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NDK黙示録  作者: つくも拓
第2章 トナン編
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幕間 聖獣騎士団の尖兵(2)

トナンの南門に着いたクラウス達を出迎えたのは執事服を身にまとった男であった。

「クラウス様。ようこそトナンの街においで下さいました。

私、この度皆様の案内役を務めますカルロと申します。よろしくお願い申し上げます」

深々とお辞儀をするカルロにクラウスは疑問を投げかける。

「なぜ私の名を知っている? この来訪は…」

「お忍びでございますね。

グリフィンと共にいらしたと言うことは、そう言うことでございましょう? 委細承知しております」


今回の任務は教皇猊下直々の御下命である。余人は知らないはず。なのにこの男は私の名を知っていた。つまりは猊下から連絡を受けていると言う事なのか?


「先ずは腹ごしらえを。食事を終えられた頃にお迎えにあがります。グリフィン達はこちらに」

そう言うとカルロはグリフィン達の鞍を外し、レストランの外に連れ出して行った。


レストランで準備されていた食事は満足のいくものだった。こころなしか精のつくものが多い気もするが、聖都レームからの長旅を労う意味もあるのであろう。食後に香りの良いブランデーを味わい一息ついているとカルロが戻ってきた。

「お待たせいたしました。

お部屋の準備も整いましたので、お一人づつご案内いたします。

皆様どうぞトナンの夜をお楽しみください」

カルロの挨拶が終わるのを待っていたごとく、艶やかな女性コンパニオンがクラウス達を伴い部屋に案内して行った。


メリンダは部屋に入るとクラウスの首に腕を巻きつけ小声で話し掛けてきた。


…この部屋は監視されてます。怪しまれないよう身体を密着したまま小声で

…どういう事だ

…お客が私達コンパニオンに必要以上の乱暴を働かないようにですわ。しばらく私に合わせてください


メリンダは身体を離し、今度は普通に話し出す。

「本日は当『花束を貴方に』をご利用頂き、ありがとうございます。

当店は花を選び放題。一輪を愛でるも良し。何輪も摘むも良し。

一夜の夢の花園を自由気ままにお過ごし下さい。

一輪目の花は私でよろしいでしょうか?」

そう言うとメリンダは艶っぽく微笑みクラウスに抱きつく。

…あれほどご注意申し上げましたのに、なぜグリフィンで来られたのですか?

…君はまさか、鶉か?

…はい

…グリフィンで来るとまずかったのか?

…報告書を読まれておられないのですか?

…ああ

…この界隈の都市国家では、グリフィンと共に訪れるという事は夜遊びが目的なんです

…え?

…グリフィンが街を訪れる目的は夜の遊びと識れ亘ってるんです

…ちょっと待て。グリフィンと言えば聖獣では

…皆んな性獣と知ってます

…知ってる?

…はい。思っているのではなく、事実として知っているんです

…事実として?

…事実として、です。この街に住みついているグリフィンがいろいろやらかしてまして

…いろいろ?

…で、今ではそのグリフィンが出しているガイドブックもありまして

…ガイドブック? 何の?

…夜の店の

…うそ…

…ちなみに、当店は最高ランクの五つ羽です

…マジかよ

…他のグリフィンもその評価を頼りに遊びに来るようになり

………

…グリフィンと来れば良い店を紹介してもらえると評判が立ち、遠くからも好色漢すきものがお忍びで

…つまり我々もお忍びで来た

…スケベ目的のお客と思われております

…我々には任務が

…グリフィンと一緒に来たスケベ親父が言う言葉に説得力があると思います?

