日報30『デジタル動画4』
デジタル動画には向いている作品と向いていない作品があると思う。均一で綺麗な線画を必要とする作品には向いているが、この作品にはどうだろう。この作品は敢えて実線の補正はしないと仕上げ注意事項にも書いてある、鉛筆の線の太さや掠れを生かす方向性だ。それをデジタル動画で描いてしまっては均一な線になってしまって、線画に味が出ない。
「作監修で線太らせてるけど、結局は綺麗な線だよなぁ。作品的にいいのかね?これは。」
作品が始まった頃は手描き動画でスキャンを経るという通常の工程だった。今はこうやってデジタル動画も混在している。スケジュールが無くなってきたのだろうか?
「補正無しは正直有り難いよな。サクサク塗れるし。」
とは言え、明らかにパーツに食い込んでいるような突き抜けた線は削らなければならないし、影色トレスやハイライトトレスは補正の必要があるのだが、今回はデジタル動画なので、そういった心配もほぼ無い。枚数を稼ぐにはもってこいのタイトルだ。
特に苦労も無く、一カット塗り終わり、次のカットを取りに行く。するとまた同じタイトルのダミーカット袋が乗っていた。
「またデジ動かな?」
サーバーからトレスデータを落としてきて、中身を確認する。するとやはりデジタル動画のカットだった。キャラが画面奥から手前に回転しながら歩いてくる。肩には色トレスのケープを掛けているので、少々面倒くさい。ケープの輪郭線に実線が食い込んでいる所もあるので、先程のカットよりは手間がかかる。
「ケープの色トレス線さえ気を付けておけば、特に問題無いか?」
一通りセルを流して内容を確認してからペイント作業に入る。それにしてもやはり線が綺麗すぎて、これでいいのかと不安になる。
「塗りやすいのはいいんだけどなぁ・・・。」
スイスイと塗り進めていくと、急にズボンの後ろポケットの作画が消えた。普段、どこかに不備のある素材ばかり塗っているせいで、ミスがある方が何故か落ち着いてしまう。
「ここの中割りだけ作画抜けてるな。メモメモ、A48〜51にズボンのポケットの作画がありませんっと。」
先にテキストメモに作画不備の内容を打ち込んでおく。全ての作業を終えてからだとついメモを残すのを忘れてしまう事があるからだ。自分の記憶力はあてにならない。それからペイント作業を再開させる。あとは滞りなく作業が進んだ。
塗り終わったセルをモーションチェックで流して確認する。メモに残した部分以外は問題無いようだ。
「よし、終わり!」
仕上がったカット袋を上がり棚に持って行く。するとまだ同じタイトルのカット袋が乗っていた。今度はスキャンからのカットだ。スキャンをかけ、二値化をすると、いい具合に線が掠れて出ている。
「そう!このカンジだよな!この作品は。」
やっと落ち着いてペイント作業ができる。突き抜けた線や繋がっていない線があるが、少しの補正が必要な方がこのタイトルとしては正しい素材のような気がする。
「今日はこれで最後だな。早く帰れる。」
モニターを見ると、躍動感のある線画が動いていた。




