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日報7『海外動画スキャン』


「あーあ、今日も安定の汚さ・・・。」


 海外で動画をし、スキャンされたデータを国内でペイント作業する。スキャナーを綺麗にしていないからか、スキャンゴミが多い。更に実線に赤青緑の1ドットゴミが満遍なくまとわりついている。


「自分たちでペイント作業する事もあるだろうに、なんでこんなに汚い線で出してくるかなぁ?」


 海外動仕、海外で動画仕上げ作業までする事、の上がりは正直荒い。もちろん綺麗に仕上げてくる場合もあるが。こんな線画をろくに補正もしないでペイントしているのなら、綺麗な上がり出しを期待するのは無理な話だ。


「2値化が下手なんだよなぁ。わー、作画も溶けてる溶けてる。」


 もはや乾いた笑いしか出てこない。作画が溶けているとは、原画と原画の間の中割りでパーツが徐々に消えていったり融合したりしている動画の事で、仕上げ部門泣かせの物だ。どの色でペイントしても正解が無いので困る。パーツを描き足したり、逆に消したりと、本来ならば動検の仕事を、仕上げの人間は常にやっている。カット内で色や形が通っていないと、リテイクになる可能性があるからだ。


「さて、どうしてくれようかな?」

「相変わらずブツブツ言ってるわね、南花(なばな)。」

「あ、おはようございます、北町(きたまち)さん。いや、海外トレスが汚なすぎて。」

「今に始まった事じゃないでしょ。さっさと手を動かす。」

「はーい。」


 北町さんの言う通りだ。さっさと手を動かさないと何も始まらない。線の汚さに辟易しながら作業を始める。海外と同じレベルの上がりでは、わざわざ国内にペイントを手配した意味が無い。仕上げを国内に撒いてもらって良かったと検査さんが思うような仕上がりにしなくては。一心不乱にペイント作業をしていると、あっという間に昼休みの時間になった。


「そういえば、南花の好きなあの漫画のアニメ、あの会社がやるってね。」

「そうなんですよ!今までもうちでグロス話数の仕事取ってたりしたから、ワンチャンあの作品の仕事も入ってこないかなと思ってるんですけど!どうですかね?」

「どの仕事取ってくるかは上が決める事だから、私には分かんない。」

「それはそうですけど、夢見させて下さいよー。」

「いい事教えてあげる。」

「なんスか?」

「この会社には個人的に好きな作品には、仕事が入ってきても関われないってジンクスがね。」

「え?嘘でしょ?」

「あるとかないとか。ま、ジンクスだから気にしないで。」

「気にすんなって言うならわざわざそんなジンクス言わないで下さいよー。意地の悪い。」


 そんな話をしながら昼休みを過ごし、作業の続きに入る。


「さて、このパーツは残すべきか消すべきか・・・。」


 一番豪快にパーツが溶けているセルを流し見ながら思案にくれる。消す方が簡単だが、原画さんが苦労して描いた線を消す事に躊躇いもある。が、考えているだけでは作業は進まない。


「よし。」


 自分の力量で出来る一番見映えのいい仕上げ上がりは、やはり削って消す方向だろう。描いてくれた原画さんには申し訳ないが、そう決心して手を動かし始める。


 なんとかカット内で繋がって見える様に仕上げて上がりを棚に出しに行く。次のカットもまた海外動画スキャンだろうか。少しはましなカットを引きたい。


 席に付いてカット袋から原画を取り出し、ため息をつく。今度はメカだ。


「今日は引きが悪いなぁ。どれどれ、動画は、と。」


 トレスデータを落とし、色指定を確認する。セルを開いてみるとなかなかに重い内容だ。


「重いけど動画は思ったよりちゃんと描けてるな。取り敢えず溶けてはいないからさっきよりはましかな?」


 少しでも良い部分を見つけていかないと、たまに心が折れる事がある。


 さあ、このカットもしっかり塗ってやる!



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