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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

少女ヒロインで殲滅したい!3

作者: 冬野おやつ

お久しぶりです。

ブタ夫くんの本名は郷田傑ごうだ すぐる

というらしいです。

いつもの通学路、雲ひとつない晴れ空、俺こと黒月カイトは変わりばえしない通学路を歩いていた。

「黒月、話があるから後で私の教室来なさいよ!今週のきらプリ10話について!」

「んだよ、朝から。今週の展開ならイエロー回からのピンク回への前置きで間違いないって昨晩結論出ただろ!」

「はぁ〜?アンタ、次回予告何回見てそれ言ってるわけ?イエローちゃんはファン人気ダントツなんだから、2週連続に決まってるでしょうよ!」


朝から黒髪長髪の美少女生徒会長、白金ユウナと校門前で、少女アニメについて争っている高校生男子がどこに居るだろうか。黒月カイトの通っている高校の生徒はもうこの光景に見慣れており、生暖かい目で痴話喧嘩を見守っていた。



「おはようでござる!黒月殿、白金殿、朝からお熱いですなー。」

こいつは無二の友人、ブタ男くんだ。

本名は郷田…何とかと言うらしい。

ミラプリ歴は俺より浅いが、真剣に語り合えるマイベストフレンドだ。


この時、彼は気付いていなかった。

足元で謎の円模様が輝き出したことを。


それにいち早く気づいたのは、俺と言い争っていた白金だった。



「郷田くん、危ない!」

彼女は超人的な反射神経でブタ男を円の外に体当たりで弾き出す。

が、彼女の筋肉の収縮を俺のミラプリで鍛えた目が見逃さない。

白金の動きを先読みしてブタ夫の方へ駆けると、地面が光っていることから、爆発系の攻撃と判断(ミラプリ前シーズン42話参照)。

ブタ夫君の代わりに射程に入った白金を、爆発の衝撃から庇おうとする。

「危ない、白金!」

「バカっ何で貴方まで…」



結果、円の中には俺と白金だけが残り、光が収まると2人の姿は消えていた。






………ここは何処なんだ?


目が覚めると、俺と白金は中世のような街にいた。見慣れた校門、電柱、アスファルト地面までもが見当たらない。ブタ男は助かったのだろうか?


白金と一瞬顔を見合わせる。が、喧嘩の最中だった事を思い出し、すぐに視線を逸らした。


俺が現状を受け止めきれず考察していると、白金は外人に道を尋ねている。

「Excuse me? How do I get to the …「あー、えーと、君たち迷子かな?

困りごとは冒険者ギルドに行くといいよ?

ほら、案内するから。」


得意の英語で質問したら日本語で返されて、白金は少し顔を赤くしていた。



「何で黒金まで付いてくるのよっ。」

「別にいいじゃん、お兄さん、僕も一緒で良いですよね?」

道案内をしてくれているお兄さんは親指をぐっと立てて微笑んだ。


しっかし、まるで日本じゃないみたいな風景だな。石造りの建物、レンガの道、屋台や露店。澄み渡る青空を除いて、全てが外国のようだった。外国行った事ないけど。


「ほら、ここが冒険者ギルドだよ。」

案内されたのは人気のない通りの行き止まり。

「あの、すみません。建物の入口が見当たらないのですが。」

「白金、俺たち騙されてるよ。武器を持った男が5人、もう取り囲まれてる。」

道案内のお兄さんが、さっきまでと別人の様に邪悪な笑みを浮かべた。

「ようやく気づいたかよ、間抜けなガキども!女の方は上玉だから、裸にして貴族に売ってやんよ。男は奴隷にするから、傷ついても構わねえ。お前ら、やっちまいな!」


テンプレっぽい台詞を吐いたので、俺も応えなきゃな!

「釈迦如来に代わって、お仕置きよ!」

この人達が外国人だろうと、キラプリの決め台詞を知らない人はいないよな!


