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NDK黙示録  作者: つくも拓
第2章 トナン編
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幕間 聖獣騎士団の尖兵(3)

暴れようとするカトルをゴードン達が取り押さえに行っている間、クラウスはメリンダに一つ質問した。

「そう言えば、なぜこの店の者は私の名を知っていたのだ? 君が教えたのか?」

「私はレーム・オルトの方々が来られると店のスタッフに聞いたのでコンパニオンを志願したんですよ」

「では誰が」

「この街に住んでいるグリフィンからだと思いますよ。騎乗されてきたグリフィン達に聴いて見られてはいかがです?」

「しかし、この街に来る間に接触した気配はなかったぞ」

「通信石でやりとりしていたんじゃないですか?」

「通信石?」

「何もご存知ないのですね」

呆れ口調のメリンダにクラウスは頷くしかできなかった。

「3時間後、このお店に。お昼をご馳走してくださいな。ルフィンを連れて参りますね」

「ルフィン?」

「この街に住んでいるグリフィンです。では後ほど」


クラウス達が指定された店で待っていると、メリンダが6人の若者を連れて現れた。

「あれ? クラウス様?」

見知らぬ若者がクラウスを見かけて声を上げた。

「メリンダさん、もしかして僕達に逢いたがっているのってクラウス様達?」

「同僚の綺麗どころじゃなくて?」

「当たり前でしょう? アンタ達に女の子を紹介するほどあたしは鬼畜じゃないわよ」

「「「来るんじゃなかった」」」


ダン!!!


驚いて音のした方に目を向けると、爆発寸前の目をしたクラウスが睨んでいる。

「メリンダ、どう言う事だ? ルフィンとか言うグリフィンを連れて来るんじゃなかったのか」

「ええ。コイツがルフィンですよ」

紹介された若者が卑屈にヘコヘコとお辞儀をしている。

「? 私には人間に見えるのだが」

「それもご存知なかったんですか? グリフィンとか、人間の言葉を使える魔獣は人間に変化へんげできるんですよ」

「なに…⁉︎」

「グリフィンとかドラゴンとか、人間の言葉を使える魔獣は人間に化けられるんです。

で、このアホ面がルフィンです」

「もしかして、この5人もグリフィンなのか?」

「あれ? ノア達ってさ、クラウスさん達に人間の格好を見せた事なかったの?」

「まあ、見せる必要も機会もなかったし」

「雇い主じゃないの?」

「そうは言っても、俺たち短期契約のバイトだし」

「人事の人も、何も言わないし」

「待て! もしかして、お前たちは我々が騎乗して来たグリフィン達なのか?」

「ノアで〜す」「ソップで〜す」「シンです」「チョーカーですよ」「フランクで」


軽薄かる! 


5人、もとい5頭のノリの軽さにクラウスは軽い眩暈を覚える。

「で、クラウスさん。何か質問があるって聞いたけど?」

「ああ。ノア、お前はソイツに我々の事をどこまで喋ったんだ?」

「え? 名前と、レーム・オルトの偉い人でお金たくさん持ってるって事だけだけど?」

ルフィンが横から後を継ぐ。

「クラウスさん、ああいうお店に入った時に『お客さん』って呼ばれるのと名前で呼ばれるの、どっちが嬉しい?」

「それは…まあ名前だな」

「でしょ? だから名前を確認しておくの。サービスの一環としてね。

あと、お店を案内するのに懐具合を知っておくって当然でしょ。取りっぱぐれないようにね」

「それだけか?」

「それ以外に何か聞いておいた方がいい事って何かある? あったら教えて。サービス向上のために」

「そうだな…無難なところで客の好みとか」

「あ、それは選ぶ女性で大体分かるし、相手をしたコンパニオンから聴取してデータベース作るから。あ、ウチの系列店以外、外部には漏らさないから安心してね」

「「「安心できるか!!」」」

商売敵しょうばいがたきに塩を贈るような真似はしないよ。本格的なハッカーならともかく、結構強固なファイアウォール入れてるし」

「まあ、そんな情報を覗きに来るモノ好きもいないか…」

「一人鬱陶しいのがいるけどね。エスアスのロレンスっていう人」


え……

聞き覚えのある悪名にクラウス達の顔が引き攣る。


「人気のあるコンパニオンをチェックしてるみたいだけど、知り合いが来るとホームページに載せちゃうからね」

「クラウス様、エスアスのロレンスって……まさか…」

「ゴードン、おそらくそのまさかだ」

「さっきホームページに載せるとか言ってませんでしたか?」

ゾワっと嫌な予感がする…

「あ、やっぱりあげちゃってるや」

「「「見せろ!!」」」


祝!記録更新!! 鉄血のクラウス(32) 花園を蹂躙、十輪を手折って初の二桁


ホームページの見出しを見て愕然とするクラウスに追い討ちがかかる。コメントの投稿に見知った名前がある。北のシロクマの異名をとるラウル・パオラ教団のイワノフからの投稿であった。


“そんなに溜まっているなら早く嫁を貰え”


それに呼応したかのように次々とコメントが投稿され出した。


“わしも心配しておるのだ”

“相手なら紹介させてもらうが”

“ボクの奥さんに手を出さないで下さいよ”

……


敵、味方ともこう言う時だけ結託しやがって…

頭痛がして目頭を押さえたクラウスだったか、別の見出しが目に入る。


祝! 童貞狩チェリー・ハント千人達成!!

