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NDK黙示録  作者: つくも拓
第1章 モキータ編
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邪教・暴竜、そして真実の愛(9)

チェイズはモキータに向かいながら興奮を抑えられなかった。何年も捜し求めていた仇敵の居所が掴めたのだ。

数ヶ月前に出会った、変わった男。モキータに連れて行ってやっただけの、名も覚えていない行きずりの男からメールが来た時にはよくある広告メールと思っていた。しかし添付の画像を確認した時は驚きで手が震えた。僧衣に身を包んだ写真の男。忘れる事の出来ないその顔。ダンジョーに間違いなかった。

アイツだけはこの手で引き裂いてやる……王家に伝わる秘術で愛竜と一身同体となり、竜戦士となって……そしてドラゴニアの栄光を取り戻してやる……

チェイズはその想いで心を染め尽くし、モキータを目指した。

モキータに着くと街の中心近くの広場に降り立った。

「ダンジョー!! 出て来い!!!」

竜の声帯を用いて叫ぶその大音声は街に響いた。

「貴様がこの街にいるのは分かっている!

私が用があるのは貴様だけだ!! 街を火の海にしたくなければ姿を現せ!! ダンジョー・ユイ・ショーツよ!!」


時を少し遡る。

アユタヤの話を聞いたノックは市庁舎に取って返した。

「ケイン市長、大事(おおごと)や! 竜がこの街に来てるそうや!」

「!ノック師匠、本当ですか!? その情報はどこから…」

その時職員が市長室に飛び込んで来た。

「市長、一大事です! 市の北方から竜が飛来してきております!!」

その場にいた全員がノックの方を向いた。

「ノック師匠、説明して頂けますか?」

「ワシも詳しくは知らん。会館に戻ったらグリフィンのアユタヤはん等がおって、竜の気配がして怖くて仕方がないから逃げさせてくれって言うてきたんや」

「さすがグリフィンの索敵能力と言ったところでしょうか」

「急いで対策を講じねばなりませんね」

「北側に住む市民の避難を! 急げ!」

「モンデル教だけでも頭が痛いのに、何故こう次から次へ…」

「あのう…」

「何ですか? テリーナさん。今は緊急事態ですので手短かに」

「竜ならアタシが何とかしましょうか?」

「え?」

その時、市庁舎の前の広場に降り立った竜が吼えた。

「ダンジョー!! 出て来い!!!」

貴様がこの街にいるのは分かっている!

私が用があるのは貴様だけだ!! 街を火の海にしたくなければ姿を現せ!! ダンジョー・ユイ・ショーツよ!!」

「あら? あの竜が用があるのは貴方のようね、ダンジョー」

「その様ですね。しかし竜に恨みを買う覚えはありませんが……」

「任せて良いですよね?」

「テリーナ様、私も参りましょう。ダンジョー師だけでは手加減が難しいと思いますので」

「ではノワール、参るとしましょう」

ダンジョーとノワールが退室するのを見届け、一同はテリーナに恐る恐る声をかけた。

「あのう、本当に大丈夫なのでしょうか?」

「いざとなったらアタシが出ますが、あの二人なら任せておいて大丈夫ですよ。それより、相手に怪我をさせないと良いのですが。

それよりモンデル教の対策会議を続けませんか?」

一同は怪訝な面持ちでケイの待つ対策会議室へ向かうのだった。


チェイズは自らが降り立った広場に面する建物の一つからノコノコと現れた人物を見て拍子抜けした。その人物こそダンジョーであったからだ。

「ダンジョー……?」

「貴方がお探しのダンジョー・ユイ・ショーツとは私の事でしょうか?」

「よく恐れずに姿を現したな。その度胸だけは褒めてやる!」

「何を恐れる必要があるのですか? 拙僧に何かご用でしょうか?」

「拙僧? 貴様が聖職者だとでも言うのか?」

「はい、拙僧は『マーカス愛の伝道教団』に身を置き、未熟な身ではありますが各地を巡りながら布教に勤しんでおります」

「父王の信頼を踏み躙り、謀叛を起こして祖国を滅した貴様が愛を説くだと?」

「祖国?……そうでしたか。合点がいきました。

ドラゴニアの、おそらく第三皇子、チェイズ坊や。ですよね? 大きくなりましたね」

「ぼ、坊やだと!」

「貴方には申し訳ないと思っております。しかし、拙僧は後悔などしておりませんよ。ドラゴニアは滅ぶべくして滅んだ国なのです」

「黙れ! 貴様の戯れ言など聞く耳持たぬわ! これより貴様の素っ首を叩き落し、父の墓前に供えて祖国復興の嚆矢としてくれる!! 覚悟せい!!!」

チェイズは轟然とダンジョーに迫った。

「ノワール」

「委細承知しております。では、愛の…ムチ!」

次の瞬間、竜戦士であるチェイズの巨体は上空に吹き飛ばされた。

「ノワール…手加減しておりますか?」

「申し訳ない、少し強すぎたようですね。気をつけます。では、愛の…ロウソク!」

どう見てもドラゴンのブレスであった。

暫くして上空に吹き飛ばされたチェイズの巨体は黒焦げになって広場に墜落してきた。

墜落の衝撃でフュージョンが解け、チェイズは竜の体から弾き出される。

「終わったかしら?」

市庁舎の窓からテリーナが声をかけた。

「早く中に運んで。その()の人化も忘れずにね」


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