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NDK黙示録  作者: つくも拓
第1章 モキータ編
35/72

邪教・暴竜、そして真実の愛(4)

少し遅れました。ごめんなさい。

テリーナ・マーカスはモキータの街に着いてからずっと違和感を感じていた。

彼女に向けられる感情は羨望、恐れ、崇拝と言った物が定番である。中には下卑た慾望の目を向ける者もいる。

そしてモキータで彼女に向けられる感情も確かに同様の物なのだが、何か違うのである。

女性から向けられる感情は羨望が中心の筈だ。が、ここでは恐れと崇拝だった。顔を見た途端、恐れを抱かれるのは久しぶりだった。しかし恐れられる理由がわからない。また、いきなり崇拝されたのは初体験だった。

男性から向けられる感情は恐れと憐れみだった。普通なら彼女の肢体に向けられる下卑た慾望か、容姿に向けられる賞賛の筈だ。なのに、何故恐れ? 憐れみ? 特に、憐れみは訳が分からない。

ホテルに向かうタクシーの女性運転手は怯えていたし、ホテルのクロークの女性は悲鳴をあげて蹲り何かお経の様なものを必死で唱え出した。

奥から出てきた初老の男性はチェックインの対応をしてくれたが、テリーナの顔を一瞥し笑いを噛み殺している。

テリーナはダンジョーとノワールを驚かせようと予定を早めてモキータを訪れたのだが、この尋常ではない街の様子にテリーナはサプライズを諦めた。


「テリーナ様、それはおそらくテリーナ様のお顔を見たためと思われます」

「どう言う事です? 妾はこの街に着いたばかりですよ?」

「正確に申しますと、お嬢にソックリのそのお顔の所為と思われます」

「お嬢はこの街で確実に何かやらかしております」

「なんでそう思うのですか?」

「我々は街に着いて早々お嬢に出会いました。そして我々がお嬢と知己があると知れた途端、我々を見る目が何か可哀想な者を見る目に変わったのです」

「おそらくですが、怯えた者達はお嬢の被害者ではないでしょうか?」

テリーナの様相がみるみる剣呑な物に変わっていく。

「ダンジョー、ノワール。アメリアの下に案内しなさい」

「「御意」」

「されどテリーナ様、そのお姿のままでは騒ぎが大きくなります。心苦しくはございますがお顔を隠せるよう準備致しますので暫しお時間を」

「愚僧は先方に面会のアポイントを入れて参ります」

「分かりました。しかし、二人共」

「「はっ」」

「アメリアを逃してはなりませんよ」

「「御意!」」


その頃モンデル教徒に激震が走っていた。

「神はいた」のタイトルとともに拡散されていくスナップショット。

メリーと瓜二つの顔をしたテリーナのバストショットである。

モンデル教徒は教壇に飾られている神像でメリーの顔を見知っている。そのメリーに胸があるのだ。

教徒達は夢見ていた。いつの日か豊かな胸を手に入れる日が来ると。そしてついに、その夢を実現した者が現れたのである。

夢は叶う……

諦めながらも縋る思いでモンデル教に入信していた者達は光明を見い出したのだった、

モンデル教徒達が狂信者へと変化していくカウントダウンが始まった。


トシとタカはキングをはじめとする重鎮達の前で正座をさせられていた。

「ケインはん、コイツらが元凶でしたわ」

ノックの言葉に、二人に向けられる視線は剣呑な物になる。

話は少し遡り、ノックの反社会勢力との交流疑惑が持ち上がった事から始まる。ノックのツケを反社会勢力の構成員が支払った事が明るみに出たのだ。しかし、基金を立ち上げたばかりのノックは寝耳に水の出来事であった。

昼のワイドショーに出演したノックに決め付け口調のコメンテーターの質問が浴びせられた。

「ノック師匠。あなたはご自身の資産の殆どをノック基金創設に当てられた。障害者の救済に生涯を捧げる。ん〜〜、絵に描いた様な美談ですねェ」

「おおきに。でも、まだ何も形になってまへんのや。あんまり持ち上げんといてください」

「しかし本当に形になるんですかねェ」

「どう言う事や?」

「ノック師匠、いえ、ノックさん。

あなたには反社会勢力との交流がありますよね」

「なんの話や?」

「おや、お惚けになる?

いいでしょう。はっきり申し上げます。

我々はあなたと反社会勢力との交流があったと確信しております。

つまりノック基金は反社会勢力の資金集めの隠れ蓑であると。そしてノックさん、あなたはその見返りに報酬を手にしていた。そうですよね!」

「うっわぁ、それってノック師匠は正義の味方を装って金儲けしていたって事ですかぁ〜?」

ノックが気づくと、スタジオは完全にアウエーであった。真剣そうな上っ面の下で、晒し者を嬲る事を愉しむサディストの薄ら笑いが見え隠れしていた。

「そうか、このTVはワシの結婚会見の時にワシに怒鳴られたアホのおった局やったな。

ワシの粗を探して脚を引っ張ったろうっちゅう訳や」

「邪推はそれくらいでいいですか? 」

「邪推はおまはん等の方やろ? ワシが反社会勢力と交流がある? でっち上げも大概にせえよ」

「足掻きますねェ、だがそれは悪足掻きですよ。我々は証拠を入手していますから」

「なんや、証拠って?」

「あなた、先月末に飲み屋のツケを払っていますよね? その総額はなんと百万円を超えていた。

そして、その支払いをしたのがこの男です。見覚えがないとは言いませんよね?」

「誰や、これ。会うた記憶ないなぁ」

「そんな言い訳が通ると思いますか? では、会った事もない人間が百万を超えるあなたのツケを勝手に払ってくれたとでも?」

「いやぁ、天下のノック師匠ともあろうお方が往生際が悪い。ここまでバレたってのにまだしらばっくれますか……見苦しいですよねー」

「本当ですよねぇ。もう少し大物と思ってましたのに」

「おまはん等はワシをどうしても反社会勢力と関係があるようにしたい様やな。

しかしワシは本当にその男と面識がない」

スタジオはコメンテーター達は「まだ言うか」とばかりに嘲りの表情を浮かべている。

「それに、ワシのツケってなんや? ワシ、引退する時に全部精算したで。って言うか、これから収入の当てが無い人にツケは残せんって毟り取られたさかいな」

「何言ってるんですか。引退はもう3ヶ月も前の話じゃないですか。新しいツケが溜まるには十分な時間があるでしょう。

誤魔化すにしてももう少しマシな事を話しを…」

「あれ以降、ツケなんぞしとらんしな。そもそも飲みに行く時間なんぞ殆どなかったからな。

って、待てよ。ツケ…ツケ……もしかしたら……」

ノックはスマホを取り出した。

「あ、トシか? おまん今何処におる?

ワシ、今◾️◾️TVの5スタにおるんやけどすぐ来れんか? ちょっと紹介したい人がおるんやけど。

え? 2スタで打ち合わせ中? そら良かった。ちょっとだけこっちに来てんか。頼んだで。5分で来れる?ほな、待ってるからな」

「ノックさん、まだ足掻こうと」

「まあ、少し待っとれ。

あ、スタジオの皆さん。これからトシとタカが来ます。できれば笑顔と拍手で迎えてやってください」

その時トシとタカがスタジオに駆け込んで来た。


少し長くなったので、残りは次話で。

喫緊で投稿します。

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