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日報8『メカ』


 カット袋が分厚い。海外動画スキャンなので、中身は原画とラフ原だけのはずだがこの厚さ、もう嫌な予感しかしない。


「ああ、でもビームも結構枚数あるな。でもメカ本体が重いな~。」


 サーバーからトレスデータを自分のパソコンに落とし、セルの枚数を確認する。カット袋に書いてある枚数が違う場合があるからだ。


「ABEFセルがビームで透過光、Cセルがメカ、Dセル破片。メカはロングの全身から目元のアップまで・・・。こりゃメカだけでギリギリだな。」


 最悪手伝いに入ってもらうとはしても、出来るだけ枚数は稼ぎたい。


「申し訳ないけどCセル以外を先にやっちゃおう。ビームと破片ならすぐに終わる。」


 必要なフレームを確保しながら、足りない線を描き足していく。透過光マスクはRGB値がオールゼロのベタ塗りなので線さえ途切れていなければバケツツールワンクリックで塗り終わる。のだが、そこはさすがの海外トレス。ほぼ直線のビームなのに線がブチブチ途切れている。バケツ塗りで全面が真っ黒になる度にコントロールZを押して一段階戻し、補正しつつペイント、を繰り返す。


「メカよりはサクサク進むけど、プチストレスだなぁ。」


 地道な補正とペイントを続け、ビームのペイント作業は終わった。次は破片だ。


「特に指示は無いけど、肩に被弾してるから肩パーツの色だよな?」


 この作品のカラーモデルには、それぞれの色のボックスにアルファベットが振り分けられている。丁寧な色指定さんだと飛んだ破片にもAだとかBだとか指示を入れてくれる。今回の色指定さんは見て分かるだろう物にまでは指示を入れない質のようだ。


「たとえ間違っててもバッチひとつで色修正できるからいいんだろうけど。」


 絵具時代には致命的なミスも、デジタルではワンクリックで修正が可能なのだから、便利な世の中になったものだ。

 カットの状況から肩パーツの色だと決めて破片をペイントしていく。ほどなくしてDセルの作業が終わると、残すはメカ本体だ。


「さて、まずは原画のあるセルからっと。」


 人によって作業の仕方は異なるが、自分はメカの場合、一から順にペイントしていくのではなく、原画でハッキリと影付けや色分けがされているセルから作業していって、後から中割り部分を埋めていく。その過程で影付けが反転していたりと辻褄が合わない部分が出てくる事も多々あるのだが、今回もやはりそうなった。


「後ろのセルの方がアップになってるからこっちに合わせるか。」


 そうして最初から最後まで辻褄が合うように調整しながら中割り部分のセルをペイントしていく。思っていたより原画のあるセルに時間がかかった為、まだまだ枚数が残っている。終電の時間までにギリギリ終わりそうにない。あまり迷惑はかけたくないが、手伝いに入ってもらうしかない。


「すみませーん。手の空いた方いましたら、お手伝いお願いできますか?」

「はーい、こっちもうすぐ手が空きます。ちょっと待ってて。」

「はいよ、何枚持ってけばいい?」

「ありがとうございます。助かります。」


 数人から助け船が出された。これでなんとかなりそうだ。あとはひたすらペイントしてペイントしてペイントして・・・。大体、最近のメカのカラーモデルはパーツの見えない部分が多すぎる。以前は手足を外した状態だとか、背中の飛行パーツを取り外した状態とか、手や足裏のアップとか、細かい部分の設定もカラーモデルになっていたように思う。今はほぼ立ち絵の正面と背面のみだ。これでは接合部分などが正しく把握できない。想像してペイントするしかないのだが、たとえ間違っていたとしても、リテイクが戻ってくる事は今はほぼ無い。スケジュールがかつかつで作業者に戻す時間が取れないからだ。検査さんが検査時に更に調整をしてくれる事を願うしかない。


 そしてギリギリ終電に間に合う時間に上がりを出す事ができた。手伝ってもらった分、自分の取り分は減ってしまうが、これは致し方ない。


「お疲れ様でした。お先に失礼します。」


 メカは塗り上がった時の達成感がすごい。セルを順に送っていくと、その動きの格好良さにため息が出る事もある。メカ描きさんの腕を鈍らせない為にも、手描きメカ作品が無くなる事は無いのだろう。それに伴い仕上げの苦労はこの先も尽きないだろう。


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