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NDK黙示録  作者: つくも拓
第1章 モキータ編
10/72

我等今宵 王を戴く(8)

第一話 本編は今回で終了。

この話にしては今回少しだけ長めですがよろしく。

UTAGEの参加者が紹介されるたびに歓声が上がる。それぞれが組織の代表格であるため、応援者が多数いる。そこまでは想定されたが、一般の客はこの場でお気に入りの応援を始めている。

「……モキータの商工会の次代を担う、ガイナ--カマタマーレ----!」

「「「ガイナ! ガイナ!!」」」

「「「商工会の顔を潰すんじゃないぞ!」」」

「「「無様な真似したら商工会にも帰る席ないぞ」」」

「皆さ〜ん、脅すのは止めてくださいね〜〜」

「モキータの夜を支配しているこの人、第28代『おみち』の称号を持つ女性、クイーン・ミッチェル!!!」

「「「おみっちゃ〜〜ん!!!」」」

「行くわよ〜坊や達〜! コール・ミー、クイーン!!!」

「「「イエス、マイ クイーン!!!」」」

「モキータの頭脳、戦略研究所の若きエース、ポロス・ジャイアルナス!!!」

「「「きゃ〜〜!!ポロスく〜〜ん!!」」」

「「「可愛い〜い!」」」

「「「ポロッと出して〜〜!」」」

野太い嬌声も混じっている。

「「「ポロス君に勝ったらお姉さんが許さないわよ〜〜」」」

「お()さん達〜〜、参加者を脅すの止めてください」

「「「脅しじゃないわよ〜、マジよ〜!」」」

「周り〜、武器になりそうな物を取り上げとけ〜!!」

全てを紹介するのは意味が無いので割愛する。

「我々UTAGEスタッフが呼び掛けたにもかかわらず、参加頂けなかった方々もいらっしゃいます。

その理由は分かりません。」

「自身を曝す勇気がないのか、曝すに足る自身がないのか?」

「しかしUTAGEにはそのような者はいらない」

「我々が欲するのは(つわもの)のみ」

「改めて、ここに参加を表明した十名に拍手を!」

「そして我々はここに新たな6名の兵を紹介します!」

バックスクリーンが切り替わり、予選らしきものの録画が映し出される。

一心不乱に筋トレを行う者、勝利の雄叫びを上げる者、両手で顔を覆い地に崩れ落ちる者、涙に咽ぶ応援団。

「彼等は今朝程のUTAGE開催案内に参加を希望してきました。しかしながら、今回我々が彼等に用意できた席は六つのみ」

「彼等はこの狭き門をくぐるため、雨に日も風の日も厳しいトレーニングをこなして参りました」

「「…?トシ、ちょっと待て。UTAGE開催の案内は今朝だよな?」」

「そうだよ? タカもメリーももう忘れたのか?」

「「どこに『雨に日や風の日』があったんだ?」」

「…普段から頑張ってたって言いたかったんだ」

「「カッコつけようとしただけだろうが!」」

タカとメリーの平手が左右からトシを叩く。

「色々と台無しじゃ、アホ!!」

「堪忍や〜、哀しいサガなんや〜〜」

そのままドツき漫才を始めるトシとタカにメリーは肩をすくめる。

「アホ二人は置いといて、紹介を続けましょう!

丁度6人が登場致しました。

お待たせしました!

いよいよUTAGEの開幕です。

16名の皆様、こちらのクジをお引きください

……」

メリーが粛々とルール説明をして行く間にトーナメント表が完成していき、参加者はスタッフの案内で袖に消えていく。

ステージの照明が落とされ、観客席の中央に設けられた特設リングにスポットライトが当たる。

ラウンドガールが『1stバウト』と書かれたプラカードを掲げていた。

雄々しい音楽鳴り響き、青コーナーから第一の戦士が登場する。

UTAGEが始まる……


ステージの仕事を終え、メリーがトシとタカを引きずってバックヤードに戻ってきた。

「メリーちゃん、トリオ漫才ご苦労さん」

「イキ、ピッタリだったね!」

「「嬉しくねェ!」」

「なんでトリオになってるのよ! あたしを混ぜないでちょうだい!

リューさん、あたしはそろそろノアちゃんと一緒にシンクロに戻るわね。

トシ、タカ。実況と解説、ちゃんとやってね!」

メリーはそう言うと客席に消えていった。

「トシはんの提案した、登場に音楽鳴り響かすの。あれエエねェ。盛り上がるわぁ」

トシはプロレスの入場曲をイメージし、リューに提案していた。ちなみにトシのスマホにはレスラーの登場曲集が入っている。

「キングの登場曲はアレで。我儘言ってすみませんが」

「いや、アレはキングにピッタリでんがな。

ところで、実況は本当に任せても大丈夫なんでっか?」

「○ル○チメソッドを駆使した実況、解くとご覧じあれ」


UTAGEは先に3勝した方が勝ち上がるトーナメント方式を採用。1回勝利するたびに杯を呷り着衣を脱いでポーズをとる。

トシはその一戦々々にプロレスのノリで実況中継を行っていった。

「「「ヨヨイノヨイ!!!」」」

オオオオオオオオ--------

「さあ赤コーナーのリック、第6試合に王手をかけた! 一般枠から勝ち上がってきた彼は試合前にこう言っていた、俺は咬ませ犬じゃないと!