花園の美魔女 レイナ様のメイク・レジェンド


カトルの顔を見るクラウス達。

かける言葉が見つからない。


「おやまあ。花の情報をあげるだなんて。ロレンスさんは出禁だね」

「メリンダ、心配しなくてもロレンスはもう花街には来れないから」

クラウスのこめかみに浮かぶ青筋を見てメリンダは察しがついた。

ご愁傷様。


「そう言や、あんた達ずいぶんと仲が良いけど知り合いなの?」

「ああ、ボク達幼馴染なんです」

「悪さしてはアユタヤさんに殴られたり」

「メコムさんに縛られたり」

「ルビカさんに吊るされたり」

「あ、そう言えば、母さんこの街に来てるよ」

「「「「え!?」」」」」

ノア達の顔が引き攣る。

「この街に来てるメスのグリフィンってアユタヤさんだけだと思うけど、あんたアユタヤさんの息子なの?」

「うん」

メリンダは暢気そうなルフィンの顔を見て溜め息が出た。

「メリンダ、アユタヤというグリフィンは有名なのか?」

「ええ、クラウスさん。オスのグリフィンと言えばこの通りですが、メスのグリフィンはまともなんです。

中でもアユタヤさんは障害者の支援をされていて、この街でも講演会が予定されている立派な方なんですよ」


それは溜め息の一つも出るわ…


「ルフィン、お前アユタヤさんがいるのによく平気で」

「だって、もう母さん程度じゃそんなに怖くなくなって」

「「「マジ!?」」」

「もっと怖い人、知ってるから」

「まさかこの街にはドラゴンでもいるの?」

「あ、ドラゴンなら居るよ。でもあの人達はそんなに怖くないし。いい人達だよ」

「そう言えば、この街でドラゴンが2頭いると情報が上がっていたな。しかし何かに吹き飛ばされたと聞いているが」

「ああ、あの時ね。それと、いるのは3頭だよ。子供のドラゴンもいるんだ」

「あの時と言う事は、本当に吹き飛ばされたのか。そんなに強くないようだな」

「いや、あれは相手が悪いって。武器エモノを持ってないテリーナさんだもん」

「どう言う事だ?何で武器を持っていないなんてつけるんだ?」

「テリーナさんだもん。武器を使えば武器の強度までのダメージしか与えられないって言ってたから。

ちなみに素手で地面殴るのを一回モキータで見たけど、岩盤ブチ抜いて温泉が湧いちゃったよ」

「「「「マジ?」」」」

「マジ」

「何者だ、そのテリーナとやらは」

「なんでもシーアンの救世主の一人だって」

「ルフィン、怖い人ってそのテリーナさんの事?」

「違うよ。テリーナさんはメチャ強いけど、そんなに怖くないし」

まだ凄い人が居るのか…

「そう言えば、この前テリーナさんを顎で使っているハゲがいたね」

「それは多分師匠だよ」

「師匠だあ? お前その人と面識があるの?」

「お笑い界の生けるレジェンド、大魔王ノック師匠。ボク魔王軍団の一人なんだ」

「魔王軍団?」


物騒な名前にクラウス達は一瞬怯む。一瞬だけだったが。


「師匠を慕うお笑い芸人の集団のことなんだ」

「お笑いって…」

「しょっちゅうタカってるから頭上がんないけど、怖い人じゃないよ」

「分かった、三富組のルケスさん! そうでしょう?」

「アニキは見た目が怖いけど優しくて頼りがいのあるナイスガイだよ。見た目は怖いけど」

「焦ったいね! さっさと吐かないとケイ姐様に訊くわよ」

次の瞬間メリンダの前には震えて土下座するルフィンがいた。

「どう…したの?」

「ご勘弁を」

「まさか、あんたの怖い人って、ケイ姐様?」

頷くルフィン

「メリンダ、そのケイって人はどういう」

「三富組の組長の妹さんで、美人で気っ風が良くて、人情に篤く困っている人をほっとけない。そう言うお人ですよ。

ですからあたし達この街の者は、敬意を込めて『姐様』とお呼びしているんです。

今は他の街に住んでおられるけど」

「話しを聞く限り、怖い人とは思えないな。むしろ佳い人としか思えないんだが」

「…怒らせなければ」

「「「???」」」

「怒らせなければケイ姐さんは『一生付いていきます』って言いたいくらいいいお方です。

でも怒らせちゃうとマジ怖いんです。

やらかしたヤツを何人か見たけど……」

「まあ、ルフィンに何も『やらかすな』ってのは無理だよなあ」

「うん」

「「「自分で認めた?」」」

「この街でももうやらかしちゃって。今度会うまでにポイント貯めとかないと、ボク自殺する場所探さないといけなくなるから…」

「逃げればいいじゃん」

「無理! 姐さんに『来い』と呼ばれたら一秒でも早く御前に駆けつけないと」


……何があった

ルフィンの心が完全に折れているのを見て一堂は一様にそう思った。


その後、クラウス達はなんでもホイホイ簡単に話してくれるルフィンに拍子抜けしながらもトナンの情報を集め聖都への帰還の途につく。

クラウス達は得た情報を反芻し、思う。


……信じて貰えるのかなあ

すみません!

今回急の入院のため掲載時間を先延ばしし損ね、投稿後に通過記載する羽目になりました。


今後の予定ですが、閑話をもう一本。

ロビンの区切りをつけて本編再開します。

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