歓待の用意などろくに出来ておらず申し訳ありません」


「いえ、仕事で来ただけですのでお構いなく。

早速お尋ねしたいのですが、ゴブリンが出たということですが、被害の程は?」



家に通され、挨拶がてら面会すると初めこそ自身が帰宅してからものの数時間で到着した満に驚愕していた村長だったが、満が被害を尋ねると表情を引き締め情報の共有を始める。



「ゴブリンが現れたのは今日のまだ日が上らぬ内です。ムウの家……もとい村外れの家を襲い、家畜の豚を一頭と若い娘を奪い去ろうとしたのです。

娘の方は父親が怪我を負いながらもゴブリンを撃退できたのですが、豚は連れ去られてしまいました」


「なるほど。人的被害が少なかったのは不幸中の幸いでしょうか。襲われた方の容体は?」


「腕の肉を僅かに食いちぎられたのと、ゴブリンの短刀を脇腹に受けてから熱を出して寝込んでおります。残されたゴブリンの短刀に毒が塗ってありました」


「……わかりました。ではその方にこの薬を一日一包ずつ飲ませてください。解熱剤と抗生剤……ゴブリンの毒に効く薬です」


「なんと……」



討伐対象がゴブリンと聞いてこんなこともあろうかと持ってきておいた、小遣い稼ぎの為に薬草から調合してストックしている薬を二種類、三日分ほど村長に預けて村長宅を出る。


空を見上げておおよその時刻を確認。急ぎに急いだのが功を奏したのか、まだ日は高い。



「このまま討伐に向かいます。巣があるであろうおおよその方向はわかりますか?」


「え、ええ……豚の血は村の北にある洞窟の方へと続いておりました」


「わかりました」



見送りに来た村長が指差す方向に進むと、村から三十分ほど歩いたところに、地下へと続いている洞窟がぽっかりと口を開けていた。


洞窟の前で豚を締めたのか、地面には乾き始めた血溜まりと臓物が撒き散らされていた。



「内臓は食べないんだ……」



ゴブリンというと悪食なイメージがあったが、内臓を棄てて肉だけを食べるとなると存外グルメなのかもしれない。



「さて、どう攻めようか」



もっとも簡単なのが、炎を洞窟に放って一気に焼き殺してしまうことだが、もし中に攫われた人がいたら諸共殺してしまう。

洞窟を崩落させて生き埋めにするのも同様の理由で却下。


ーー少し丁寧にいこうーー


足音を殺して洞窟に忍び寄り、入り口付近に罠の類がないことを確認。

一歩洞窟の中に足を踏み入れると、自身の身体に纏っているものとは別に魔力を薄く広範囲に展開し、周囲数十メートルにまで広げる。


魔力を対象が感知出来ない程度まで薄く広範囲に広げ、魔力の波紋の揺らぎで対象の位置や空間の構造を把握する技能、魔力探知だ。



ーー反応の数は五、魔力に対する反応は無し。シャーマンなんかの上位個体はいない。洞窟の構造はL字型で、突き当たりに纏まってる、と………ーー



探知の結果、数も少なく上位個体もいない。そして伏兵の類も置いていない。

おそらくまだ出来たばかりの群れなのだろう。罠の類もどうやら無さそうだが、何かあっても対処できるよう、強化に回す魔力を増やす。


全ての準備を済ませた満は、足音を立てるのも厭わず一気に洞窟の中を駆け抜ける。



「ゲギャ!?」


「ギャギャ! ギャ!」



一息に奥までを駆け抜け、ゴブリン達のいる部屋に着くと出口に続く道に立ち塞がる。


どうやら腹を満たしてから眠り込んでいたらしい、突然の闖入者に飛び起きたゴブリン達は浮き足立ったように耳障りな叫び声を上げるが、満はそんなこともお構いなしに風の魔法を発動、野盗にやったように風の刃で二体のゴブリンの首を落とす。


すると他の個体よりも持ち直しが早かったゴブリンが一体、短刀を満に向かって突き出してきたのでそちらに目を向ける。

次の瞬間ゴブリンの四肢が凍り付き、地面から生えた巨大な氷柱が心臓を貫いた。



「人とかは居なかったか……まあよかったのかな」



残る二体の脳天を雷の矢で撃ち抜き絶命させ、全てのゴブリンを屠ると満はぽつりと安堵したように呟き、討伐証明部位であるゴブリンの耳を剥ぎ取りにかかった。


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