この試合に勝利しそれを証明することができるのか〜!?

青コーナーのトビーはこのまんま終わってしまうのか! 優勝候補の一角がここで消えるのか〜!?

下克上を成し遂げるかリック、意地を見せられるかトビー!

さて、運命の一戦が始まった〜!!!」


肩を抱き合い健闘を称え、勝者は決意を新たに次の試合に、敗者は悔しさを滲ませ次の機会に備える。

一つの試合に一つの物語が生まれ、一人の敗者が生まれた。共通しているのは「試合が終わればノーサイド」の精神だけだった。

初めの3試合ほどはメリー達によるシンクロの効果で感動を共有させていたが、4試合目が始まる頃にはトシの実況中継に物語を感じ、試合で生まれる絆に酔いしれた。

時は無情に過ぎ去る。観客を沸かせた数々のドラマも遂に最後の一戦を迎えていた。

リングに立つのはキングとトビー。共に2勝しており、どちらが勝っても勝敗は決する。

「「「ヨヨイノヨイ!」」」

会場の全員が固唾を飲んで見守る。音が消えた。

握手を交わす両者の頬は感涙に濡れていた。

「さあ、杯を受け取ってくれ」

敗者の手ずから渡された杯を干し、最後の衣服が脱ぎ捨てられる。

そして最後のポージング。

沸き起こる大歓声。

勝者、キング


トシの合図で会場の一角にスポットライトが当たる。

そこには一人の女性が佇んでいた。

「エイドリアン……」(※ケインは彼女の通称を知らない)

トシのスマホから提供された某有名ボクシング映画のテーマソングが会場に流れる。

「エイドリアーーーン!」

ドリーがケインに駆け寄り抱擁を交わす。

「キング様。お会いする時はいつも全裸ですね……」

そう言うとドリーは目を閉じて唇を差し出す。

接吻(くちづけ)する二人は種族融和の象徴に見えた。

祝福の歓声が沸き起こるなか、トシがケインにマイクを向けた。

「何か一言お願いします、キング」

「……言いたい事は尽きません。しかしこの感動を、この気持ちを言葉にする事など私にはできない。

会場にお集まりの皆さん、宜しければ今一度私と気持ちを一つにして頂けませんか?」

「アレですね?」

トシの口が声を出さずに動く。ケインが首肯するのを確認し、インカムでスクリーンにその言葉が映され準備が整う。

「それでは皆さん、ご唱和ください!

いーーーち、にいーーー、さーーーん

「「「パオーーーン!!!」」」

ありがとーーーォ!」

テーマソングに乗ってケインが退場し、かくしてUTAGEの幕は閉じられた。


UTAGEの会場から退場したケインを待ち受けていたのは参加者達だった。

「ケイン署長、話があるんだ」

「署長はよしてくれ。おそらくすぐに解任されると思うからな」

「なぜ解任されるんだ?」

「このポストはマクマホン市長の犬として与えられたものだからな。犬ではなくなった私はポストも取り上げられることになるだけだ」

「それは良かった」

「どう言う事ですかな?」

「ケインさん、我々はあなたを盟主に戴こうと思う」

「言わば王様だ。王様が誰かの犬では締まらないからな」

「この街の明日をあなたに委ねたいんだよ。今日、共に闘い時間を共有し、そう感じたんだよ」

「どうして……」

「言葉が要るのかい?」

ケインは一人一人の顔を凝視し、力強く頷く。

「分かった。私からの明日へのチケットを受け取ってくれ」

そう言って差し出されたケインの手をUTAGEに参加した面々は次々と握り締めた。

ケインはこうして街の曲者達を味方につける事になった。


翌日、ケインの擁立がメディアに発表されるとモキータの政界に激震が走った。擁立派の面々にも驚いたが、UTAGEに参加しなかった勢力にとってはもっと切実な問題が起きていた。それは即ち、参加しないのは自身を『曝け出す事が出来ない』のか『曝け出す中身がない』と言う風評が蔓延していたからである。

前者だと『黒い』、後者だと『能無し』。どちらにせよ足元が崩れかねない。

彼等の取る手段はケインにおもねるか、完全に無視するしかしかなくなっていた。


ケインはケインで、署長室で頭を抱えていた。

リューからUTAGEの今後について連絡と相談があったからだ。

『参加しない』と言う選択肢は防がれている。

「なんでこうなった……」

参加者達のテーマソングは、皆さんお好きな曲をどうぞ。個人的には猪木ボンバイエ、サンライズ(ハンセン)、スカイハイ(マスカラス)が好きです。


登場人物の名前をつけるの、苦手です。

次回、第一話エピローグ、第二話プロローグを投稿します。

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