魔王降臨(1)
上位階梯世界、俗に言う天界の者と同等の能力を持つ魔王の降臨。如何なる災禍がもたらされるのか? 第三話の開幕です。
ケインは最近顔を見せないトシとタカ、ルフィンに不審を抱いた。
チチモンダルの獣事件の後、トシ達は恨みがましい目に涙を浮かべ署に顔を出していた。何をする訳でもない。ただただ目をウルウルさせてケインやオプティコム女史の視界に入るように存在していたのだ。それがはたと顔を見せなくなったのである。居たら居たで鬱陶しいのだが、居ないとなったらそれはそれで気になる。
「姐さん、何かご存知ありませんか?」
「ああ、アイツ等かい? まさかあんな嫌がらせがあるとは。流石のあたしも参っちゃったよ」
「いや、あれは姐さんが酷いですよ。
期待に胸と股間を膨らませていた若者にあの仕打ちは流石にちょっと」
「うちの旦那にも叱られちゃったよ。
で、あたしも少し反省してね。リューに頼んで儲け話を振ってやったんだ。
暫くは大人しくしてるだろうさ」
「儲け話? 何ですか、それ?」
「女装神のパテントをくれてやったのさ。署公認のキャラって事にしてやるからグッズでも販売して儲けろってね。
ただ、そのまんま丸投げしてもどうしようもないだろうから、リューに協力してやってくれってお願いしてやったのさ。
今頃はアイテム販売で儲ける夢でも見てるだろうよ」
(リューもいい災難だな……)
リューはオプティコム女史の電話に最初はげんなりとなった。
女装神? アレを売り出す? 正気かよ!
しかしオプティコム女史、いやケイ・ミトミ先輩の恐ろしさは遺伝子(DNA)に刻み込まれとる。
それに最近オープンしたヤキューケンホンボックスが繁盛していて懐に余裕はある。そう言えば、ヤキューケンはトシのおかげで広まったんだったよなぁ……
少しくらい還元してやるかいな……
もしかしたらまた、良い企画が出るかもしれんし……
そうして生まれたコラボ企画第一弾が「女装神侍」と「二人は女装神」であった。
前者は
…一つ、人の世の生乳を絞り
…二つ、不埒なセクハラ三昧
…三つ、醜いイケメン供を
…退治てくれん、女装神
の決め台詞と共にスケベな悪人を女装している主人公達がやっつけていくアクション物。
後者は女性を亜メリーに変えていく謎の組織の怪人を女装神に変身した二人が倒していく子供向けアニメだった。
怪人を倒す時にはアイテムで戦い、ピンチになって真言を唱え聖獣を召喚する。
「…ストーコレワパンストーコレワパン
我は求め訴えたり。蛇は古き鱗を棄て新たな御身を持って蘇るべし。ストーコレワパンストーコレワパン…
聖獣召喚、いでよグリフィン!!」
最後は召喚した聖獣と合体し、三位一体の真女装神グリフィンフォームに変身し「成敗!!」の掛け声と共に斬り捨てる。
続編まで考え、召喚する聖獣によりドラゴンフォーム、リヴァイアサンフォームと、オモチャ対策まで立ててあると言うあざとさである。
女装神変身セットとして、女装神印の「寄せて上げるブラ」まである(これは後に下着メーカーからオファーがきて普通に売れた)。
リューは驚き呆れたが、いける気がしてきた。
リューの予感は的中した。両作品とも大当たりし、続編作成が決定した。
女装神の真言は、何故か本当に亜メリー化した女性を正気に戻す効果があり街のあちこちで聞かれるようになっていった。
一部では「あたしは真言を唱えられるほど小さくない!」と騒ぎになるケースもあったが、概ね受け入れられ街に広まっていった。
リューもエビス顔になり、トシ達3人と今後も協力を約束を申し入れている。パテント料の一部先渡しをして貰える事になったお陰で懐も温まりそうなトシ達にはこの世の春が来ていた。
トシとタカは踊り出したいくらいの気分でリューの事務所に向かっていたところ「モマセロ」と呟きながら誰かを襲っている亜メリー達に出会した。
亜メリー達が襲うのは胸の立派な女性だけである。
出会いの予感に胸を踊らせた二人は早速救出に向かった。
「「…ストーコレワパンストーコレワパン…我は求め訴えたり!…ンンンン…喝!!」」
真言と共に、最近商品化した女装神護符を向けると亜メリー達は正気に戻り始めた。
慌てて逃げていく亜メリー達。
そこに残された被害者はオッサンだった。
「え? なんで⁇」
不思議に思いながらも介抱する二人。
これがこののちモキータを騒がす事になるノックとの出会いであった。
次回はノック視点で展開します。




