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NDK黙示録  作者: つくも拓
第2章 トナン編
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彷徨える吟遊詩人(8)

トシに近づいて来るリンクス(仮称)はスピードを上げ腕を振り上げる。

トシの顔面を狙って繰り出された右ストレートをスリッピングでかわすと、トシはそのまま相手の体にしがみつき体を反らし勢いを利用して地面に叩きつける。そのままフォールに入ろうとするトシの体を跳ね返し、二人は構えたまま睨みあった。

「はい、ストップ、ストップ! いきなり何してるの、二人とも」

慌ててルフィンが間に入った。

「レフリーストップがかかって良かったな、マユ」

「そっちこそな、兄ちゃん!」

「え? 知り合いなの、トシ?」

頷く二人。そこに足を引き摺りながらタカが近づいて来た。

「どこかで聞いた声だと思ったら、やっぱりトシか」

「タカ、久しぶり」

「久しぶりじゃないよ! この女と知り合いなら止めろよ!!」

「いや、止める暇がなくって」

「嘘つけ! ノリノリで実況中継してたじゃないか! おまえ絶対途中からおもしろがっていただろ!」

「いや、あんまり見事に技が決まるもんで、つい」

「やられていたのタカだし」

「ルフィン、それでも友達か!?」

「タカ、もしトシが女の子にボコボコにされてたら助けに入る?」

「じっくり観といて大笑いする」

「だろう? 仕方ないじゃん」

「……ところでトシ、おまえこの山猫リンクスと知り合いか?」

「兄ちゃん、この犬みたいなマスクマンと知り合いなの?」

「タカ、ルフィン。コイツはマユ。妹の。

マユ、コイツらはこっちで友達ダチになったタカとルフィンだ。よろしくな」

「こっちで? 兄ちゃん、何言ってるの?」

「それよりマユ、おまえいつここに来たんだ?」

「あ、待って。トシ。親父から連絡だ」

ルフィンは通信石を取り出した。

「みんなに聞こえるようにスピーカーにするね」

『ルフィン、トシは見つかったか?』

「親父、いま一緒にいるよ。話って何?」

『そうか、ちょっと代わるな。

繋がっているそうですので、どうぞ』

「「「?」」」

その後聞こえてきた声にトシ、タカ、ルフィンは凍りついた。

『よう。元気そうだね。でも、アタシが来ているのに顔も出さないってのは少し冷たくないかい?』

優しさが怖い。

『それとも、お偉くなったもんでアタシなんかに会いたくないってか?』

「ととととんでもございませんです、ケイ姐さん!!!」

「「です!」」

三人とも声が裏返っていた。

『アタシを優しいままでいさせてくれるよね?』

「「「はい!!!」」」

『待ってるよ』

「親父、今どこに!?」

『マーカス教団だ。少しお疲れのようだから、急いだ方がいいと思うぞ。じゃあな』

脱兎の如く駆け出す三人。

「待て、兄ちゃん!!」

マユは全速で走る三人の後を追って走り出した。


マーカス教団に着いたトシ達は第三会議室に通されると、正面の着座を残して机と椅子を片付ける。広くなった室内で入口に向かって正座で待機する三人を見て、マユは『兄ちゃん、ここでも何かやらかしたんだ』と察する。

やがて近づいてくる足音。

ドアが開いた瞬間、三人は土下座でお出迎えをする。

「なんや? おまえら、土下座なんぞして」

「「「!! ノック師匠!?」」」

「久しぶりやな」

「師匠、ケイ姐さんは……?」

「おまえらを呼んだんはワシや。ケイさんはこっちに来とらんで」

「ホンマですか? でも確かに」

「これか?」

ノックはスマホを取り出し、先程の音声を再生した。

「勘弁してくださいよ、師匠〜」

「危うくチビるトコでしたよ」

「ボクちょっとチビった…」

「すまんな。どうしてもおまえらに会いたくてな。ケイさんに頼んで声入れて貰うたんや」

「そんなモン聞かさんでも、大恩ある師匠に呼ばれたら直ぐに来ますよ」

「……この状況でマーカス教団にでもか?」

「「あ」」

「あ、ってなんだよトシ」

「ルフィンの所為でテリーナさんに追われてるんだ」

「ところでトシ、その誰や?」

「師匠、これボクの妹でマユですわ。マユ、こちらで偉うお世話になったノック師匠」

「あ、初めてまして。いつもウチのアホ兄貴がお世話になってます」

「こちらこそ宜しゅうな。せやけど、トシ。おまえんトコ兄妹揃うて大変やな。

マユちゃん、いつこっちに来たんや?」

「は? 生まれも育ちもここですけど?

それより兄ちゃん、ここどこら辺なん?

走った距離からしたら扇町あたりや思うんやけど」

「何言うてんねん。おまえこっちに来るとき説明受けてないんか?」

「こっちに来る?」

「おまえ、どうやってあの公園に着いたんや?」

「え? 泉の広場ンとこをシュッと行ってピッと上がったとこにあったドア出たら、なんや知らんとこに出たんでちょっとフラフラしとったら公園見っけたんで、ちょっと休憩〜思うたらそこの犬マスクのヤツらがナンパしてきたんで…」

「ちょっ、ちょっと待て!! 

マユちゃん、地元でドア開けたらここに来たんか!」

「地元って、ここも大阪のどこかでしょ?」

「ルフィン、テリーナとグレーテルとベガ呼んでこい! 大至急や!」

「ベガって誰?」

「テリーナに聞いたら分かる! 急げ!!」

ノックはいつに無い真剣な表情でトシの方を向いた。

「トシ、緊急事態なんでおまえの事を皆んなに話す。ええな」

「ボクの事? なんなんですか?」

「おまえはこの惑星ほしのモンやないと言う事をや」

トシの表情が変わった。

「二度手間はメンドイんで皆んなが揃うてからや。構わんな」

トシはただただ頷いた。

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