……ある訳ないなぁ

…諦めて楽しみましょう? クラウス様は好みのタイプですし。目一杯サービスいたしますわ


楽しんだ

クラウスにとっては初めての任務失敗である。しかも、その理由がスケベ親父と認定されたから。

任務の遂行中の黒星なら反省もできるし取り返しもつく。これまで窮地を何度も覆してきた。

しかし今回は任務を開始すらできなかった。

聖都に戻ったらグリフィンの情報を握り潰したヤツを捜し出して、必ずこのお礼をしてやる。

そう心に誓いつつ、嫌な事は忘れようとばかり花を摘みまくった。


太陽が黄色い…

さすが五つ羽と自慢するだけの事はある。

コンパニオン達の質も高く、心身共にリフレッシュできた事を実感した。

それ相応の料金を払う事になったが。


ロビーではゴードンとボリスとヨアヒムが待っていた。

それぞれ昨夜の相手が傍に寄添っている。

店を出るまでお見送りをしてくれるらしい。

「「クラウス様。おはようございます」」

「おはよう、諸君。昨夜は十分堪能したか?」

「「ハッ」」

全員スッキリした顔で答えてくる。

「少し頑張り過ぎたかもしれません」

「私もです」

「同じく」

ゴードンは3人、ボリスは2人、ヨアヒムは5人のコンパニオンに囲まれ鼻の下が伸びきっている。

「しかし、やはりクラウス様には及びませんな」

「私もやり過ぎたと思っているよ」

クラウスは大名行列よろしく10名のコンパニオンを従えていた。

ちなみに、この店のコンパニオン達はそれなりの強者である。そんな彼女達を相手にして10名はこの店の記録レコードを更新していた。

「ところでカトルはまだか?」

「あ、戻ってきたようです」

カトルの連れているコンパニオンは一人だけであった。彼女はカトルの腕にしがみつき、心なしか歩き辛そうにしている。


「レイナ、大丈夫か? 無理をしなくていいよ」

「カトル様。最後までお見送りさせてください。コンパニオンとして最後まで」

「でも、君は初めてだったんだろう? 今も辛そうじゃないか」

レイナと呼ばれたコンパニオンはカトルの胸にしがみついた。

「…わたし、わたし…貴方で良かった」

そう呟くと肩を震わせる。

カトルは感極まりレイナを抱きしめる。

「レイナ、やはりこんな店は辞めてくれ。僕の伴侶になってほしい!」

レイナはそっと唇を重ねるとカトルから身を離す。

「カトル様。貴方は前途のある方。わたしみたいな女につまづいちゃいけないお方です。

わたしでは貴方を支える事などできません。

貴方に相応しいお方を見つけ、お幸せを掴んで。

どうかわたしの事などお忘れください」

「忘れられるモンか!」

「どうかわたしを困らせないで…」

「こんな店に居る事はない。レイナの面倒は僕が」

レイナは哀しそうに首を振る。

「わたしの事を憐れまないで。

この素敵な想い出があればわたしは生きていけます」

レイナの瞳から涙がポロポロと溢れる。

「レイナ!」

「さようなら、カトル様」

そう言うとレイナは我慢できなくなったように店の奥に駆け込んでいく。カトルは後を追おうとするが、黒服に遮られた。


クラウスはカルロのもとから戻ってきたゴードンに声を潜めて話し掛けた。

…どうだった

…借金はないそうです。彼女は好きでこの仕事をやっているそうです

…あれは演技だったか

…その様です

…やはり女は恐ろしいな

…お気づきでしたか、クラウス様?

…この店はかなりの高級店だからな

…それは理解できます

…そんな店が素人に客の相手をさせるわけないからな

…そう言われればそうですね。ところで

…まだ何か?

…彼女は御歳おんとし53歳。お孫さんもいるそうです

…え

童貞狩人チェリー・ハンターレイナ。この界隈では有名人だとか

…どう見ても二十歳はたちそこそこに見えるが

ボリスもヨアヒムも目を見開いてしまっている。

…ああいうのがお好きそうなので、ああ振舞っているそうです。カルロに『くれぐれも』と念を押されたのですが、カトルの夢を壊さないであげてくださいね、と

…他言無用ではないのか

…有名人ですから。今更と

…そうか

…一夜の夢を提供するのがこのお店。夢と知っていてアバンチュールを楽しむのがお客様。いい夢を壊すのは野暮と言うもの。そう申しておりました

…確かにカトルの夢をわざわざ壊す事もないな。そっとしとくか。大人として

…あ、店員と揉め出した。ちょっとカトルを止めてきます





帰還するまでが出張です。

もう一つ続けます。

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