我等今宵王を戴く(2)
下書きから大幅に修正の為、投稿が遅れました。
登場者が暴走し出してます。
「勇気ある者よ、名を聞いておこう」
そう格好をつけてとたん、トシの頭の前後から平手が飛んできた。
「今までタカって呼んでいたじゃないか!」
「格好をつけるんじゃない、アホ!」
「堪忍や〜、関西人の哀しいサガなんや〜」
「カンサイジンって何かわからんけど、アホばっかりか!?」
「否定できん…」
(作者注:関西人の名誉の為に言っておくが、そんなサガは関西人にはない……はず)
「気をとりなおして、ジャンケン…」
「待て。野球拳にはしきたりがあるんだ。
始める前に、見ているヤツ全員でこの歌を歌うんだ。みんな、簡単だから覚えてくれ」
そう言ってトシは野球拳の歌を周囲に教えた。
「じゃ、やるぞ!
ヤーキューウー すーるなら……
アウト、セーフ「「「ヨヨイノヨイ」」」」
一戦目に勝利したトシは、近くにあったビールを一息に飲み干した。
『なるほど、勝ったらまず酒を飲むのか!』
トシは単に喋り過ぎで喉が渇いただけだったのだが、いつの間にか「勝ったらまず酒を飲む」ものだと認識されていた。
「オッシャー!」
一声あげて勢いよくシャツを脱ぎ、マッスルポーズをとる。
『なるほど、ポーズをつけるのか!』
『カッコイイじゃないか!勝ったらどんなポーズをつけてやろうか?』
ポーズをとるのも定着してしまったようである。
「おいトシ、カッコつけた割には貧相だよなぁ、おまえの身体は」
「タカ、分かってないなぁ。
確かに俺の身体はおまえら獣人に比べ見劣りする。しかしな、ヒト科の俺がこの肉体を造るのにどれほどの努力がいるか、おまえ知っているか?」
「い、いや…」
「おまえ、おんなじ努力できるか?」
「それは…分からん」
「何度も言ったな?脱ぐんじゃない、曝すんだと。見せるのは身体じゃない、生き様だと」
「……」
「俺の生きてきた証がこの身体じゃ!この身体から俺の生き様を見てくれ。そうじゃなければこんな勝負、なーんの意味もないんだよ」
「……すまん、トシ。俺がバカだった。
この勝負は生き様を見せるものだったな!
よし、次は俺が勝つ!俺の生き様を見よ!」
トシは言うほど鍛えている訳ではないのだが、そんな事を知らないタカは勝手な想像を膨らませる。
「失せろ、小僧」
勝負をしようとしていたタカは、テーブルから引きずり降ろされた。
「な、なんだ?」
「小僧っ子にはこの勝負は重すぎる。すっこんで見てな」
「お、親父…」
「トビーさんが出るまでもありませんよ!?」
「獣人の生き様を見せるのに俺以上適任がいるのかな」
「それは…」
「ヒトの小僧っ子にいつまでも好き勝手言わせておく訳にいかんだろうが!」
「おいおい、あんたが出てくるならそんなガキじゃ役不足だよなぁ」
別のテーブルから見知らぬオヤジが立ち上がった。
「あんた、いっぱしの漢のようだな」
「あんたもな」
「ここから先は言葉は不要、拳で語り合おう!」
「応! 行くぞ! せーの」
ヤーキューウーすーるなら……
トシもタカも完全に蚊帳の外に出され、大人の勝負が繰り広げられた。
あちこちのテーブルで熱戦が繰り広げられたが、闘いはやがて収束していく。
店中の目が最後の闘いに集中した。
「「「ヨヨイノヨイ!!!」」」
パンイチの漢の前に崩れ落ちるトビー。
歓声が上がる中、漢は最後の一枚に手をかけた。
『ま、まさか!?』
止める間もなくソレは脱ぎ捨てられる。
一瞬の間をおいて大歓声が上がった。
「スゲェ!!!」
「あそこまでやるんだ!躊躇いもなく!!!」
絶賛の声の中、男は演説を始めた。
「私は嬉しい!この街にはこんなにも多くの漢が、兵がいる事が!
そして、勝利を収める事が出来た事が!!!
獣人の漢よ、あなたは本当に手強かった。
そんな強者に勝てた事を誇ろう!
そして私はここに宣言する!
我と思わん者はいつでもかかってきなさい。
私はいつ何時、誰の挑戦も受ける!!!」
どこかのカリスマレスラーのような事を言っている男は大絶賛の渦中にあった。
みんな大喜びの中、観衆の中からヤジが飛んだ。
「颯爽と脱いだ割には元気がないな」
「男相手にコレが元気になるかい!」
「じゃ、こんなイイ女の前なら?」
「お!?本当、イイ女だな!!!
みんなー!行くぞー!パオーン!!!」
「「「パオーン!!!」」」
(作者注、このシーンは皆様のご想像に任せます)
そう言うと、男は前に押し出された女性に近づき肩を掴んだ。
「あ?ちょっと、ケイン…グ…」
男の名を呼ぼうとしたところをみると知り合いのようだが、最後まで名を呼ぶ前に唇がふさがれた。そのまま顔を上気させ崩れ落ちる。
「ようし、今夜はとことん飲むぞ!
みんな、ついて来い!」
街に繰り出した半裸や全裸の酔っ払い達は、全員仲良く逮捕されトラ箱(泥酔者収容施設)に収監された。
しかし、主人公の影が薄いなぁ




