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NDK黙示録  作者: つくも拓
第1章 モキータ編
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魔王降臨(2)

ノックは混乱していた。いや、何が起きているかすら分かっていなかった。何せ降臨し受肉している途中でいきなり「モマセロ」と呟く女性群に揉みくちゃにされているのだ。

「えッ?わッ!ちょ、ちょっと待て!待てって言ってるのにって! こら、や、止めい!止めろって!

や、や、止めて本当に…あ、…いや!!そんな所に手を入れるな〜〜お、お願い、お願いだから!だ、誰か!助けて、お願い〜!!」

あちこち弄られてくすぐったい。快感も交じる。攻撃と認識出来ず、自慢のフルカウンターも作動しなかった。

ノックは上位階梯世界から含め、存在し始めて初めての恐怖を感じた。

(もしかしてこれが貞操の危機ってヤツか?)

混乱しているのかそんな事まで頭に浮かぶ。

その時おかしな呪文が聞こえ、群がる女性群が蜘蛛の子を散らすように離れていく。

「大丈夫ですか……って、男?」

「なんで男に?」

「す、すまなかった。助かったよ。しかし、なんだ、あれは?」

「ああ、あれは亜メリーって言うんだ」

「しかしおかしいよな」

「何が?」

「ああ、亜メリーは胸の大きな女性を襲うんだよ。男が襲われるのってあまり無いんだ」

「太ってて胸があるヤツは襲われることがあるけどね。でもオッサンは別に太ってないし……

本当になんで襲われたの?」

おそらくは受肉の過程で一時的に胸の部分が大きくなったのかもしれないが、そんな事は言える筈もない。(とぼ)けるしかなかった。

「ワシの方が聞きたいわい!なんなの、本当になんなのこの街は!?」

「オッサン、この街に来たばかりか?」

「タカ、女装神の呪文を知らないんだよ。この街の住人じゃないって事は分かりきってるじゃないか」

「なんじゃ?その女装神って」

「この街で少し前にチチモンダルの獣ってのが出現(でて)ね」

「さっきの亜メリーの元凶ね」

「それを退治した二人の英雄が女装神なんだ」

「その二人の名前を唱えると亜メリーになった女性達も正気を取り戻すんだ」

「ドラマやアニメでもやってるから、この街の住人で知らない人はいないんだよ」

「呪文と共に、この護符を使えば完璧だよ」

「そんな()、効くのか?」

「効いてたでしょ?」

「まあ確かに」

「お一ついかが?」

「警察署公認の公式グッズだよ」

この街はそんな物を公認してるのかと呆れつつ、先程の貞操の危機を思い出し渋々購入する気になるノックであった。

「しかし、なんやな。この街はどんな街なんや?」

「どんなって、ごく普通の街ですけど」

「あんなモンが生息しててか?」

「タカ、普通の街にスケベ目的のグリフィンがいるか? サキュバスが住人として住んでいるのか」

「あ。あんまり違和感なくって忘れてた」

「ちょ、ちょっと待て! グリフィン? サキュバス? そんな物が普通にいるのか?」

「そう言えばルフィンのヤツ、なんか新しい店見つけたって言ってなかったっけ」

「いやあいつはこの頃忙しいみたいで……」

「こらッおんどれ等!人の話聞かんかい!」

「え?あ、オッサンごめん。なんだったっけ?」

「ホンマ人の話聞いとらんのか! 小学校の時「人の話を聞いてない」って通信簿に書かれたやろ」

「…書かれた」

「なぜそれを…」

「もしかして、ボクのファン?」

「もしかして、ボクのストーカー?」

「なんでこの街に来たばっかりのワシがお前等のストーカーできるんや!?」

「つまり来たばかりじゃなければストーカーすると」

「ボク等は警察に知り合いがいるんですよ、犯罪行為はしない方が身の為ですよ!」

「誰がするか! 全く、何が悲しゅうて男のストーカーなんかせなあかんねん」

「女だったらすると」

「やっぱり」

「止めい! ()うたばっかりの人間を犯罪者にしようすなや。何考えとるねんお前等は」

「オッサン」

「なんや」

「自分が何か考えてるからと言って、人も何か考えてると思っちゃダメだよ?」

「そ、そうか? それは悪かったなぁ」

「オッサン、オッサン。コイツは何も考えてないだけだよ」

「お前等ーー!!ええ加減にせえ!!」


…この後しばらくトリオ漫才が続くのだが割愛する。


ノックは思う。グリフィンやサキュバスがいる街で情報もなしに行動するのは危険だと。いや、グリフィンやサキュバスは知っているからまだいい。しかし亜メリーって、なに? 上位階梯世界人の自分の知らない生き物もいるの、この街には。

自分の能力(ちから)を持ってすれば、恐れる物等ない事は分かっている。しかしノックの本質は緻密な情報分析と戦略に基づき自分の戦場を構築するところにある。分かっちゃいるが不安なのだ。

「ところでお前等、この街の案内(ガイド)してくれへんか?」

「え〜、ボク等に得な事ないじゃん。オッサン、金も持ってないだろう?」

「今は持ち合わせがないけど、こんなモンやったら持ってるで」

「なにそれ?」

「ブラックカードちゅうモンや」

「トシ、ブラックカードってなに?」

「知らないのか。危険人物が載っているあの……」

「オッサンやっぱり危険人物「それはブラックリストじゃ、ボケェ!!」」

「ちょっとボケただけですがな」

「で、ブラックカードってなに?」

「ホンマに知らんのか!」

仕方なくタカに説明するトシであった。

「ええ!? そしたらこのオッサンってお金持ち?」

「うん、しかももの凄い」

「犬とお呼びください、ご主人様」

「手のひら返すの早いヤッちゃな」

「「手のひらは何度返しても減りませぬゆえ」」

「カッコつけて言う事か!」

ノックは不安しか残らないが、とりあえずほかに頼む相手がいなかった。

こうしてトシとタカに連れられ、ノックは街を巡る事になった。

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