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NDK黙示録  作者: つくも拓
第1章 モキータ編
9/72

我等今宵 王を戴く(7)

遅くなってしまい、すみません。

書いてるうちにノリが気にいらなくなって、3回書き直す羽目になりました。

緊張の取れたトシとタカは、観客に向かいアナウンスを始めた。

「「お集まりの皆さん、これよりUTAGEを開催いたします!」」

バックスクリーンに『UTAGE』の文字が映し出される。

「皆さんはヨツベエでこの映像をご覧になり、本日ここにお集まりになられた事と思います」

トシがスクリーンを示すと昨夜の映像に切り替わる。ただし、音声の代わりにそれらしい音楽が流されている。

「昨夜、我々は幸運にもこの闘いの場に居合わせました」

「この場では『漢』である事をかけて多くの強者達が全身全霊をかけて闘いました」

映像に『漢』の文字が被される。

「では『漢』とは何か? なぜ漢達は全身全霊で闘ったのか?」

「ここに宣言します。『漢』とは性別の事ではありません。自らの生き様に自信と誇りを持ち、それを貫き通そうとする者。そう言う生き方をする者の事を『漢』と呼びます」

「そうです。UTAGEとは『漢』と『漢』がぶつかり合い己の生き様を曝け出す場なのです」

「彼等が脱ぐのは衣服ではありません。社会的地位、様々なしがらみといった、その身に纏った虚飾を脱ぎ捨てていく。そして何も纏わず自分自身を曝け出す。

それがUTAGEで繰り広げられる闘いなのです!」

その時会場から一人のヒト科の男が壇上に乱入してきてメリーのマイクを奪う。

「何を偉そうな事言ってるんだ〜? なんだかんだ言って、ただ脱ぐだけじゃないか?」

その時トシとタカの頭にメリーの声が響く。

“落ち着いて。彼はリューさんが用意したサクラよ。適当なところで脱げるものなら脱いでみろってけしかけてね”

トシとタカはアイコンタクトをとりタイミングをはかる。

「所詮脱ぐだけ、誰でもできらぁ〜」

「おっしゃいましたね。そこまで言うなら、脱いでみなさい」

「はぁ?」

「脱げるものなら脱いでみろって言ってるんだよ」

「お前にそれだけの覚悟があるならな」

「おっし、脱いでやらぁ。目ん玉かっぽじってよ〜く見てな」

そう言ってマイクを投げ捨て服に手を掛けようとした乱入者の動きが止まる。

観客の好奇の目、場違いな者に対する嫌悪、やれるものならやってみろという無言の圧力……

乱入者は後ずさりし、思わず尻餅をつく。

「どうしました? 早く脱いでくださいよ」

「で……できねぇ……」

「脱いでみろと言ってるんだ!」

「すまねぇ! 俺は頼まれただけなんだ!」

「タカ、もうやめておけ。スタッフの方、彼をステージから降ろしてあげてください」

「すまねぇ……こんなに怖いとは思っても見なかったんだ……すまねぇ……」

スタッフに連れられ袖に消えていく間も乱入者の呟きがマイクを通じて会場に伝わる。

「思わぬ闖入者がありましたが、気をとり直して続けましょう。メリー、大丈夫かな?」

「はい、大丈夫です。でも、映像はかなり進んでしまい、もうこのシーンになってしまいました」

メリーがスクリーンを示し、指を鳴らす。

『私は嬉しい!この街にはこんなにも多くの漢が、(つわもの)がいる事が!

そして、勝利を収める事が出来た事が!!!

獣人の漢よ、あなたは本当に手強かった。

そんな強者に勝てた事を誇ろう!

そして私はここに宣言する!

我と思わん者はいつでもかかってきなさい。

私はいつ何時、誰の挑戦も受ける!!!』

バックスクリーンの中でキングが叫んでいた。

「我々はこのセリフがあってUTAGEを開催する決心をしました」

「闘いに参加した仲間への賛辞」

「その闘いに勝利できた事に対する歓喜」

「そして王者としての矜持」

「我々はこの闘いが単なる闘いではないと直感しました」

「そして『漢』の説明を聞き合点が行きました」

「ここには誇りを持って生きている『漢』が全てをかける価値がある!」

「我々はこの街で『漢』と呼べる方々に声をかけました。そしてご賛同頂けた十名のつわものにご参加頂けました」

「ご紹介しましょう! 拍手でお迎えください!

アエヲ・グループ、モキータ支社統括部長 ホーク・アービス!!!

…………」


リューは舞台裏に連れられてきた乱入者に声をかけた。

「ご苦労さんです、ルータスはん」

「リューさん、俺は……」

「知ってましたよ。マクマホン市長の犬だったんでっしゃろ?」

「ご存知だったのですか……」

「リューさん、どう言う事なんですか?」

「ワテはUTAGEを盛り上げる為のサクラとして彼を雇いましてん。せやけどコイツはそれを利用してUTAGEを潰そうとしてましたんや、マクマホン市長に雇われて」

「「「!! リューさん、あなたはそれを知ってて」」」

「「「市長の野郎、許せん」」」

参加者達は気色ばんだ。

「でも、できませんでした」

「そうなると思ってましたわ」

「ステージの上、雰囲気が尋常じゃなかった。

冗談抜きで腰が抜けました……

皆さんは本当にあそこで闘えるんですか?」

「あぁ、その覚悟はできている」

キングがそう答えると全員が頷いた。

「本当ですか?……こんな俺が言うのもおかしいんですが、本当ならあんた達は凄すぎる。

リューさん、お願いです!会場の隅でいいからこの闘いを見させてください!

こんな凄い人等の闘いを見たら、俺みたいなしょうも無い男でも明日から変われるかもしれない。後生です、生まれ変わるチャンスをください!!!」

「ええやろ、舞台の袖で見とき」

その時会場の方で参加者紹介が始まった。

「皆さん、そろそろ位置についてスタンバイしてください」


舞台裏に残されたリューは改めてルータスに声をかけた。

「よっしゃ、ご苦労さん」

「リューさん、俺、うまく()れてましたか?」

「もう完璧や。みんな上手い事火が点いたで」

「ありがとうございます。また使ってください」

「もちろんや。せやけどホンマに袖で見とってや?

何人かはまだ覚悟できてないさかいになぁ」

「情け無い俺が見てたら、見栄張って逃げられないって算段ですね」

「よう分かってるやん。仕事は最後までキッチリな」



第一話は後3回くらいです。

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