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NDK黙示録  作者: つくも拓
第2章 トナン編
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伝説の復活(5)

テンゼンは元シラヌイ組の残党10名を引き連れ、ご丁寧に園児達のお昼寝の時間を狙って聖トナン幼稚園に押し入った。

チャンスは一回。失敗しくじる訳にはいかない。が、リンの顔を知らないテンゼンは女児全員を捕らえる道を選んだ。また、園児達が逃げ回られると厄介なので、お昼寝の時間を選んだのである。

メープル組の女児は八人。テンゼンは八名の人質を確保し三富組に電話をして一息ついた。

額に汗が滲む。

「おい、てめえ等。絶対人質を手放すなよ。どれがリン・ミトミかわからないが、間違いなくこの中にいる筈だからな。リンがこちらの手の中にいる限り、八つ目と言えど無茶はできねえ」

全員真剣な面持ちで肯く。

先の紛争でいりでのルケスの暴れっぷりを思い出すと震えが出る。

「もうすぐ現れるぞ。気合いを入れろ」


聖トナン幼稚園に着いたルケス達は園の様子を伺っていた。

「兄貴、あいつ等ガキ共を抱えて盾にしてます」

「どこまでも外道なヤツ等だ。おい、ルフィンはどこに居る」

「兄貴、これを」

「カーク、これは?」

「トシから預かってきました。通信石だそうで、ルフィンと連絡できるそうです。このマークを押すとこちらから話しができるとか」

「そんな物があったんですね。

ルフィン、聞こえますか?」

“あ、ルケスさん”

「今どこに居るんですか?」

“職員室にいます。お嬢も一緒です”

「「「お嬢も!?」」」

“え、ええ”

「攫われたんじゃなかったのか?」

“最近、お嬢はボクの背中でお昼寝するんですよ。で、ボク子供達がお昼寝している間は職員室でヒルダ先生と世間話しているもんで”

「誘拐されなかったと……」

“おっしゃる通り”

あまりの間抜けさに、緊張が一気にとける三富組員達。

「……帰ります?」

「いや、子供達を解放させなきゃな」

ルケスはルフィンに園庭に出てくるよう指示を出した。

「おーーーい、シラヌイのーー」

「やっと来たな、八つ目ーー! 

本家のお嬢はこれこの通り預かっているーー」

「本家のお嬢ってのはこの子のことかーー?」

そう言ってルフィンの背からリンを抱き起こす。

「「「……」」」

「もう一度だけ聞くぞーー

誰を預かっているってーー」

「お、お前のトコの……マジ?」

肯く三富組一行。

明らかに狼狽える元シラヌイ組員達。

「リンお嬢。おっきして」

「ん〜〜、なんじゃルケス」

「……ホントに? ちゃんと八人捕らえたのに」

「お嬢、今日は誰か知らない子がいた?」

「今日は幼稚園を覗いてた子がいたので一緒に遊んでたのじゃ」

それを聞いた元シラヌイ組一行は落胆する。

なんか哀れになってルケスは声を掛ける。

「シラヌイの、このまま帰るってんなら無かった事にしてやるぞ…」

「なんじゃ、ルケス。あいつらリンのお友達に何をしておるのじゃ?」

「いや、お嬢…」

「るせい! こうなりゃ自棄だ!!

ガキ共の命が惜しけりゃ権利書よこしやがれ!」

「おぬしら、リンのお友達に何をしておるのじゃ!」

ルケスは宥めようとし、リンの顔を見て表情が強張った。

リンの額にある三つの点の様な角が赤みをまし、膨らんで葉を形作る。

「三つ葉紋……いかん!! 皆んな、伏せろ!!!!」

そう言いながらリンを身体ごと傾ける。

……ュピッ!

何かがテンゼンの頭を掠め、教室の壁が轟音とともに砕け散った。

居合わせた一堂は瞠目する。

「ま、まさか……イン・ロー……」

カークの口から言葉が溢れた。


イン・ロー

三富家の子孫で有角の者に稀に発現する無敵の能力である。

その前には立てる者がおらず、全てを打ち砕くという。先代のツクニがその能力で勢力を大きく拡大した事もあり、ミクニ近隣都市の極道者でその伝説を知らない者はいない。

その兇悪な能力ちからを顕現させたリンは、興奮冷めやらずイン・ローを連発しまくっている。的になったシラヌイ組一行はイン・ローを避けようと平伏し、ルケスは被害が出ないようリンの身体の向きを変えるのに必死になっていた。

「誰か、誰かお嬢を止めろーー!」

「リン〜、百疋堂の限定プリン、無くなるよ〜」

そのTPOを無視した間の抜けた声にリンはピクリとした。

「悪い子にはあげないからね」

トシの声だった。

「待て!! 待つのじゃ!」

「あ、ルフィンが二つ目に手を出した」

「リンは良い子なのじゃ! プリンを、プリンをくれないと泣くぞ!」

「じゃあ、手を洗ってきなさい」

「は〜〜い!!」

手を洗いに駆け出すリンを見て一堂胸を撫で下ろした。

「「「…助かった…」」」

子供達は大きな音に目を覚まし出し、眠そうに目を擦っている。

ルケスはホッとしてトシに労いの言葉をかけた。

それが第二ラウンドのゴングになった。


「トシ? トシだと!? ついに見つけたぞ!」

子供の一人がそう言うとブレスを放った。

慌てて避けるトシ。

「何をするのじゃ、プロムちゃん!」

「「プロム〜!?」」

モキータから姿を消した幼竜、プロムだった。

「うるさい!コイツのせいで!」

そう言うとブレスを放つプロム。

迎え撃つイン・ロー。

「限定プリンが台無しになるじゃろうが!」

「俺の心配は〜!」

トシの叫びは無視された。

飛び交うブレスとイン・ロー。

幼稚園が戦場になろうとし、人々が絶望に包まれようとしていた時、正門の方から大音量で音楽が鳴り響く。

「「「これは!!!!」」」

リン、プロムをはじめ、怯えていたはずの子供達の目が輝いた。

音楽と共にキンキラキンの男が現れた。

園庭に進み、子供達を一瞥すると、手にした扇子で自らの額を指す。

「鎮まれ〜〜い! この額の文字をなんと心得る!」

「「「天下御免の悪の文字〜〜!!」」」

男のセリフに子供達が一斉に返事をする。

「遠くの者は音に聞け! 近くに寄って目にも見よ!」

「「「ゼネラルーーー!」」」

「おぬしらも、ワルよのう」

「「「お代官様ほどではーーー!!」」」

「うむ、良いではないか」

大歓声である。

子供達に大人気、ゼネラル悪代官がそこにいた。

次回で第一話完結。

展開を急いだ訳ではありません。予定通りです。

※念のため。

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