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NDK黙示録  作者: つくも拓
第2章 トナン編
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彷徨える吟遊詩人(7)

トシは追ってくるテリーナの気配が無くなった事に安堵しつつも訝しんでいた。身体能力からして、自分ではテリーナから逃げ切れる筈がない事は良く分かっている。

何があった?


通信石が震えた。ルフィンからの通信である。

「なんだよ、裏切り者」

『そう言わないでよ、トシ』

「煩ぇ、この恨みは忘れないからな。」

『ごめんって。そう怒んないでよ。友達だろ?』

「まあ、おまえはそう言うヤツだからなあ。

ところで何の用だ?」

『親父がこっちに来ててさ。で、トシに言わなきゃなんない事があるって』

「?」

『トシ、今どこに居るの? そっちに行くから』

「じゃあ、北公園の時計塔のトコにいるわ」

『分かった。後でね』

ルーダさんが? 何だろう?

トシは首を捻りながら北公園に向かった。


ノックは回収できたゲートの残骸を前に、一息ついた。グレーテルやテリーナも疲れ果てている。

「ベガ公、どないや、全部あるか?」

集められた瓦礫を確認していたベガは首を振った。

「ノックさん、扉一枚分くらい足りないようです」

「まだか……何処にいったんや……」

「かなり広範囲まで探したんですけどね…」

「もう無理〜、脚が動かない〜〜」

グレーテルは泣きが入っている。

「後は根気良う探すしかないな。おかしなトコに繋がっとらん事を祈ろ」

「誰かが開けない事も、です」

「ところで、ゲートの事は上司うえに報告したんか?」

「そう言えばまだでした」

「すぐにやっとき。報連相は社会人の基本やで。

ほんで、その後ワシに代わってんか。おまはんの上司に一言言いたいんや。『何考えとんじゃ!』ってな」

「お手柔らかにお願いしますよ」

ベガは上司ラファエロとのホットラインを繋いだ。

『イヤアアアアアアアアア!!!』

ベガは咄嗟に通信を切った。

「「「……」」」

「なに? 今の」

「ベガ〜。おまえ、どこにかけたの?」

「そうですよね、きっとかけ間違えたんですよね、きっと…」

「ホットラインでかけ間違いか?」 

……

全員、目頭を揉んだ。

きっと疲れている所為だ。

「気を取り戻して……もう一度…」

『や、やめろ!! 何だその手に持った物は!

悪かった、なんか知らんがワシが悪かった!!

だ、だから…な? な?


よ、寄るな! 寄るんじゃない!! 


いや、いやああああああああああああ……』


沈黙が降りる。

「ベガ、おまはんの上司うわやくって第何階梯やったっけ…」

「5階梯です……」

………

「なんか上位階梯うえも大変そうやな。後にしよか…」

ノックは下界に降りてから「諦める」と言う事を覚えていた。

「おハナ、コレおまはんのところで管理しとってくれんか? ほっとく訳にもいかんしな」

「それがいいですね。胡乱な場所に置いとく事もできませんし」

「ベガ公。ネエちゃん。運ぶの手伝ってや」

4人はゲートの瓦礫を抱えてマーカス教団の事務所に向かった。

「せや、ルーダ。ルフィンに教団にトシを連れてくるように言うとってんか」

「承知しました、ノック様」


トシは北公園の時計塔に着くまでもなくルフィンを発見した。

「お〜い、ルフィン。何してんだ?」

「あ、トシ。あれ見てよ」

ルフィンの指し示す先で獣人と誰かがバトルをしていた。

「ん? あれ、タカじゃないか?」

「やっぱり。トシもそう思う?」

「で、相手は女の子に見えるんだけど」

「うん。あのスゴいんだよ。

さっき2人ばっかりのしちゃってね。で、止めに入ったタカとバトル始めたトコなんだ」

「獣人相手に? 本当マジ⁉︎」

本当マジ

「あ左手を差し出した」

「何しようとしてるんだろう」

「手四つを誘ってるんだ。力比べだよ」

「獣人相手に力比べ? 無謀だよ」

「ああ、手四つの体勢に入った! これは無謀だ!」

トシにスイッチが入った。

「いや、これは手四つに見せかけて相手の腕を抑える作戦か! 

右足の蹴りがタカの腹に食いこんだ---! 

そして右足を踏み台にして左足が顎を捕らえる! 

そのまま---バク宙して着地、ムーンサルトキックが見事に決まった---!!」

「タカ選手は何が起きたのか理解できてませんね、トシさん」

「見事に後ろに倒れましたからね」

「しかしあの女性選手、凄いですね。山猫リンクスの様な動きでした」

「あ、ここで無防備に立ち上がっては危険だ---

リンクス選手の右回し蹴りがタカ選手の首を襲う!」

「あ、タカ選手、リンクス選手の足首を掴んだ!

さすがは獣人。見事な反射神経です」

「いや、これは悪手ですよ。

リンクス選手の左回し蹴りが首を襲い、両脚でタカ選手の首を挟む!! そして反動をつけ……決まった---!フランケン・シュタイナー!!

タカ選手、そのまま地面に叩きつけられた---

リンクス選手の左腕が高々と天を指している!」

「人差し指と小指を立ててますね。あの形はなんですか?」

「あの形はまさしくテキサスロングホーン! と言う事は…」

ウイ------!

「キタ---!! 出るか伝家の宝刀、ウエスターーン・ラリアッ---ト---!! 決まった!!

死神の鎌がタカ選手の首を刈り取る!

立ち上がろうとしていたタカ選手、首を起点に下半身が浮き上がり、そのまま地面に落ちた---!!」

「あ、リンクス選手、倒れたタカ選手にストンピング攻撃を仕掛けてますよ」

「容赦がありませんね。あ、リンクス選手、今度はタカ選手の左足首を掴んだ!! 

この体勢は? テキサストゥホールドだ!! 

1回転…2回転…タカ選手の顔が苦痛に歪む!

ああっと、リンクス選手、3回転で足を離した〜」

「何をするつもりですかね〜」

「おおっと、不用意に上体を起こしたタカ選手にヤクザキックが炸裂!

勢い余って持ち上がった両足首を掴んで……

左の小脇でロックしてホールド!

サソリか? サソリなのか!?

ロックされた足首からサソリの毒が回る!」

「いやあ、リンクス選手は多彩な技をお持ちですね」

「タカ選手、耐える! 耐える!!

ひっくり返ったらお終いだ!

しかしダメだあ---!!

リンクス選手はタカ選手を逃さない。

ターーン…オーバーー!!!

決まった、スコーピオン・デスロック!!!

タカ選手、堪らずタップする。試合終了! 」

トシはスマホに入れているゴングを再生ひびかせる。

「因縁の試合はリンクス選手の完勝で幕を閉じました〜!!」

いつの間にか集まっていた観衆ギャラリーが歓声を上げ、リンクス選手と呼ばれた女性がそれに応えて手を振っていた。

「興奮冷めやらぬ北公園時計塔前特設会場、実況はサトシ・クガと」

「グリフィン・ザ・ルフィンがお届けしました」


「あれ? リンクス選手がこっちにくるよ、トシ」

「ん? あれは……」



ちょっと悪ノリしました。

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