伝説の復活(6)
今回は少し短めです。
閑話と合わせていつも通りの予定でしたが、納まりを考えて分けました。
モキータから配信されたVTRで、今やマクマホンはゼネラル悪代官として子供達に大人気である。その人気はモキータだけに留まらず近隣の街にも及び、ショーのオファーがあちこちから来ていた。
マクマホンは対外進出の第一弾として、ケイ・オプティコムの縁を頼りにトナンの街を選んだのであった。しかも交渉の窓口はトシ。知己である事に気楽さもあるが、自分に悪代官のキャスティングをしてくれた事に感謝している。恩の一部でも返せるかと思っていた。だからこそ、街に着いた途端の緊急ステージも受託したのだった。
「皆んな〜、今日は皆んなのためにゼネラル悪代官様に来ていただきました!
お代官様に会えて嬉しいですかーーー?」
「「「はーーーい」」」
「スタンプを押して欲しいかーーー?」
トシの振りに大歓声が上がる。
「じゃあ皆んな、並んでくださーーい」
マクマホンは一列に並んだ園児達一人一人と握手を交わし、額に「悪」スタンプを押す。
「皆んな、悪になったかなーー?」
「「「はーーーい!!」」」
「じゃあ、代官サンバ! 一緒に踊ってねーーー」
一頻り踊り、記念撮影。縮少版代官ショーが終了するとトシは園児達の保護者に招待券を配った。
「皆んな〜、今日は楽しかった〜〜?」
「「「楽しかったーー!!」」」
「今度のお休みにトナン・サンプラザでお代官ショーを開催します! 皆んな、来てねーーー」
園児達は保護者に連れられて家路につき、三富組と元シラヌイ組の面々とプロムが残された。
そのプロムと言えば、先程のブレスとイン・ローの撃ち合いも何処へやら。代官ショーの興奮冷めやらないままリンとキャッキャとはしゃいでいる。
「おい、あの子のお迎えは」
「ケイ姐さんに連絡しました。なんでもマーカス教団の方が来られるようです」
「そうか、ご苦労」
「ところでルケスさん、一つご提案があるんですが」
「? なんだ?」
「あのシラヌイの連中、もらえませんか?」
トシの提案とは、シラヌイ組の面々を悪代官ショーのバックダンサーにする事だった。
いかにもと言った悪党面、アクが強くパーツの大きな顔は舞台で映える。そして舞台慣れしていないだろうから、きっとマクマホン演じるゼネラル悪代官の良い引き立て役になってくれると踏んだのだ。
ルケスはその案に興味を持った。仕事を回してやる事で恩も売れる。自分達のプロデュースする公演なら目も届く。トシの考えだと、失敗することも成功のようだ。
「思うようにやってみな。ケツは持ってやる」
こうして代官ダンサーズが誕生した。
まマクマホンは元市長の経験からカリスマもあり面倒見がよかった。また、真面目にやればやるほどコミカルになるシラヌイの面々は、トシの想像を越えて子供達に人気が出た。マクマホンは、いや悪代官ショーはトナンの地から一座を組んで新たな境地を開く事になった。
トナンの街にイン・ローの伝説が甦り、現れた幼竜は園児達とともに悪の文字をスタンプされた。
悪の一座は新しい歴史を刻むのだった。
上位階梯では三監査官が頭を抱えていた。
ファイルを作成したルキアスは口を開けたままモニターを見ている。
「ルキアス君、これはどういう事かなぁ?」
ンラクの猫撫で声にルキアスは怯えた。
「君が選んでやりたいようにやったんだよね?」
「え…いや、これはですね…」
「ルキアス君、君が落として欲しいのは右の拳かな? それとも左の拳かな〜?」
あ、これは答えたらアカンやつだ。
「「「ん〜、君は正直だね。ご褒美に両方の拳をあげよう!!」」」
三人掛で一頻りルキアスをボコボコにする監査官達に対し、ルキアスは必死になって叫んだ。
「いや、これで、これで終わりじゃありませんから!! ほら、ここに大きなパワーがあるでしょう? ちゃんと続きを考えてます!!」
ここの所の経験から素直に信じられず、ジト目で睨めつけるンラク。
「本当ですって! 僕のこの目を見てください!」
胡散臭エ……
「……ファイル、見せてみろ」
「今手元には…」
「いつ見せられるんだ?」
「……月曜日?」
「なんで疑問形なんだ?」
明らかに言い逃れなのが見え見えであった。
しかし、とりあえず代わりもいない。
「……月曜日だな。間違いないな?」
「頑張ります!!」
そう言って逃げるように退室するルキアス。それをどこか諦めの表情で見送る監査官達であった。
次回は閑話。ストーリーの進行と関係が薄いので好き放題にやらせていただきます。




