我等今宵 王を戴く (エピローグ)
『それでは皆さん、ご唱和ください!
いーーーち、にいーーー、さーーーん
「「「パオーーーン!!!」」」
ありがとーーーォ!』
モニターに映し出されているUTAGEを新任司政官のファオムは茫然と眺めていた。
「な…なんでこうなった……」
ガタッ
物音にファオムは気を取り戻すと、監察官の一人、カーツ・レイブン師が椅子から崩れ落ちていた。
「レイブン師、いかがなさいましたッ!?」
ふと気がつくと、他の二人も声を発していない。
「サバーフ師! ンラク師!!
いかん! メディック、メディッーーク!!」
この騒ぎでファオムは査問委員会にかけられる羽目に陥った。
その結果、裁定では無実が証明されたのだが、このモキータの事案は上部階梯世界で広く知られる事になってしまい、ファオムは「パオーンの人」との認識が広まってしまった。将来を嘱望されていた若い司政官の未来は多難なものとなった。
「あ、パオーンさんだ〜」
「せ、先輩! 気にしなくて大丈夫ですからね!
誰も先輩の事をパオーンなんて思ってませんから! 少なくとも私は………………パオーン……………………パオーン……パオーン…………パオーン…パオーン …パオーン…………」
ファオムの耳には「パオーン」だけが何度も繰り返し響く。
「…………パオーン……パオーン…………」
「チチ……」
「ハイ?」
「おまえ、本当は俺の事が嫌いだろう……」
その日からファオムの顔から表情が消えた。
「なんでこうなったの……」
トドメを刺した自覚のないチチことチキータ・モンデールは事態を飲み込めずに途方に暮れた。
次話では聖獣グリフィン、魔物のサキュバスなどが登場。サキュバスにより生み出された魔獣がモキータの街に恐怖をもたらします。
また、影の薄い主人公・トシも魔獣退治に活躍予定。