「黒月、あの男たちわかってないわよ。」

武装した男たちは俺の台詞を無視して戦闘モードに入っていた。

「変身中と必殺技中は手を出さないルールだろ!」

俺はキレながら暴漢の振るった剣を普通に躱す。当たったら傷どころじゃない気がするけど、まあいいか、どうせ当たらんし。


キラプリが怪人戦の前の雑魚を屠るように、軽く3人突き飛ばして壁に叩きつける。

白金を見ると、両手で2人の男の頭をアイアンクローで締めていた。相変わらずの怪力である。

残されたのは道案内の男1人。逃げ出そうとしたが襟を後ろから引っ張って地面に顔面から叩きつける。



男は取り押さえられながらも、もがいていた。

「お前ら、俺を騙しやがったな?ガキのフリして、C級冒険者なんだろ!」

この男の言ってることは分からないが、多分悪人だし、理解する必要もないだろう。

「俺たちは道を知りたいんだよ。大人しく案内してくれ。」


2,3発殴って道案内させた後、衛兵のような人を見つけたので男達を引き渡した。どうやら道案内の男は指名手配されていたようで、お礼として小切手をもらった。

ちなみに、6人中5人は白金が敵の持っていた鎖鎌で縛って引きずって運んだ。






「こんにちは、冒険者ギルドへようこそ!」

「すみません、ギルドって何ですか?そしてここは何処ですか?」

「え?」

受付のお姉さんの対応はそれはそれは親切だった。

異世界に転移したという事実を全く理解していない俺たち2人に、この街のこと、世界のこと、懇切丁寧に教えてくれた。

俺はお姉さんが説明してくれる間、バレないようにばっくりと空いた胸元を見ていた。



「つまり、この街は地球ではない何処かで、郷田くんを襲った光は「賢者」か「魔王」が怪しいってことね。」

「はい、魔王はここから遥か遠くの魔王城に住んでいて、賢者様は魔王を討伐する旅の途中です。ですから今から賢者様を追いかけても、数年後かと…。」


「それなら問題ない。」

「黒月くん?何か手立てがあるのかしら?」

「‘転移魔法’っていうのがあるんだろ。」

「はい、確かに転移魔法を繰り返せば幾分か速く移動できると思います。しかし、ついさっき魔法を知った黒月様では…」

「道案内の男が居ただろ。あいつ、路地裏に俺たちを追い込んで、何も無い所から仲間を呼び出したんだ。」

「まさか貴方が凶悪な転移魔法使い「高飛びジャック」を捕まえたんですか!」


俺たちが捕まえたのは有名な犯罪者だったらしい。

「まさか貴方、あの男の技を見様見真似で覚えたっていうの?」

「当たり前だろ。俺は一度見たミラプリの技を忘れた事はない!」

受付のお姉さんは、不思議な顔をしていたが、白金は何か納得した様子だった。

俺はミラプリをリアタイで見るのと同じくらい集中し、高飛びジャックの呼吸、姿勢、指先の動きまでを再現する。



「ほら、できただろ。」

「うそ…。」

冒険者ギルドの広いエントランスに、直径3メートルの光の渦が出現した。

受付のお姉さんだけでなく、他の冒険者までこちらを凝視していた。

「く、黒月くん。あまり注目されると不味いわ。」

「よし、じゃあさっさと行くか。

お姉さん、色々ありがとうございました!」


黒月と白金が渦の中に歩いて入ると、やがて渦は消えて、2人の姿も消えていた。

「は、はは。夢でも見ていたのかしら…。

さ、お仕事、お仕事!」

この光景を見たものは、全員幻だと思い、家族にも話さなかったという。





「ここが魔王城か。なかなか立派なお城じゃないか。」

「地味ね。まあ実用的ではあるけど。」

おそらく白金は、ベルサイユ宮殿やシャンポワール城と比べているのだろう。観光地と本物の戦争に使う城を比べたら、見劣りするに決まっている。金持ちめ恨めしい。


「なぜ人間がここにいる?」

少し人より体格の大きな、ツノの生えたイケメンの男が魔王様のようだ。

魔王は玉座に座り、本を読んでいた。


「おくつろぎのところ、すみません。

実はこのキモオタにストーカーされていまして。」

白金は俺を売り、速攻でイケメン魔王の側についた。

「魔王様、その女は危険です。そいつに近づくと筋肉病がうつり、脳まで筋肉になってしまうでしょう。」


「いや、だから誰なのだお前らは!?」

魔王が大声をあげたため、護衛が駆けつけたようだった。

「魔王様、ご無事ですか?…人間どもめ、どうやって侵入したぁぁ!」

護衛の翼の生えた悪魔が、闇のオーラ全開にして威嚇している。


「ちょっと魔王様に、帰り道を教えてもらおうと思って。」

「人間の分際で、この無礼者がぁぁ!」

護衛の悪魔がいきなり打ち出してきた黒い球を、直感的に判断して避けると、俺が先程まで立っていた床は禍々しく変色していた。

「レベル70の私の攻撃を躱すか。ならばこれでどうだ!」

さながら◯っコロの魔◯光殺法のような攻撃を連続で繰り出してきた。

学ランを脱ぎ、バク転と横飛びで全ての光線を躱す。


「貴様、何者だ?」

静観していた魔王が尋ねる。


俺は待ってましたと言わんばかりに、制服の下に着込んでいたミラプリ限定ジャージのロゴを見せつけ、決め台詞を叫んだ。

「俺の名は、ミラプリブラック!

闇から出でし、悪魔達よ。「とっとと帰ってお寝んねしなさい!!」


「白金ぇぇ!決め台詞とってんじゃねーよ!!」

いつの間にかお手製の衣装に着替えた白金がそこにいた。彼女はスクールバックに自作の衣装を入れて常に持ち運んでいる程のミラプリ狂なのである。


「貴方こそ、そろそろそのダサいジャージ卒業して、私の作った衣装着なさいよ!絶対似合うから!」

「お断りします!」



「魔王様、此処は我にお任せを」

「おお、ゴレムか。奴等を部屋から追い出してくれ。」

「御意」

「私も加勢するぞ!」


敵は翼の悪魔と全身金属の大男、ついでに魔王の3人だな。

「白金、いいな」

「オーケー、ミラプリ第7章、15話の作戦で行くわよ。」


ミラプリの2人が剣と盾の魔人に襲われた回。剣の魔人に苦戦するピンクに、ブルーは盾の魔人の腕を引きちぎって投げたのである。盾の魔人の腕を使ってピンクは剣の猛攻を防ぎ切り、最後は2人で逆転勝利を収めたのであった。


「ぎゃぁぁぁぁ、腕がぁぁ!」

「よくもゴレムの腕を、鬼畜な人間どもめっ、ぐあぁぁぁ」


魔王が見た光景は、地獄絵図だった。

ゴレムの腕を嬉々としてもぎ取る少女。ガーゴイルの魔法を弾き、馬乗りになってマウントパンチをする少年。逃げなければ。

この世界最強の生物は、異世界の人間に本能から恐怖を感じた。


「させねーよ」

「バカな?転移魔法がキャンセルされただと?」

「敵に使われたら厄介だと思ってな、分析しておいた。」


黒月カイトの分析、それはミラプリの放送からわずか1時間の間に、キャラクターの技を現実で真似るだけでなく、仮想敵との闘いをシュミレートする事によって対抗策まで導き出す。


彼はそれを毎週日曜日の朝に何年も前から続けている。





「そうか、君達は異世界から来た人間であったか。」

傷ついた部下を治療した後、魔王は観念して話を聞いてくれた。


「君達をここに送り込んだのは我ではないが、元の世界に戻す事ならできよう。

本当に、戻して良いのだな?」

「ああ、頼むっす」

「魔王様、できるなら私はあなたの側にいたいです。でも、ミラプリのない世界にとどまる事は耐えられません。」

白金は魔王に一目惚れしたようだ。

俺も人の事は言えないが、少女ヒロイン》恋愛 なのはどうかしていると思う。


「ふむ、君達が使っている技は我も見たことがない。一度そちらの世界に行ってみるのも悪くない、かもな。」

「なりません、魔王様!この野蛮人どもの世界に行ったら、魔王様とて何をされるか…」

「それもそうだな。絶対にやめておこう」

本人を目の前にして野蛮人いうなよ。



異世界に来た時と同じように、俺と白金の足下で魔法陣が光る。

「それでは、さらばだ。出来れば2度と来ないでくれ。」


こうして俺たちは魔王を(暴力で)説得して、無事、日本へ帰ることができた。




「ただいまー」

「おかえり、お兄ちゃん!一緒にミラプリ見よっ!」

「見るっ!」



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